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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2025-10-31

欧州の頭脳流出

フランスを中心にヨーロッパで「頭脳流出」が深刻化している。調査によれば、フランスの名門校卒業生の約1万5000人が毎年国外でのキャリアを選び、米国にはフランス国内より多くのユニコーン企業創業者が存在する。主因は高税率による低賃金と「国の衰退」への失望である。この流れはドイツや英国でも見られ、若者や起業家がスイスやUAEへ移住している。著者はこの現象を17世紀のナント勅令廃止によるユグノー(フランス・プロテスタント)の国外流出と重ねる。彼らの亡命はフランス経済を弱体化させ、代わりに英国やスイスの産業発展を促した。フレデリック・バスティアが説いた「見えるものと見えないもの」の教訓――短期的な政治介入が長期的損失をもたらす――がここにも当てはまる。人材の流出は、現在の生産力だけでなく将来の創造力をも奪う「見えない悲劇」であり、集団の繁栄は常に個人の自由で創造的な行動に支えられると結論づけている。
The Tragedy of Expatriation: Europe’s Lost Future | Mises Institute [LINK]

格付け会社S&Pがギリシャの信用格付けを「安定的」と維持したことは、同国が財政規律と制度的信頼を回復した一方、依然として構造改革が未完であることを示した。ギリシャ経済は2023年に実質GDP成長率2.3%とEU平均の倍速で拡大したが、一人当たりGDPは購買力調整後でEU平均の約68%にとどまり、生産性もユーロ圏平均を25%下回る。観光業が成長を支える一方で、輸出・技術革新の遅れ、労働課税の重さ、人口減少やスキル不足が成長を阻んでいる。危機脱却後の安定は確かに成果だが、それは変革ではない。著者は、財政健全化から生産性向上への転換が必要だとし、EU復興基金を活用した構造改革と技術投資による「質的成長」への転換を訴える。ギリシャの次の課題は「安定」から「構造的強さ」への進化である。
Greece’s Growth Story Needs Structure, Not Slogans | Mises Institute [LINK]

17世紀オランダの「チューリップ狂騒(Tulipmania)」は、投機の象徴として語られてきたが、オーストリア学派の視点から再検討すると、その実像はより複雑である。ダグラス・フレンチは、当時のアムステルダム銀行による貨幣供給拡大や信用膨張が資産価格全般の上昇を招いたとし、チューリップ相場を典型的な信用循環の一例として説明する。一方、筆者は契約制度の特殊性に注目する。当時の取引は「地中の球根」の先物契約であり、法的拘束力がなく、少額の保証金で投機が可能だった。この制度が短期的な価格急騰と崩壊を招いたが、経済全体への影響は限定的だった。両者を統合すれば、希少球根の長期的価値上昇は緩和的金融環境に支えられ、1635〜36年の急騰は制度的要因による局地的バブルだったと理解できる。結論として、チューリップ狂騒は「単なる狂気」ではなく、貨幣膨張と制度構造の相互作用が生んだ複層的現象であり、今日の資産バブル分析にも示唆を与える。
Tulipmania Reconsidered, Reconciling Austrian Perspectives | Mises Institute [LINK]

近代初期、政治思想は大きな転換を迎えた。マレー・ロスバードによれば、「国家の理由(raison d’état)」(国家の利益や存続のために、道徳や倫理に反する行為であっても正当化されるという考え方)と絶対主義の登場は、君主の私的利益が「公共の福祉」と同一視される思想的変質を意味した。マキアヴェリは『君主論』で国家権力の維持と拡大を最高の善とし、道徳よりも政治的必要性を優先させた。その系譜を継いだフランスのジャン・ボダンは、王を神のみの被造物とし、主権を無制限なものとして理論化した。これがルイ14世の下で頂点に達する。ルイは自らを国家と同一視し、課税や司法を自らの権能とみなし、「王の利益=国益」という理屈で権力を正当化した。ロスバードは、この「国家の理由」こそが後の国家主義の原型だと指摘する。支配者の利害を「公共善」と混同することで、権力は神聖化され、抵抗は国家への反逆とみなされた。絶対主義の興隆は自由と法の伝統の裏切りであり、現代の中央集権国家の思想的源流である。
Absolutism and the “Reason of State”: Rothbard on the Growth of Statism | Mises Institute  [LINK]

2025-10-30

強盗男爵の神話

この記事は、米国の「金ぴか時代」の「強盗男爵(Robber Barons)」という支配的な歴史観を批判し、ジェームズ・J・ヒルを「市場の起業家」の模範として紹介している。主流な歴史解釈は、規制のない自由市場が「強盗男爵」を生み出し、政府介入がその弊害を是正したとするが、これは誤りであると指摘する。著者のバートン・フルサムは、連邦政府の援助や政治的手段で成功しようとする「政治的起業家」と、優れた製品を低コストで市場に提供することで成功を目指す「市場の起業家」を明確に区別すべきだと主張している。大陸横断鉄道の建設は、政府による大規模な補助金、土地供与、融資によって始まり、腐敗、浪費、非効率が蔓延した。これらの補助金を受けた鉄道は、経済計算の原則に縛られず、失敗すると世論の怒りを買い、さらなる有害な政府規制を招いた。皮肉にも、多くの鉄道会社は競争を避けるために規制を歓迎したのだ。これに対し、ヒルの建設したグレート・ノーザン鉄道は、公的資金を一切使わずに建設された唯一の大陸横断鉄道であり、一度も破産しなかった。ヒルは、低コスト、効率性、最短ルートを追求し、市場の需要に応えることで消費者に貢献し、政治に頼る「強盗男爵」の対極にある市場の起業家であったと結論づけている。
The Myth of the “Robber Barons”: James Hill versus the Crony Competitors | Mises Institute [LINK]

アメリカの鉄道王ウィリアム・H・ヴァンダービルトは、「公衆などどうでもいい(the public be damned)」という発言で知られているが、この記事は、その発言の背景と、株主利益と公共の利益の関係について論じている。父コーネリアスから莫大な遺産を継いだウィリアムは、ニューヨーク・セントラル鉄道を統合・拡大して巨万の富を築き、一時は国内で最も裕福な人物となった。彼の富は、父から受け継いだ才能と野心によって四倍に増やされたという点で、他の裕福な二世たちとは一線を画している。問題の「the public be damned」発言は、1882年の記者会見中に、彼の限定急行列車が「公衆の便宜のために運行されているのか」と問われた際に出たものとされる。ヴァンダービルトは言葉自体を否定したが、その高慢な態度から否定は空虚に響いた。しかし、鉄道が株主の利益のために運行されており、乗客の便宜が第一ではないという彼の発言の本質は正しかった。実際、ニューヨーク〜シカゴ間の豪華な旅客サービスは、単独では赤字であったが、ネットワーク全体の他の事業を呼び込む「見せ物」として、長期的な利益につながっていた。現代の経営においても、特定の製品やサービスが赤字でも、全体的な価値を最大化するために不可欠な場合がある。現代の企業経営において、顧客(公衆)の要求に応えることは、株主価値の最大化と一致することが多いため、「ステークホルダー資本主義」は特に目新しいものではない。株主価値の最大化という限界を超えて、株主以外のステークホルダーに注意を向けるべきではない。それでもなお、「the public be damned」という発言は賢明ではない、と結論づけている。
"The Public Be Damned" | Mises Institute [LINK]

2025年のノーベル経済学賞が、「創造的破壊」による成長モデルで知られるフィリップ・アギヨンらに授与されたが、この記事は彼らの業績がヨーゼフ・シュンペーターのビジョンを「創造的に裏切った」ものだと批判している。シュンペーターは「創造的破壊」を、資本主義が内部から自らを革新する生命力として捉え、政府の介入を正当化するために用いることを意図していなかった。彼にとって独占利潤はイノベーションへの報奨であり、破壊は創造に必要なプロセスだった。しかし、アギヨンらはシュンペーターの概念を数学的な方程式でモデル化し、イノベーションをR&D支出の機械的な結果に還元。市場は「過剰または過少なイノベーション」を生み出すという結論を導き出し、政府による介入(補助金、失業保険など)を推奨した。著者は、アギヨンの提言が、失業の緩衝化やハイテクへの政府補助金を通じてイノベーションの活力を削ぎ、シュンペーターが警告した過剰規制と社会主義化の予言を成就させつつあると指摘。アギヨンの助言が影響したとされるフランスの政策も、債務増加と成長停滞を招いているとして、今回の受賞を「数学的合理性の勝利であり、経済思想の敗北」と断じている。
The 2025 Nobel Prize in Economics: A “Creative Betrayal” of Schumpeter’s Vision | Mises Institute [LINK]

この記事は、「起業家精神」そのものは大学で「教えることはできない」というオーストリア学派の主張(ミーゼスやダグ・フレンチの批判)に同意しつつも、大学の起業家教育プログラムには二つの大きな価値があると擁護している。まず、オーストリア学派が定義する起業家精神の核心は、「不確実な未来に対する投機(speculation)」や、「ナイト的不確実性下での判断(judgment)」といった天性の能力や直感にあり、経験を通じて磨かれるため、教室での教育には限界がある。しかし、大学プログラムの価値として、第一に、問題検証、アイデア創出、プロトタイピング、交渉術といった起業に必要な周辺スキル(tangential skills)を体系的かつ大規模に教える機会を提供できる点を挙げる。これらは学生が「起業家的思考」を身につけ、新規事業創出や企業内起業(イントラプレナーシップ)に役立つ実用的な訓練となる。第二に、オーストリア経済学の真実を広める主要な場となる点である。起業家精神の研究分野は、他の学問分野と異なり、カーズナーやクラインらの影響でオーストリア学派の思想が主流に残りやすい「比較的安全な砦」であり、破壊的なイデオロギーに晒されている次世代の学生に、自由市場と人間の行為学(プラクシオロジー)の原則を教育する極めて肥沃な土壌であると結論づけている。
We Can’t “Teach” Entrepreneurship, But We Can Inspire Future Entrepreneurs | Mises Institute [LINK]

2025-10-29

ネオコンの復権

トランプ政権の外交政策において、マルコ・ルビオ国務長官が主導権を握り、ネオコン(新保守主義者)が復権を果たした。これは、トランプ大統領がウクライナ・ロシア戦争の仲介者としての立場を放棄し、ロシアの石油部門への制裁を課すという決定に現れており、結果として紛争のエスカレーションを容認する姿勢へと傾倒したことを意味する。同時に、ネオコンの長年の悲願であったベネズエラへの「政権転覆」作戦が再び動き出し、麻薬密輸対策を名目とした公海上の武力行使を経て、間もなくベネズエラ本土への攻撃が始まると発表された。2002年のサダム・フセインによる大量破壊兵器の捏造と同様に、ニコラス・マドゥロ大統領がコカインおよびフェンタニル工場の首領であるという虚偽情報が、主要メディアによって米国民に伝えられている。「テロとの世界戦争」が「麻薬テロとの半球戦争」に衣替えし、軍産複合体は新たな利益を見込んでいる。トランプ政権はネオコン排除を公約していたにもかかわらず、彼らは再び主要な役割を担うこととなり、このままではトランプ大統領の2期目の任期、そして米国自体をも破滅させかねないとの懸念が高まっている。
The Rubio Doctrine: Neocons Are Back! - Antiwar.com [LINK]

トランプ大統領は、ベネズエラのマドゥロ政権を「麻薬テロリスト」の温床と断定し、同国大統領が麻薬カルテルの首領であると主張した上で、麻薬密輸阻止と政権転覆を目的とする大規模な艦隊をカリブ海に展開させている。しかし、米国政府の現・元当局者は、この軍事行動の根拠に強く異議を唱えている。当局者らの見解では、ベネズエラは米国へのフェンタニル供給源ではなく、軍事作戦の標的となっている航路も、米国向け麻薬輸送にはほとんど使われていないという。国連などの国際機関の報告も、ベネズエラが国際的な主要麻薬回廊ではないことを裏付ける。また、米情報機関の「コミュニティの総意」メモは、マドゥロ大統領が麻薬カルテルの首領であるという政権の主張を明確に否定した。さらに、対ベネズエラ作戦を監督する米南方軍の司令官が軍事行動への懸念を理由に辞任するなど、政権と情報・軍事当局の間で深刻な政策的緊張が表面化している。ベネズエラ政策の正当性に異議を唱えた複数の当局者が、職を追われる事態となっている。
US Officials Disagree With Trump on Venezuela - Antiwar.com [LINK]

トランプ大統領のガザ和平案は、イスラエルの国際的な信用回復を主眼としているが、同案に基づく停戦は形骸化しており、イスラエルはガザ地区の一部からしか撤退せず、人道支援物資の搬入も計画の15%に留まっている。イスラエルによる日常的な殺害行為は減ったものの、これは真の停戦とは言えず、ガザの200万人の住民は食料、水、シェルターを求めて死活をかけた闘いを続けている。一方で、国際社会はイスラエルへの責任追及を強化している。国際司法裁判所(ICJ)は、イスラエルによるガザでの飢餓の兵器使用を強く非難し、占領国としての基本ニーズ確保を命じる新たな判決を下した。これを受け、ノルウェーは国連総会でICJの指示を履行するための決議案を提出する意向を示し、制裁を含む具体的な行動の可能性が開かれている。また、欧州では、英国議会で違法な占領に加担する企業への年金基金からの投資撤退を求める改正案が提出され、EUもイスラエルとの自由貿易協定の一時停止を検討するなど、イスラエルへの説明責任を求める動きが加速している。しかし、米国議会では、ガザでの破壊に対する米国の関与に関する議論を避ける形で、イスラエルとの新たな軍事同盟強化を推進する法案が進行している。
The World Confronts the Genocide Washington Is Trying To Bury - Antiwar.com [LINK]

ロシアのドローンや戦闘機がポーランドなどのNATO加盟国の領空を繰り返し侵犯している事態を受け、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定すべきだという危険な提案が再燃している。2022年のロシアによる全面侵攻直後、ウクライナのゼレンスキー大統領がこれを要求した際、当時のバイデン大統領やNATO外相らは、ロシアとの直接的な軍事衝突につながるリスクから採用を見送った経緯がある。その後も、ウクライナ側は領空の一部に対する限定的な飛行禁止区域の設置を繰り返し求めてきた。ロシア側は、NATOがウクライナへの高度な兵器供給や標的データの提供など、事実上の代理戦争を仕掛けていると公然と非難しており、NATOとロシア間の緊張は極めて危険なレベルまで高まっている。このような不安定な政治・軍事環境下で飛行禁止区域の設定を試みることは、火遊びに等しく、第三次世界大戦を引き起こす深刻なリスクを伴う。NATOが、ウクライナのNATO加盟や軍事資産化がロシアの安全保障にとって「越えてはならない一線」であるという警告を無視した過去の過ちを繰り返すことは、破滅的な結果を招きかねない。
NATO Must Say No to Ukraine No-Fly Zone - The American Conservative [LINK]

2025-10-28

「麻薬船」攻撃の罪

この英文記事は、米国海軍によるベネズエラ沖での小型船舶への攻撃と撃沈が、米国内外の法律に違反しており、実行者が国際戦争犯罪法の対象となる可能性があると主張している。トランプ政権が「麻薬テロリスト」による差し迫った脅威を理由に、適正な法の手続き(due process)を無視して船舶を爆破しているが、これは憲法違反の行為である。憲法第1条第8項により、宣戦布告の権限は議会にのみあり、大統領にはない。また、この行為は、国連憲章第2条第4項(武力による威嚇・行使の禁止)および第51条(自衛権)に違反している。ベネズエラ沖の小型ボートは「武力攻撃」を構成せず、公海に関する国際海洋法(UNCLOS)の「平和的目的のための公海の利用」にも反し、臨検・捜索・拿捕といった通常の手続きを無視した即決的な破壊である。さらに、これはレーガン大統領の大統領令12333号の「暗殺禁止」に違反する。記事は、これらの行為がニュルンベルク原則の戦争犯罪や人道に対する罪にも該当し得るとして、米国の指導者たちが将来、国際法廷で責任を問われる可能性があると警告している。
The Small Boat Attacks Are Illegal - The American Conservative [LINK]

退役陸軍大佐のダグラス・マクレガーは、トランプ大統領に対し、ウクライナとベネズエラに関する政策を再考し、追従者(sycophants)の意見ではなく真の軍事専門家の助言に耳を傾けるよう提言している。ウクライナ問題について、著者は、米国が1,750億ドルもの借金で戦争を支援し続けるのは無謀であり、米国経済の回復に焦点を当てるべきだと主張。バイデン政権の対ロシア「攻勢的戦争」を意図したウクライナ軍の構築支援は戦略的誤りであり、米国は自国のカリブ海周辺の安全保障上の利益と同様に、ロシアの正当な安全保障上の利益を認識すべきだとしている。トマホークミサイル供与の再検討は正しい一歩であると評価している。また、ベネズエラを含む新たな紛争を始める前に、トランプ大統領は米軍の「戦力低下」と「即応態勢の危機」を直視すべきだ。高価な兵器開発の失敗や、陸軍・海兵隊の戦闘車両の整備不良など、米軍の課題は深刻であり、回復には10年以上かかる見込みである。大統領は、イエスマンの将軍や提督たちの「軍事的優位性」に関する安易な主張を退け、誠実さと能力を備えた専門家を登用し、知的赤字の解消を最優先すべきである。トランプ大統領の最重要課題は、軍事力ではなく経済力を回復させ、ウクライナやラテンアメリカへの不必要な介入を避けることにあると締めくくっている。
On Ukraine and Venezuela, Trump needs to dump the sycophants | Responsible Statecraft [LINK]

ネオコン(ネオ保守主義者)は、イラク戦争の失敗で一時勢いを失っていたが、ベネズエラ問題などで「アメリカ・ファースト」を掲げるMAGA(アメリカを再び偉大に)層に再び影響力を浸透させている。かつての「民主主義と自由の推進」ではなく、ネオコンは「アメリカの国益」や「自国周辺への回帰」というMAGAの言葉を借り、ベネズエラのニコラス・マドゥロ政権打倒などの「体制転換」を再浮上させているのだ。マルコ・ルビオ国務長官のように、マドゥロを「犯罪的で非合法な政権」と非難し、「麻薬テロリストの親玉」として懸賞金をかけ、軍事行動を正当化する主張は、ドラッグカルテル取り締まりや不法移民対策を重視するMAGAの関心に合致する。この動きは、ネオコンが「モンロー主義の復活」という枠組みに自らのラテンアメリカ向け体制転換計画を適応させた結果であり、MAGA右派に明確な対案がないことも影響している。批評家は、これが新たな難民危機や混乱を招くと警告しつつも、ネオコン的なアジェンダが「麻薬戦争」を隠れ蓑に再び勢いを増している現状を指摘している。
The Neocons Have Finally Found a Way Into MAGA Hearts - Antiwar.com [LINK]

ガザ地区では2年にわたる戦争の結果、イスラエル軍が投下した不発弾(UXO)が広範囲に残り、「地雷原」と化している。2023年12月時点で「近現代史上最も破壊的な市街戦」と呼ばれたこの戦争で、ガザに投下された爆発物の量は推定20万トンに上り、その5~10%が不発弾として残存している。停戦発効直後にも、アル・シファ病院付近の瓦礫の中で遊んでいた子どもたちが不発弾の爆発で負傷する事故が発生した。UXOは対人地雷や対戦車地雷と同様に、市民、特に子どもたちにとって長期的な脅威であり続ける。支援団体によると、ガザの地雷除去には数世代にわたる作業が必要とされているが、イスラエルは安全保障上の懸念から、除去に必要な装備の持ち込みを拒否している状況だ。イスラエルは対人地雷の全面禁止を定めたオタワ条約に署名しておらず、自国の安全保障上の必要性から地雷の使用を禁止できないと主張している。記事は、兵器供与を通じて紛争当事者である米国に対し、国際法上の責任を果たすため、イスラエルへの武器販売停止と軍事支援の中止を求め、ガザを再び居住可能にするための不発弾除去への協力を訴えている。
A Minefield in Gaza - Antiwar.com [LINK]

この記事は、ガザの人々が「虐殺の建築」に直面しながらも、精神的な勝利を宣言している現状を論じている。過去2年間のジェノサイドと飢餓は、従来のパレスチナの悲劇とは比較にならない規模で進行し、ガザの人々は犠牲者の埋葬すらままならない絶望的な状況に置かれた。しかし、著者のSNSのフィードには、深い悲嘆(grief)と不屈の抵抗(defiance)という二つの感情が共存している。ガザの人々にとっての勝利の尺度は、メディアが報じる数や損害ではなく、尊厳(Karamah)、誇り(Izza)、忍耐(Sabr)といった根源的な価値観を堅持できたかどうかにある。イスラエルの戦争の究極の目的が、パレスチナ人としての精神、文化、民族性を破壊することにあったとガザの人々は理解している。それにもかかわらず、彼らはアイデンティティをより強固にし、生き残り、自らを主張し続けた。このため、ガザの人々は、肉体的・物質的破壊の中で、彼らの存在そのものがジェノサイドに対する究極の勝利であると捉え、勝利を祝っているのだ。
The Unvanquished Will: Gaza's Triumph of Spirit Against the Architecture of Genocide - Antiwar.com [LINK]

2025-10-27

繁栄と進歩の思想

2025年のノーベル経済学賞は、イノベーションと経済成長に関する先駆的な研究を行ったジョエル・モキイア、フィリップ・アギヨン、ピーター・ホーウィットの3氏に授与された。彼らの研究は、長期的な繁栄の推進力が、制度や資本だけでなく「アイデア(思想)」の力にあるという理解を確立した。特にモキイア氏は、経済史と現代成長理論の橋渡しを担った。彼は主著『啓蒙された経済』や『成長の文化』の中で、近代世界の繁栄は「進歩の思想」という文化革命に起因すると論じている。伝統を疑い、実験を奨励するヨーロッパの姿勢がイノベーションの自己強化サイクルを生んだという洞察である。彼の主要な貢献は以下の通りだ。①【機能する制度】工業化で重要だったのは、国家の形式的な制度よりも、徒弟制度や専門協会などの民間の自主的な協力ネットワークであり、知識の交換と応用を育んだ。②【科学と技術の関係】科学は初期の技術開発に先行しなかったが、後に技術を体系的に研究・改良するための「認識基盤(epistemic base)」を提供することで、継続的なイノベーションを可能にした。③【ヒューマン・キャピタル】形式的な教育よりも、知識を生産的に応用する能力、すなわち職人や技術者による知識の完成と普及が、最も大きな経済的利益をもたらした——。アギヨン氏とホーウィット氏は、シュンペーター型成長モデルを確立し、資本蓄積が研究、実験、「創造的破壊」を促進することでイノベーションを刺激することを理論的に示した。これは、モキイア氏の歴史的知見に理論的裏付けを与えるものである。彼らの研究は、繁栄の根源が市場や機械だけでなく、進歩への信念や、開かれた社会基盤にあることを示し、イノベーション政策が投資だけでなく社会的な協力と知識の普及に注力すべきであるという、政策当局者への重要な指針となっている。
Joel Mokyr, Philippe Aghion, and Peter Howitt: The 2025 Nobel Winners in Economics | Mises Institute [LINK]

最近の言論では、AIが雇用を破壊するとの「AI終末論」や、技術進歩に反発するネオ・ラッダイト的感情が保守派を中心に広がっている。コメンテーターのマット・ウォルシュ氏は、「AIは人間の要素を完全に排除し、職を消滅させる。ごく一部の富裕層を除き、大規模な失業が起きる」と主張する。ウォルシュ氏は、AIは人間を単に補強した過去の技術(自動車など)とは異なり、人間を不要にする点が本質的に危険だと強調する。しかし、本記事はウォルシュ氏の主張を誤謬であると指摘する。資本財である機械を生産し維持するためには、必ず労働(人間の手)が必要であり、人間が全く不要になることは不可能である。技術進歩は労働の限界生産性を高め、その対価である賃金も上昇させるため、労働者が職を失うことにはならない。もし仮に、人間が全く不要になるほど生産が効率化されたならば、それは豊かな消費と多くの余暇が得られる「エデンの園」のような素晴らしい未来となる。したがって、AIによる大量失業の懸念は、技術進歩の経済的影響を誤解した「ネオ・ラッダイトの誤謬」に過ぎないのだ。
Neo-Luddite Hokum from Conservatives Strikes Again | Mises Institute [LINK]

資本主義への反発の根源は、自由と自発的な交換によって生じる階層への嫉妬ではなく、自由と国家主義の根本的な違いに対する誤解にある。今日一般に「資本主義」と呼ばれているものは、真の資本主義ではなく、市場の外観を装った国家主義であり、支配階級が法律や通貨を操り、政治的なつながりを持つ特権的な集団を保護する二階級システムである。一般市民の市場活動は、支配層の権益を脅かさない周辺領域でのみ許容されているに過ぎない。この「偽の資本主義的秩序」は、個人による選択を否定し、恣意的な計画と依怙贔屓で個人の役割を奪う集産主義的な構造を持つ。大衆が排除されているのは、真の資本主義が不在であることの証明であり、失敗ではない。真の資本主義は階級を解消し、支配を分散させる。これに対し、国家は価格や信用を歪ませ、混乱が生じると介入の失敗ではなく市場のせいにする。この悪循環は、最終的に全体主義へと向かう。資本主義を最も激しく憎悪する人々が求める「正義」や「公正」は、皮肉にも資本主義の美徳である。彼らが拒絶しているのは、資本主義の公平性である。彼らが嫌っているのは資本主義そのものではなく、特権や強制ではなく、自由な判断に基づく自発的な交換でのみ価値が決定されるという、資本主義が提供する努力と個人の価値の認識を強く求めていることに気づいていないだけなのである。
Understanding Resentment against Capitalism | Mises Institute [LINK]

共産圏の旧式車が西側市場で陳腐化したように、市場批判者は、資本主義が製品を意図的に短期間で陳腐化させる「計画的陳腐化」という悪徳を助長すると非難する。消費者に新製品の購入を強要するという主張だ。しかし、本記事はこの概念が経済的に誤りであると論駁する。企業が製品を改良するのは、新しいものを「強制」するためではなく、技術進歩と性能向上のためである。例えば、Appleが旧型iPhoneの速度を落としたのは、買い替え促進ではなく、バッテリー劣化による突然のシャットダウンを防ぐという技術的対応のためだった。また、意図的な早期陳腐化は、製品の転売価値を下げ、新製品価格を下落させ、顧客をより長持ちする製品を作る競合他社に奪われるため、企業にとって自滅的な政策となる。実際、現代の自動車は50年前より遥かに長寿命化し、コンピューターは安価で高性能化している。古い技術が陳腐化するのは当然の進化であり、消費者はこの恩恵でより良い製品を享受している。「計画的陳腐化」の概念は、技術革新を非難し、政府の介入を正当化するための政治的なレトリックに過ぎず、経済的な合理性を欠く。
The Myth of Planned Obsolescence | Mises Institute [LINK]

2025-10-25

帝国プロパガンダの崩壊

筆者のケイトリン・ジョンストン氏は、米国の「帝国のプロパガンダ機関」が前例のない形で崩壊しており、現状に絶望する必要はないと論じる。プロパガンダを維持するために莫大な労力が費やされているのは、それがなければ体制を維持できないことの裏返しであると指摘。特にイスラエルは「ハズバラ(Hasbara)」という用語を持つほど情報操作の重要性を理解しているにもかかわらず、世界的な支持が急落し、米国世論調査でも初めてパレスチナへの共感者がイスラエルを上回った事態に直面し、パニック状態にあるという。これは、国民の認識が限界を超えると、支配者側が行動を変えざるを得なくなることを示している。支配者層は、自分たちの数が圧倒的に少ないことを認識しており、大衆が覚醒するのを阻止するために、最も洗練されたプロパガンダ機構を維持してきた。しかし、この大規模なマインドコントロール装置は日々弱体化している。人々は「自分たちが暴君に支配され、メディアに騙されていた」という事実に気づき始めている。短期的な状況が暗く見えても、これは「檻の棒が溶けている氷でできている」状況であり、希望を失う必要はないと主張している。
The Imperial Propaganda Machine Is Failing In Unprecedented Ways - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ政権の海上での標的殺害は、憲法上の「適正手続き」を侵害している。トランプ政権は、公海上の人物を「麻薬テロリスト」と指定して米軍に殺害させているが、これは憲法修正第5条が全ての人に保障する適正手続きに違反する行為だ。政府は、殺害の根拠として「秘密の情報分析」をもって、法廷での陪審裁判に代わる手続きであると主張している。しかし、法的な論拠が秘密であることは許されない。この作戦は生存者を出さないことを前提としていたが、カリブ海での攻撃で2人の生存者が逮捕された。彼らの出現により、大統領の権限を連邦裁判所で訴える「生きた原告」が生まれた。筆者は、これはトランプ氏への信頼ではなく、共和国の根幹である透明で公正な手続きを遵守するかの問題であると結論付けている。
A Trumpian Headache - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ政権が世界的な「民主主義促進」活動への連邦支出を削減したことは、米国の内政干渉を是正する最も前向きな外交改革である、と筆者ジェームズ・ボバード氏は評価する。米国は1946年以来100回以上の外国選挙に介入し、グアテマラ、ハイチ、ウクライナなどで混乱と流血をもたらしてきた。特にウクライナへの介入は、その後の紛争の種を蒔いたと指摘されている。NED(全米民主主義基金)を通じた「民主主義促進」は、自由な選挙を支援するという建前とは裏腹に、干渉そのものであり、「独裁制の美化」を生むことが多い。選挙が必ずしも自由を保障するわけではないのだ。賄賂や爆撃は自由を輸出する手段ではない。トランプ氏がこの「民主主義促進の欺瞞」を本当に終わらせるか、今後の動向が注目されている。
Will Trump End Sham Democracy Promotions? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ前大統領がカタールに対して行った一方的な安全保障の約束は、米国の国益を損なうと筆者は指摘する。これは、イスラエルの攻撃を受けたカタールに、米国がNATO第5条に類似した防衛義務を負うことを示唆するものだ。さらに、サウジアラビアがアブラハム合意に参加する見返りとして、同様の防衛約束が検討されていることも問題視されている。筆者は、カタールやサウジのような独裁的で腐敗した君主制のために、米国民が戦い、死ぬことを期待されるべきではないと主張する。この約束は議会の承認を経た正式な条約ではなく、大統領の独断であり違憲の疑いがある。米国は中東での軍事関与を拡大すべきではなく、直ちにこの無謀な安全保障の約束を撤回すべきである。
Americans Shouldn’t Die for Qatar (or Saudi Arabia)  - The American Conservative [LINK]

ポーランドは、ロシアへの一貫した強硬姿勢とウクライナ難民への寛大な対応という表の顔を持つが、その裏でウクライナのEU加盟に強く反対するという「二面性」が維持不可能となっている。この矛盾の根源は**経済的利害**だ。現在、EU最大の補助金受領国であるポーランドは、ウクライナ加盟により広大な農地を持つ同国に農業補助金や結束基金を奪われ、純拠出国に転落することを恐れている。そのため、ドナルド・トゥスク首相の親EU政権下でもウクライナ産農産物の輸入禁止措置は維持され、国民のEU加盟支持率も低い。筆者は、ロシア打倒を目指しながらウクライナをEUから締め出す政策は非論理的であり、この矛盾の顕在化がポーランドのナショナリズムを加速させるだろうと警鐘を鳴らしている。
Poland’s Janus face on Ukraine is untenable | Responsible Statecraft [LINK]

2025-10-24

イスラエル支持が崩壊

ガザでの軍事行動(ジェノサイド)により、アメリカ国民のイスラエル支持が劇的に崩壊している。クイニピアック大学の最新世論調査(2025年10月)では、ネタニヤフ首相への好意的な見方は21%に急落。米国によるイスラエル支援が国益に叶うとする回答は69%から47%へ大幅減少した。さらに、有権者の50%(無党派層の過半数)が、イスラエルはガザで「ジェノサイド」を犯していると認識している。この変化は、ソーシャルメディアを通じてIDFによる残虐行為の映像が直接アメリカ国民に届いた結果だ。国民の半数が「ジェノサイド」と認識する中、トランプ政権は巨額の軍事援助を加速させており、ワシントンの世論無視の姿勢が大きな矛盾として浮き彫りになっている。
How Israel Lost the American Public | The Libertarian Institute [LINK]

ガザでの「ジェノサイド」により、イスラエルの国際的な孤立とイメージ崩壊が不可逆的に進んでいる。トランプ米大統領がネタニヤフ首相に「イスラエルは世界と戦えない」と警告したように、世界的な反イスラエル感情が前例なく高まり、スペインによる制裁や国際法廷での訴訟、ボイコット運動などが具体化している。米国民主党内でも、パレスチナへの同情が過半数に達し、従来のイスラエル擁護の錯覚は崩壊。ソーシャルメディアが主流のプロパガンダを打ち破り、イスラエルの残虐なシオニスト的イデオロギーを露呈させた。記事は、イスラエルとその支持者が今後、巨額の資金と情報戦でイメージ回復を図るだろうが、ジェノサイドの責任を曖昧にさせ、将来の大量虐殺の口実を与えることを国際社会は許してはならないと訴えている。
The Irreversible Tides: Israel's Isolation and the Gaza Genocide - Antiwar.com [LINK]

ゼレンスキー氏の訪米で、トランプ大統領はウクライナへのトマホーク・ミサイル供与を拒否した。これは、プーチン大統領との2時間の電話会談が影響したと見られる。ゼレンスキー氏は900億ドル相当の兵器「メガディール」を提案したが、キエフに支払い能力はない。トランプ氏はトマホークを「猛烈で破壊的な兵器」とし、供与が米露関係を損ない、戦争を核エスカレーションに導くというプーチン氏の警告を考慮した。筆者は、ロシアが提唱する「一国の安全保障は他国を犠牲にしてはならない」という和平論理の妥当性を評価。ウクライナとその支援国は敗北しつつも、戦争を続けるという「絶望の淵」の行動に固執しており、終結の見込みは薄いと結論付けている。
PATRICK LAWRENCE: Desperation Row – Consortium News [LINK]

米国と西側諸国の対ロシア外交における「戦略的共感」の欠如が、ウクライナでの危険な代理戦争を招いた。記事は、冷戦敗北で屈辱を味わったロシアが、NATOが国境へ拡大し続けることを、米国がメキシコやカナダに敵対的軍事同盟を置かれるのと同じ「存亡の危機」として捉えていた点を指摘。米歴代政権は、ロシアの警告を無視し、ウクライナのNATO組み込みを試みた傲慢さが破滅的な結果を生んだ。この代理戦争を終わらせるには、米国はウクライナがロシアの「核となる安全保障地帯」にある現実を受け入れ、軍事支援を停止すべきだと主張。ロシアとの紛争終結だけでなく、将来の中国との衝突回避のためにも、相手の視点に立つ戦略的共感を学ぶことが喫緊の課題としている。
Washington’s Deadly Lack of Foreign Policy Empathy Toward Russia - Antiwar.com [LINK]

米国が人権侵害を常態化させているナイジェリアへ、3億4600万ドル規模の武器売却を進めている。米国務省の報告書は、ナイジェリア治安部隊による「違法な殺害」や「民間人の犠牲」を公に認めており、これは米国の法律(人権侵害国への援助禁止)に違反する。この矛盾は、人権擁護よりも戦略的競争(中国・ロシア対策)を優先する米外交の根本的な欠陥を露呈している。供与される武器は、過去に誤爆で多数の民間人を殺害した作戦地域で使用される予定。腐敗とアカウンタビリティ(責任追及)の欠如が続く体制への武器供与は、さらなる「人道に対する罪」のリスクを高めると、記事は警鐘を鳴らしている。
US arming Nigeria is becoming a crime against humanity | Responsible Statecraft [LINK]

2025-10-23

ネオコン路線を捨てよ

トランプ大統領はガザ停戦の仲介で称賛されているが、その外交政策はネオコン的傾向を色濃く残している。彼は選挙で反戦を掲げたにもかかわらず、第1期でイスラエルやサウジアラビアの要求に屈し、イラン核合意破棄やウクライナへの軍事支援開始など、紛争を激化させる政策を推進した。第2期でも、大統領は「アメリカ・ファースト」を放棄し、イスラエルや欧州の利益を優先している。特に危険なのは、ウクライナに攻撃エスカレーションを促し、トマホークミサイル提供を示唆するなど、ロシアとの代理戦争を拡大しようとしている点だ。これは核戦争のリスクを高め、米国の安全を脅かす。筆者は、大統領が過去の失敗から学び、好戦的な路線を捨てて、ロシアとの代理戦争を終結させ、自国の防衛を外交政策の基盤とすべきだと主張している。
Trump Should Leave His Neocon Streak Behind - The American Conservative [LINK]

ドイツによるノルド・ストリーム・パイプライン爆破事件の捜査がウクライナ政府上層部に関わる容疑者にたどり着く中、ポーランド政府は積極的に捜査を妨害し、容疑者の引き渡しを阻止している。ポーランドの裁判所は先日、ウクライナ人容疑者のドイツへの引き渡しを拒否し、容疑者の行為を「正当で合理的かつ公正な合法的な軍事行動」と宣言した。ドナルド・トゥスク首相も「その通り。事件はこれで終わりだ」と追認した。これは、かつて西側諸国がテロ攻撃と非難した事件に対する、異例の容賛である。ポーランドは2000年代から一貫してノルド・ストリームに反対しており、ロシアによるドイツのエネルギー依存を高める地政学的に危険なプロジェクトと見なしてきた。破壊直後、元外相のラドスワフ・シコルスキが「ありがとう、USA」とツイートするなど、ポーランド当局は事件を公然と歓迎してきた。ドイツ捜査当局は、工作員がポーランドを拠点として利用した可能性を追及したが、ポーランド側から抵抗に遭った。ドイツの元情報機関トップは、ポーランド政府が「自国の関与を隠蔽するため」に捜査を妨害したと非難している。今回の容疑者釈放は、ポーランドによる捜査妨害の集大成であり、真相究明が極めて困難になることを示唆している。
What is Poland hiding besides the Ukrainian Nord Steam suspect? | Responsible Statecraft [LINK]

ガザの停戦後も、占領下のヨルダン川西岸地区では「戦争」が継続し、イスラエルによる暴力と土地収奪が激化している。2023年10月7日以降、イスラエル軍と入植者による襲撃が増加し、1,000人近くのパレスチナ人が殺害され、オリーブの木が破壊されている。イスラエル軍は900以上の検問所を設置し、パレスチナ人の移動の自由を奪い、日常生活を麻痺させている。さらに、入植地拡大のために土地を奪い続け、パレスチナの村を分断することで、将来のパレスチナ国家の樹立を阻止しようとしている。この記事は、イスラエルの行動が併合と民族浄化を目的とした長年の政策の加速であり、真の平和は占領を終わらせることでのみ達成されると訴えている。
In the occupied West Bank, the war continues | Israel-Palestine conflict | Al Jazeera [LINK]

イスラエルによるガザ攻撃は、「ジェノサイド」の意図を隠蔽する論理で実行された。筆者の調査によると、多くの兵士は、民間人の大量殺戮を「テロ容疑者暗殺」や「地域の安全確保」といった任務志向の軍事目的によって正当化。AI技術がこの合法性の見せかけを強化した。しかし、指導者層は「移住を促すための家屋破壊」や「10月7日の犠牲者1人につきパレスチナ人50人が死ぬべき」といったジェノサイド的な意図を公然と表明。この二つの動機が重なり合うことで、幅広い層が大量殺戮に参加。任務志向の論理は、非人間化を通じて個々の残虐行為を切り離し、兵士たちがジェノサイドの全体像を見失うことを可能にしたと、記事は指摘している。
The logic that helped Israeli liberals commit genocide [LINK]

メルケル元独首相によるバルト・ポーランド非難は、ウクライナ戦略の失敗と欧州の結束崩壊を背景とした責任追及(Blame Game)の始まりだ。欧州の戦略は、ロシアの戦果拡大と、トランプ氏の「費用は欧州持ち」の武器売却という新方針で破綻。欧州は勝てない戦争の費用を負い、戦略を米国に委ねる窮地にいる。ロシア資産没収の停滞や、ウクライナEU加盟への異論噴出など、政策は機能不全。さらに、カラスEU上級代表への不満や、独仏での反戦派の台頭により、政治的基盤も崩壊。欧州は独自の外交努力を放棄し、米国にトマホーク供与などのエスカレーションをロビー活動することで、核戦争のリスクを高めている。記事は、戦略的先見性のないこの政策が、自らの運命を他国にアウトソースしていると警鐘を鳴らす。
Blame game erupts in Europe as Ukraine strategy falters | Responsible Statecraft [LINK]

2025-10-22

戦争ではなくジェノサイド

ガザでの過去2年間の出来事は「戦争」ではなく、イスラエルによる包囲下の民間人に対するジェノサイドであり、現在の「停戦」という言説もその真の目的を隠す欺瞞である。停戦はイスラエルの占領とアパルトヘイト支配を終わらせるものではなく、違反行為が続いている。この「停戦」は、ハマスに人質解放後の武装解除を迫り、抵抗を続けるなら攻撃再開、武装解除すればイスラエルに有利な軍閥支配(アフガニスタン化)を招くという二重の罠を仕掛けている。トランプ氏の「和平計画」も、植民地主義的な管理と安定化部隊の派遣を構想しており、ガザをイスラエルの監視下に置かれた廃墟として残し、「管理されたジェノサイド」へと移行させることを目的としている。永久的な抑圧に対し、パレスチナの抵抗は終わらない。
It Was Never a Gaza 'War.' The 'Ceasefire' Is a Lie Cut From the Same Cloth - Antiwar.com [LINK]

10月16日のガザ和平首脳会議は、当事者であるガザの代表を排除し、曖昧なロードマップで終結した。米国主導の議論はガザの権利を無視し、イスラエルと米国の利益に基づく外部からの統治・監視を課す計画が浮上している。これは、イスラエルによる管理体制を温存し、パレスチナの自治を弱体化させるものだ。ガザの政治システムは崩壊し、ハマスもPAも正統性を失っている。筆者は、オスロ合意の失敗を繰り返さず、ハマスに代わる新たな「民衆と乖離した」勢力に置き換えるのではなく、パレスチナ人自身が政治文化の基盤を再考し、新たな政治組織を構築することで、ガザの未来を決定すべきだと訴えている。外部主導の枠組みから脱却し、主権と尊厳への道を自ら切り開くことが求められている。
Gaza must decide its own political future — before the world does for us [LINK]

ガザ沖に眠る天然ガス田(ガザ・マリーン)は、パレスチナ経済と住民生活を根本から変える可能性があった。しかし、1999年以降、イスラエルはこのガス田の支配権を求め、パレスチナの自治政府(PA)とBGグループの協定を妨害。ガスを市場価格以下で自国へ輸送し、収益を「テロ資金対策」として管理することを要求し、和平交渉の崩壊とガザ封鎖の引き金となった。また、ガザ紛争の背景には、スエズ運河の代替となるイスラエル主導の「ベン・グリオン・カナル」建設構想がある。この巨大プロジェクト実現の障害となっていたのがパレスチナのガザとハマスであった。この記事は、ガザの破壊の根底に、エネルギー資源の支配と世界貿易ルートにおける地政学的優位性の確保という、イスラエルの経済的・戦略的利益が存在すると論じている。
Israeli Scramble for Gaza’s Gas Reserves - Antiwar.com [LINK]

過去30年間の米国のベネズエラ政策は失敗を重ね、両国を軍事衝突の危機に瀕させている。2025年9月の米艦船による発砲事件は、この敵対関係の頂点だ。危機は、1999年のチャベス政権誕生以来のレジーム・チェンジへの固執と、2005年以降の包括的な経済制裁によって悪化した。制裁はベネズエラ経済を壊滅させたが、マドゥロ政権を打倒できず、逆に権威主義を強化した。米国はクーデターや野党への資金提供を通じて内政干渉を繰り返す一方、トランプ政権はマドゥロを「麻薬テロリスト」と断定し、軍事圧力を強化している。この政策は、外交を避け、一方的な制裁と軍事行動に頼り続けた結果であり、戦略的失敗を意味する。記事は、米国に対し、武力行使ではなく外交的関与と主権の尊重を優先する根本的な政策転換を求めている。
30 Years of Failure: How U.S.-Venezuela Relations Spiraled into Military Confrontation | The Libertarian Institute [LINK]

マルコ・ルビオ米国務長官は、かつてのネオコン的な政権転覆論者から、トランプ政権の中南米政策における最上位のタカ派へと変貌した。彼は国務長官と国家安全保障会議(NSC)議長を兼任し、絶大な権力を掌握している。現在、トランプ大統領が長年画策してきたベネズエラのマドゥロ政権転覆に向けた軍事・秘密工作作戦が具体的な形で進行中であり、ルビオ氏がその政策立案と実行の中心にいる。彼は、マドゥロ打倒の理由を、従来の民主主義促進ではなく、「麻薬密輸」や「移民」阻止といったトランプ大統領の「新モンロー主義」的・「アメリカ・ファースト」の論理に合わせることで、政権内の信頼を勝ち取った。この強硬なアジェンダは、政権内の異論を排し、ルビオ氏自身の個人的な目標とトランプ大統領の願望が一致した結果であり、米国をベネズエラへの軍事介入へと向かわせる主要な原動力となっている。
How ‘Little Marco’ Became Trump’s Top Hawk on Latin America - The American Conservative [LINK]

2025-10-21

自由を守る唯一の道

歴代大統領による政治的敵対者への国家権力の乱用は、トランプから始まったものではないとロン・ポールは指摘する。F・D・ルーズベルト政権は批判的な新聞社を税務調査で攻撃し、ケネディやジョンソンはFCC(連邦通信委員会)とIRS(内国歳入庁)を用いて保守派の放送を抑圧した。ニクソンは政敵をIRSで標的にし、クリントンは自身を訴えたポーラ・ジョーンズを監査した。ブッシュ政権はイラク戦争反対派を、オバマ政権はティーパーティー系団体を標的とした。バイデン政権では、暴力に関与しなかった1月6日議事堂事件の参加者までが重罰を受けている。ポールは、このような権力濫用は「福祉・戦争・規制国家」に内在する構造的問題であり、単に「正しい大統領」を選ぶのではなく、連邦政府の権限を憲法の範囲に縮小することこそが、国民の自由を守る唯一の道だと結論づけている。
It Didn’t Start with Trump - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

チャーリー・カーク暗殺から40日以上が経過しても、事件の真相は依然として不明である。報道では、容疑者タイラー・ロビンソンが30-06ライフルで発砲したとされるが、検視医は「出口傷がなかった」と述べており、威力の高い弾丸では説明がつかないという。さらに、弾丸自体も発見されておらず、FBIやメディアが検証した形跡もない。現場には「茶色の服の男」が遺体搬送を指揮する様子が映像で残されているが、彼の身元や関与も不明のままである。著者ポール・クレイグ・ロバーツは、調査の不透明さがイスラエル関与の疑惑を強めており、トランプ政権が事件を隠蔽している可能性を指摘している。
Who Buried the Investigation of Charlie Kirk’s Murder? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ前大統領は、リバタリアン色の強い共和党下院議員トーマス・マッシーを「弱くて哀れなRINO(名ばかり共和党員)」と罵り、元海軍特殊部隊員で州議選落選経験のあるエド・ガルラインに出馬を促した。マッシーはトランプの対イラン軍事行動を違憲と批判して以降、両者の対立が激化。トランプ陣営はイスラエル支持の富豪3人の資金で「MAGAケンタッキーPAC」を設立し、マッシー排除を狙う。しかし候補者不足が続き、ガルラインもまだ正式出馬を表明していない。マッシーはこれを「失敗した候補の起用」と嘲笑し、逆に過去最高の寄付を集めた。トランプが批判する一方で、マッシーは財政規律・憲法遵守・非干渉主義など保守本流の立場を堅持しており、彼を支持する層も根強い。
Is This MAGA? Trump Wants Lindsey Graham Donor To Challenge 'RINO' Massie - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ大統領は、中南米の麻薬組織対策を名目にCIAの権限を拡大し、ベネズエラ国内での活動を公然と認めた。通常、こうした作戦指令(いわゆる「ファインディング」)は極秘にされるが、トランプは記者会見で自ら言及し、軍艦やB52爆撃機を含む約1万人規模の部隊をカリブ海に展開していることも明らかにした。政権は麻薬密輸や不法移民対策を掲げるが、実際にはマドゥロ政権打倒が目的と見られている。CIAには麻薬カルテルに対する致死的攻撃や秘密工作の権限が与えられ、すでにドローンによる監視や攻撃準備が進む。だがベネズエラは米国との国交を断絶しており、CIA要員は外交的保護のない「非公式カバー」で活動しているため、摘発の危険が高い。著者ジラルディは、こうした軍事・諜報介入が実際の安全保障上の必要性に乏しく、むしろトランプの政治的誇示と心理戦の一環にすぎないと批判している。
Trump Unleashes the CIA on Venezuela - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

米国建国当初、各州は主権を保持した独立国家の集合として設計され、連邦政府の権限は限定的であった。しかし現在では中央集権化が進み、国家が個人の自由にまで干渉している。著者ローレンス・ヴァンスは、医療分野における「治療を試みる権利(Right to Try)」法を例に、自由の本質を論じる。テキサスなど多くの州は、末期患者が未承認の治療法を選択できる法を制定したが、本来こうした選択は政府の許可を要するものではないと指摘する。人は自らの身体の所有者であり、医療行為だけでなく、アルコール、未殺菌牛乳、薬物など、あらゆる摂取・行動について自己決定権を持つべきだという。ヴァンスは、国家が「安全」や「道徳」を名目に個人の選択を制限することは、自由社会の否定に等しいとし、政府は平和的かつ自発的な行為に介入すべきではないと結論づけている。
The Right to Try - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2025-10-20

社会秩序に政府は不要

代議制民主主義の不合理性は、政府があらゆる側面に介入し、国民の富と自由を犠牲にする特権の争奪戦を生むことにあると指摘する論説。議会の機能不全はその典型である。この問題を解決するには、民主主義を拒否し、個人の自由と財産権を完全に保護する「厳格に限定された政府」が必要であるという。アダム・スミスが説いたように、政府の役割は、暴力からの保護と公正な司法行政、および公共事業の維持という、最小限の三つの義務に限定すべきだ。政府の過剰な介入こそが、自由をめぐる内戦を引き起こす主要因である。トマス・ペインは、人類の間に存在する秩序の大部分は政府の効果ではなく、社会の原理と人間の自然な構成に由来し、政府がなくても存在し続けると述べた。社会の相互依存と相互利益こそが、社会を結びつける大きな連鎖を創造している。
TGIF: The Absurdity of Democracy | The Libertarian Institute [LINK]

リバタリアン哲学者ハンス=ヘルマン・ホッペの議論に基づき、この記事は、古典的自由主義が「限定政府」の理念に固執したことが根本的な誤りであったと指摘する。ホッペは、アメリカ合衆国憲法で政府に与えられた「同意なしに課税し、立法する権限」が、生命や財産の権利を侵害する手段となっており、「同意なしに課税できる機関が財産保護者でありうるのは不合理だ」と主張。また、民主主義は、普遍的で単一の法という古典的自由主義の概念と両立せず、社会主義の強化を招いたとする。真の自由のためには、国家自体を「攻撃的暴力に基づく社会主義を実行する機関」と見なし、古典的自由主義を放棄して私有財産アナキズムへと進むべきだと結論づけている。
Abandoning Classical Liberalism with Hans-Hermann Hoppe | The Libertarian Institute [LINK]

社会的な平和を達成するには、政府の権限を縮小(リトレンチメント)し、その役割を厳しく制限することが不可欠である。古典的自由主義者は、政府が権力を振るうほど、人々はそれを奪い合って「制度化された内戦」に陥ると警告する。フランスの初期の自由主義者が説いたように、課税権という合法的な略奪の力を持つ国家こそが階級対立の源である。この権力争奪が敵の悪魔化を招き、社会的な平和を脅かしている。平和は、政府がデュー・プロセス(適正な法の手続き)を順守する治安維持機関以外の何者にもならない場合にのみ実現する。政府が強制すべき唯一のルールは非侵略の義務であり、社会を自律的な社会の力に委ねることで、人々は平和裏に協力できる。
TGIF: Social Peace through Government Retrenchment | The Libertarian Institute [LINK]

この記事は、人間行動の根幹である自己同一性理論と社会同一性理論に基づき、腐敗のメカニズムを説明する。権力者は、周囲から特別扱いされ、「一般市民を超越したエリート」として行動する環境に置かれることで、その行動が個人の自己認識を変容させる。その結果、自分を一般のルールを超越した存在と見なすようになり、それが腐敗へと繋がる。心理学的な見地から、いかなる人間も巨大な中央集権的政府の権力を正しく行使する認知的処理能力を持っていないと結論付けられる。したがって、暴政を防ぐ唯一の方法は、特定の指導者に頼るのではなく、政府に集中する権力の総量を最小限に抑えるというリバタリアンの価値観を堅持することである。
The Psychology of Corruption | The Libertarian Institute [LINK]

現代社会の諸問題(精神疾患の増加、家族の崩壊、肥満など)について、左派・右派問わず「資本主義のせいだ」と批判する声が高まっているが、これは哲学的誤りである。経済学者ミ―ゼスの言う通り、資本主義は、消費者の要求に厳密に従い、資源を効率的に配分する中立的な生産様式にすぎない。資本主義には「意思」や「目標」はなく、欲望を増幅させる機能を持つ。人々がジャンクフード、退廃、あるいは無意味さを求めれば、資本主義はそれを大量に供給する。資本主義は、私たち自身の「顕示された選好」を反映する鏡である。もし社会が美徳ではなく悪徳に満ちているなら、それは私たちがそれを望んでいるからであり、システムが選択したわけではない。ルードヴィヒ・フォン・ミーゼスは、失敗を資本主義のせいにする人々を「スケープゴート探し」と呼び、それは自身の失敗に対する意識から目を背けるための心理的防衛機制だと解説した。より良い社会を築くためには、システムを変えようとするのではなく、自分自身を変えることから始め、醜さを助長する行動への資金提供を止め、徳を求めるべきだ。
Capitalism Isn't Responisble for Society's Flaws; You Are | The Libertarian Institute [LINK]

2025-10-18

多極世界の平和と自由

トランプ政権下のICE(移民関税執行局)による取り締まりは、本来の移民法執行機関から「国内テロ部隊」へと変質し、合衆国憲法を侵害する警察国家的な行動を常態化させていると指摘されている。覆面をしたICEのエージェント集団は、利益動機やノルマに煽られ、教会、病院、職場など、移民が「疑わしい」あらゆる場所で人々を強引に連行している。これらの行為は、ジャーナリストへの暴行(修正第1条違反)、市民の不当な連行(修正第4条違反)、令状なしの長期拘束(人身保護令状の侵害)など、市民の基本的権利を踏みにじるものだ。政権は、シカゴでの「ミッドウェイ・ブリッツ作戦」のような高コストな軍事的な介入を、凶悪犯を捕らえるためと主張するが、実際には連行された人々の70%以上に犯罪歴がないという。記事は、犯罪率が全国的に過去最低水準にあるにもかかわらず、政権が「法と秩序」を口実に国内に軍事力を投入するのは、恐怖を武器化し、政権の不祥事や支持率低下から国民の目をそらすための政治的見せ物であると批判する。そして、武力とマスクの陰に隠れて権力を行使するICEの行動は、立憲共和国の原理を放棄したものであり、「憲法の起草者たちが恐れたもの、つまり自国民に対して戦争を仕掛ける政府」になりつつあると警鐘を鳴らしている。
Police State Bounty Hunters: The Rise of ICE’s Unconstitutional War on America - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

本記事は、「もし憲法に権威がなくなったらどうなるか」という問いを通じて、米国における立憲主義の崩壊に警鐘を鳴らすものだ。連邦議会は、憲法上の権限を逸脱して生活のほぼ全側面に介入し、大統領は任期制の君主と化し、令状なしの通信傍受やデュー・プロセスなしの殺害さえ正当化する。かつて尊重された権利章典は一時的な特権に成り下がり、州の主権は失われ、すべてが完全に中央集権化された政府の支配下にある。さらに、ポッセ・コネタトゥス法は無視され、軍が国内の法執行に用いられ、警察との区別がつかない状況が常態化し、市民の自由とプライバシーが侵害されている。共和・民主両党は巨大政府を支持する「一党独裁体制」(ユニパーティ)となり、誰が権力を握っても戦争が続き、負債が増大し、自由が縮小する。筆者は、憲法の存在意義が否定された現在、自由に対する最大の危機が訪れていると訴えている。
A Constitution of No Authority - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

イスラエルを支持する新設企業「Show Faith by Works」は、FARA(外国代理人登録法)に基づいて、米国南西部(カリフォルニア、アリゾナ、ネバダ、コロラド)のキリスト教会やキリスト教大学を対象としたプロパガンダ活動を展開している。この活動には、地理的フェンス(ジオフェンシング)技術を用いたデジタル広告キャンペーンが含まれる。具体的には、同社は主要な教会の物理的な境界をジオフェンシングで設定し、礼拝時間中にそのエリアに入った人々の位置情報を追跡し、「親イスラエル的で反パレスチナ的な」広告を継続的に表示する。この320万ドル規模の契約には、有名人スポークスパーソンの雇用や、聖職者への報酬支払いによるコンテンツ制作も含まれる。対象となる数百の教会に取材したところ、キャンペーンについて知っている聖職者は一人もいなかった。この広告は、10月7日のハマスによる残虐行為や、民間人地域でのIDF(イスラエル国防軍)の戦闘の困難さを強調する移動式博物館への招待などを含む。専門家は、ジオフェンシングによる位置情報データの収集と利用は「プライバシーの悪夢」であると警告している。
Israel wants to pay US pastors a stipend to spread the word - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

著名な論客であるアイヴァン・イーランド博士の著書『A Balance of Titans: Peace and Liberty in the New Multipolar World』の書評。この記事は、米国が世界の警察官としての役割を放棄し、多極世界における平和と自由を達成するために、孤立主義的な外交政策を採用すべきだと論じている。イーランド博士は、米国防総省の予算増大やNATO、ウクライナ、イスラエルなどへの過剰な関与を批判し、特にイスラエルの運命は米国の「国内問題」にすぎないと指摘。博士が提唱する「独立国際主義」は、世界全体を対象とする現在の外交政策から脱却し、ラテンアメリカ、カリブ海、西大西洋、東太平洋といった「必須の国益」に焦点を限定するよう求めている。これは第二次世界大戦前の米国の外交思想への回帰を意味する。この政策転換は、他の大国にそれぞれの勢力圏内で紛争管理の余地を与える「勢力均衡」に基づき、年間国防費を約3,900億ドル(2025年度国防予算の約46%)にまで大幅に削減できると試算されている。博士は、米国が領土保全を脅かすライバルに直面していないことから、イギリスが19世紀後半に米国を大国として台頭させたように、米国も中国を平和的に大国として受け入れるべきだと主張している。また、帝国主義的な政策が、監視社会、軍事化された警察、テロリズムという「ブローバック」を通じて国内の自由を失わせている現状にも警鐘を鳴らしている。
Americans Can Find Peace in a Multipolar World | The Libertarian Institute [LINK]

2025-10-17

違法な政権転覆

ウクライナやイスラエルでの紛争によりミサイル備蓄が減少したことを受け、米国防総省は、中国との有事への備えとして、兵器メーカーに対しミサイル生産速度を2倍から4倍に加速するよう促している。パトリオット迎撃ミサイルなど12種類の増産を目指すが、専門家は、この野心的な生産体制の強化は時間、コスト、物流面で課題が多く、国防総省からの実質的な財政支援なしには失敗する可能性があると指摘する。特に、現在の防衛産業基盤は平時向けであり、短期間での大幅な生産加速には適していない。一部のミサイルでは生産倍増に数年かかり、4倍となるとさらに困難と見られている。また、個々のミサイルが高価であるため、増産目標達成には数百億ドルが必要になると予想される。専門家は、ペンタゴンの意図を実現するには、単なる「要請」だけでなく、具体的な契約と資金投入が必要不可欠であり、米国の国益に直結しない紛争に弾薬を浪費しないよう、対外コミットメントを再評価すべきだと警鐘を鳴らしている。
US depleted its missiles in Ukraine, Israel. Now it wants more fast. | Responsible Statecraft [LINK]

ドナルド・トランプ大統領は、かつて「平和の立役者」としてのレガシーを誇り、「新たな戦争を始めない」と公約していたにもかかわらず、現在ベネズエラに対して軍事行動を示唆している。米国は現在、ベネズエラ周辺地域に1万人以上の部隊、ミサイル駆逐艦、F-35B戦闘機などの大規模な軍備増強を行っており、これは麻薬密輸対策を名目としながらも、マドゥロ政権の転覆(レジーム・チェンジ)が真の目的であると記事は指摘している。トランプ政権はマドゥロ大統領を「麻薬テロ組織の指導者」と見なし、外交的な働きかけを打ち切った上で、「武装紛争」状態にあると議会に通知。さらに、大統領の権限でベネズエラの小型ボートに対する殺傷能力のある攻撃を命じ、CIAにマドゥロ大統領やその政府に対する秘密裏の殺傷作戦を含む「秘密工作」を許可したと報じられている。この行動は、米国がこれまで1908年や2002年、2019年にもベネズエラの政権転覆に関与してきた古い思想の再来である。記事は、この戦争とレジーム・チェンジへの新たな試みは、地域の不安定化を招くだけでなく、国際法を蔑ろにし、アメリカ中心の「ルールに基づく秩序」が、アメリカの利益のために国際法を都合よく適用する原則に基づいていることを露呈していると批判している。そして、国連と世界は、アメリカの無謀な行動と例外主義に「ノー」を突きつけ、違法な戦争を止めるべきだと強く主張している。
President Trump Goes to War! - Antiwar.com [LINK]

ベネズエラの野党指導者で活動家であるマリア・コリーナ・マチャド氏がノーベル平和賞を受賞したことは、米国が同国のニコラス・マドゥロ政権に対する強硬姿勢を強める中で、彼女にとって追い風となっている。米国はカリブ海地域に過去数年間で最大規模の軍事力を集中させ、表向きは麻薬密輸阻止を掲げながらも、マドゥロ政権に対する軍事作戦の可能性がささやかれている。マドゥロ政権は、米国の「武力攻撃」の可能性に備え、国連に緊急会合を要請する事態に発展している。米国務長官のマルコ・ルビオ氏はマドゥロ氏を「正統な大統領ではない」とし、米国はマドゥロ氏を犯罪組織の指導者と見なしている。トランプ政権は、ベネズエラ政府が提示した石油・金プロジェクトの米国企業への開放や、中国・イラン・ロシア企業との契約解消を含む外交的譲歩案すら拒否しており、政権交代を強く求めている。ノーベル平和賞の受賞は、マチャド氏が「民主主義のツールが平和のツールでもある」ことを示したことによるが、彼女はこの賞をマドゥロ政権への対抗手段として活用している。トランプ大統領は、平和賞を「あなたが本当にふさわしい」としてマチャド氏に献呈すると感謝の意を伝え、連携を深めている。マチャド氏は、米国の軍事介入後に樹立される可能性のある新政権において、主導的な役割を果たすことが濃厚である。
The Nobel Peace Prize Committee Goes to War - The American Conservative [LINK]

トランプ政権による国内の軍事占領は、米国の民主主義の根幹を揺るがす異常事態であると指摘されている。トランプ大統領は、軍幹部への演説で、ロサンゼルス、ポートランド、シカゴなどの「急進左派民主党が運営する都市」を立て直すため、軍隊が主要な役割を担うとし、これらを「内なる戦争」や軍の訓練場として利用すると公言した。実際、政権は再任初年度に、州知事の意向に反して州兵を連邦化(Title 10)して都市を「占領」し、連邦裁判所に違法と判断された後も、インサレクション法(反乱法)の発動を示唆して軍の国内展開を押し進めている。これは、連邦軍の国内法執行を禁じるポッセ・コネタトゥス法に違反し、大統領が独自の警察力を行使しようとするものだ。さらに政権は、特定の政治的敵対者(アンティファなど)を「国内テロ組織」と指定する枠組みを構築し、彼らを非人間化する発言を繰り返している。また、議会の同意なしに秘密裏に「非国際武力紛争」を宣言し、テロリストと見なした者に超法規的な致死力を行使する権利を主張しており、これは「非常に危険で不安定化を招く」と警告されている。記事は、トランプ政権のこうした一連の強権的な措置が、米国を権威主義的な警察国家へと急速に近づけていると結論付けている。
The Trump Administration's Military Occupation of America - Antiwar.com [LINK]

2025-10-16

公然の干渉

著者は、米国およびイスラエルがガザ・パレスチナに対して支配と服従を押し付けようとする構図を、「屈服の映像(images of abject submission)」を世界に示すことで正当化しようとしていると批判する。だが、パレスチナ人は徹底した破壊・虐殺にもかかわらず屈服せず、逆に抵抗を継続しており、期待されたような映像は現れていないという。著者は、米国・イスラエル政府が、絶対軍事力とドル覇権を武器に、世界を威圧的に支配しようという幻想を抱えていると見る。トランプ政権は、軍事・制裁・通貨政策を結びつけ、覇権の再興を狙っているが、その中で「制圧=服従」が現実には実証されておらず、むしろ反発・分裂・国際的批判を強めていると論じる。最終的に、著者は、支配を正当化しようとするプロパガンダと現実との乖離が鮮明になりつつあると締めくくる。
Waiting on Images of Abject Submission That Don’t Appear - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ大統領は、イスラエル寄りの政策を実行する際、イスラエル系大富豪ミリアム・アデルソン(故シェルドン・アデルソン夫人)からの影響・資金提供が大きいことを度々公言していると記事は指摘する。トランプ自身、「ホワイトハウスに何度も彼らが来て要望を伝えた」「イスラエルやゴラン高原を支持した」などの発言を通じて、アデルソン夫妻との関係を露骨に語ってきたという。記事は、こうした発言が、もし他国のオリガルヒからの支援・影響が問題視されるように、政権の正当性・外交方針への疑問を投げかけうると主張する。加えて、トランプが「ロシアとの関係で干渉を受けている」と批判された過去と比較し、イスラエル系の資金提供と影響がいくらでも公然と語られている点を、メディアや政界がほとんど問題視しないことを批判している。
Trump Keeps Admitting That He Is Bought And Owned By The World’s Richest Israeli | by Caitlin Johnstone | Oct, 2025 | Medium [LINK]

著者は、トランプのガザ和平案は、パレスチナ側の敗北を確定させ、ガザ住民の民族浄化を助長する「欺瞞(ploy)」に過ぎないと批判する。米国はこれまでも、パレスチナ人の大量虐殺を「自己防衛の権利」として正当化し、イスラエルを支持してきた。バイデン政権・トランプ政権とも、本質的立場は変わらず、イスラエルに都合のいい和平構想を調整してきたにすぎないと見る。特に、トランプの和平案では、ガザとヨルダン川西岸を別々に統治し、ガザは「平和委員会(Board of Peace)」の管理下に置く設計が含まれており、事実上の植民地支配を意図していると論じる。著者は、このような和平案は過去のレバノン侵攻・サブラ・シャティーラ虐殺など、米イスラエルが歴史的に行ってきた操作の再現であると述べ、しかも今回は隠蔽や言い訳をほとんどせず露骨な形で進められていると警告する。歴史の反復として、イスラエルは和平という語を用いながら、ガザ・パレスチナを物理的に制圧・浄化する行動を正当化してきた。今回も、停戦・和平・国際監督といった言葉が、実際には占領・制圧の装置となる可能性が高いと著者は結論づけている。
From Sabra and Shatila to Gaza: The Vicious Cycle of US-Israeli 'Peace' Ploys - Antiwar.com [LINK]

停戦交渉が進む中、イスラエル軍はガザから撤退し、ハマスとの人質交換も行われた。しかし著者は、これを「虐殺同盟による和平(peace of genocide alliance)」と呼び、真の和平ではなくむしろ占領・抑圧を正当化する見せかけにすぎないと批判する。記事によれば、ガザの92%以上のインフラが破壊され、数百万トンの瓦礫が積み上がっている。これを「虐殺の余波」と呼び、再建には何世代もかかるだろうと論じる。トランプの和平案は、パレスチナ国家の権利を明確に認めず、ガザを国際管理下に置く構造を前提としており、これまでの支配構造を実質的に更新するものにすぎないという。さらに、記事は、イスラエルと米国が国際法違反・人権侵害を無視し続け、責任を取らず、代わりに「和平」を外交的カードとして使う構図を「平和の名の虐殺(peace of genocide)」と呼んで強く批判している。
Gaza: The Peace of the Genocide Alliance - Antiwar.com [LINK]

Oracle 社の CEO(当時)サフラ・カッツは、2015年のメールで、米国における反イスラエル運動(特に大学キャンパスでのBDS=不買・投資引き揚げ・制裁=運動)に警戒感を示し、「子どもが大学に行く前にこの戦いを戦わねばならない」「アメリカ文化にイスラエルへの愛と敬意を埋め込まねばならない」と述べている。また、当時彼女は、イスラエル国防軍をアメリカ世論に「人間味」あるものと見せるリアリティ番組企画への関与を、元イスラエル首相エフード・バラクに持ちかけようとしていたという。記事は、このメールが、TikTok を Oracle が取得しようとしているタイミングと重なることを指摘する。TikTok 買収の正当化理由として「中国からの影響排除」が挙げられているが、Oracle 内部にイスラエル支持を公言する人物が関与している点から、単なる国家安全保障論理以上の影響力操作が念頭にある可能性を疑わせるとの見方を示す。ただし、メールの真正性を確認できる証拠は公的には存在せず、関係者はその真偽を明言していない。
TikTok investor: 'Embed the love and respect for Israel' in the US | Responsible Statecraft [LINK]

2025-10-15

ノーベル「戦争賞」とベネズエラ

ノルウェーのノーベル委員会は、2009年にオバマに平和賞を授与したが、彼はその後、少なくとも七か国に対する空爆を行い、アメリカ市民に対する無人機攻撃も実施した。ゆえに、この賞は「平和賞」ではなく「戦争賞(War Is Peace)」の様相を帯びていると著者は痛烈に批判する。2025年の平和賞は、ベネズエラ反体制派のマリア・コリナ・マチャドに贈られることが発表されたが、著者はその背景を疑念をもって見る。マチャドは2002年のクーデター未遂に関与したとされ、米国の「体制交代(regime change)」装置である NED(National Endowment for Democracy = 米国政府系の援助・プロモーション機関)との関係が指摘されている。さらに、彼女はイスラエル首相ネタニヤフに手紙を書き、ベネズエラ政府転覆の協力を求めた過去もある。トランプ政権は現在、ベネズエラ近海に艦隊を派遣し、「斬首攻撃(decapitation strikes)」を公言しており、マチャドの平和賞は外部軍事介入への名分を与える可能性があると著者は指摘する。著者は、ノーベル委員会はこの賞をソフトパワー・宣伝手段として使っており、マチャドへの授与タイミングは米国の外交・軍事戦略と連動していると見ている。
The Nobel (War Is) Peace Prize - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプがガザ和平案に署名した式典は、紛争当事者であるイスラエルもハマスも出席しておらず、まさに「花嫁も花婿もいない結婚式」のような茶番であったと著者は批判する。トランプは、出席していた多国の指導者にパレスチナ国家承認を語らせ、一方でイスラエルには引き続き強硬策を取らせる二重政策を採る可能性が高いと懸念される。和平案では、相互人質解放などが第1フェーズとされているが、破壊された建物の下に埋もれた遺体の回収不能を理由に、イスラエルが空爆再開を正当化する口実を得る可能性も指摘されている。歴史を振り返れば、1967年以降イスラエル・パレスチナ間では少なくとも12回以上の停戦が破綻しており、今回の合意も長期には持たないだろうと著者は断じている。著者は、トランプはその場を取り繕う言葉で出席者を満足させつつ、裏ではイスラエル側やシオニスト勢力向けに別のメッセージを語っていると分析。こうしたダブル・トーク政策は、必ずどちらかを失望させ、和平案は実効性を欠く「虚構の合意」に過ぎないと結論づけている。
Trump’s Gaza Peace Plan… A Wedding Without a Bride and Groom - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

イスラエルの閣僚らは、ガザにおける停戦を解除し、攻撃を再開する意向を公然と宣言している。国防相カッツは、拘束イスラエル人の帰還後にハマスのトンネル網を破壊するよう命じたとツイートしており、これを「ガザの非軍事化」「ハマス武装解除」の実現として表明している。ネタニヤフ首相も同様の発言を繰り返し、ハマスが自発的に武装解除しなければ「強硬手段」で実行する構えだと述べている。一方、トランプ大統領は「戦争は終わった」と主張しており、米国とイスラエルの間であからさまに立場の相違が浮き彫りになっている。また、イスラエル政府は、ハマスが遺体を隠していることを口実に、復興制限、物資流入禁止、施設閉鎖などの制裁を加えると報じられており、停戦延長を正当化させない政策を準備しているとされる。
Israeli Officials Are Openly Saying They Plan To Resume Attacks On Gaza - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプが「ウクライナは領土を全て回復して勝利できる」と宣言した背景には、米国要員によるブリーフィングが影響していると記事は指摘する。彼らは、ロシアが大規模攻勢を重ねても顕著な領土獲得をできておらず、ロシア経済も苦境にあるとの見方を共有したという。記事はこれに対して、ロシア経済は制裁下にあっても安定成長を維持し、2025年には GDP が1%超で伸びるとの予測もあると論じる。対照的に、ウクライナ経済は国際援助なしには維持困難であり、巨額の赤字を抱えている。兵力面でも、ウクライナは人員枯渇・戦死・脱出の問題を抱えており、攻勢を展開できる十分な兵力を持っていない。過去の攻勢作戦(2023年、2024年)でも多くの装備と人的損耗を被ったが、効果的な突破を果たせなかった。記事は、トランプの発言が現地の消耗戦・兵力・補給・国際援助との齟齬を無視した楽観視に基づくものだとし、現実的には「全面奪還」は極めて困難であるとの結論を導く。
Evaluating Trump’s Claim that Ukraine Can Win the War - Antiwar.com [LINK]

2025-10-14

真理は大衆に語るな

アルバート・ジェイ・ノック(1870〜1945)は、アメリカが19世紀末の自由放任主義の時代からニュー・ディール的管理国家へと移行する過程を生き、自由主義的批判を展開した思想家である。彼は神父を辞して文筆に専念し、雑誌 The Freeman を設立。個人の自由と国家(State)との区別を重視し、政府が「政治的手段」によって富を再分配する仕組みを問題視した。ノックは、政治を通じて他者の富を奪おうとする勢力を「国家」という枠組みで批判し、代わりに自然権と自発的結合を基盤とする統治を支持した。彼はまた、「Remnant(残余)」という概念を学究的に用い、真理を語る者はいわゆる大衆ではなく、原理を理解できる少数者に向けて働きかけるべきだと主張した。ノックの思想は、後の自由主義運動や旧右翼運動、リバタリアニズムに大きな影響を与えた。たとえば、ウィリアム・F・バックリーらは、ノックの厳格な個人主義と反政治的傾向を評価している。ノックによれば、国家は歴史的に侵略と略奪の手段として発展してきたものであり、改革はその構造を根本から問い直すべきである。彼はまた、教育制度や平等主義を批判し、平等な知能や能力を前提とせず、優れた知性と品性を育てるエリート教育の必要性を説いた。
Albert Jay Nock, Radical Individualism, and the Remnant | The Libertarian Institute [LINK]

シェルドン・リッチマンは、トランプ大統領が就任初日に出した、「バイデン時代の言論制限政策を繰り返さない」との大統領令は虚偽であったと批判する。実際、トランプは批判報道を訴訟で制圧しようとし、公聴の場でライセンス剥奪を匂わせ、FCC(連邦通信委員会)を通じて放送免許を盾にメディアを抑え込む動きを見せている。彼は、自身にとって不利な報道に対して報復的な姿勢をとり、「憎悪発言(hate speech)」という曖昧な概念を用いて言論を抑制しようとする主張を支持してきた。また、アメリカの放送制度そのものに根本的な欠陥があると指摘し、電波使用権を国家機関が許認可制に置く現行モデルは、言論の自由と相容れないと論じる。最終的に、リッチマンは、トランプを問わず、自由言論を守るには、ラジオ・テレビの免許制度そのものを見直し、政府の検閲力を削ぐ構造的改革が不可欠であると結ぶ。
TGIF: Trump Fibbed about Favoring Free Speech | The Libertarian Institute [LINK]

レナード・リード(Leonard Edward Read)は20世紀の自由主義運動において、レッスフェール経済思想の普及において大きな影響を与えた人物である。彼は 1946 年に経済教育団体 FEE(Foundation for Economic Education)を設立し、自由市場・個人自律・非強制的協調の思想を広めるべく活動した。記事は、リードの代表作 “I, Pencil” を取り上げる。同作品は、1本の鉛筆がどれほど多くの人々と高度な分業・協調関係によって作られているかを示す寓話で、計画経済や中央統制の無能さを際立たせるモデルとされる。リードは、自由は単なる経済政策ではなく、個人の品性や道徳教育と不可分だと考えた。彼はロスバード、ミーゼス、ノックらの思想を融合させつつ、自由を広めるには暴力的な手段ではなく「教育」による説得が不可欠と主張した。FEE の夏季セミナーやパンフレット配布などを通じて、リードは若い世代に影響を与え、後進の自由主義者・学者に思想の根を張らせた。記事は、リードが「思想を通じて世界を変える」ビジョンを体現した「光を与える者(light giver)」として記憶されるべきだと結んでいる。
Leonard Read, Still Educating Today | The Libertarian Institute [LINK]

本稿は、いかに「立憲主義(constitutionalism)」が自由を守る枠組みとして機能しないかを論じる。著者ジョセフ・ソリス=ムレンは、古典的自由主義者たちは憲法や制度的拘束が権力を抑制できると信じていたが、この信仰こそが致命的な誤りであったと主張する。たとえ細かく制約を設けた憲法であっても、支配者はそれを解釈変更・例外設定・非常事態名目などによって形骸化させてきた。アメリカ合衆国を例に取れば、1787年憲法は制限政府を目指したものの、通商条項の拡張、関税・補助金、緊急時の人身保護令(habeas corpus)の停止などを通じて、政府権限が段階的に肥大化したと論じられている。この記事は、最終的に、自由を本当に守るためには、国家を縮小または除去し、強制的独占ではなく契約と自発協調による制度に基づく社会を志向すべきだと結論づけている。
The Failure of Constitutionalism | The Libertarian Institute [LINK]

2025-10-13

アメリカの内戦

著者カレン・クヴィアトコウスキは、アメリカはすでに「内戦」の様相を帯び始めており、トランプ政権がその一翼を担っていると主張する。国家は外部・内部の敵双方に対して武力・統制手段を用い始めており、言論統制、物語操作、国家安全保障名目による介入が常態化している。彼女は、ウクライナやガザ、ベネズエラといった紛争地が、国家の監視技術・兵器技術・宣伝戦略を試す「実験場」と化しており、これら技術が米国内に導入されつつあると論じる。国家は市民を「敵性集団」と見なし、統治システムを軍事化・技術統制化し、自由な抗議や反対意見の空間を縮小させている。記事は、「市民を敵とみなす国家」の台頭こそが現代の「内戦」であり、トランプはそれを政治的戦略として利用している可能性を示唆する。最終的に、国家統制が強まる中で、真の自由や異論の余地を守る必要性が強調されている。
Is Trump Preparing for the Next Civil War, or Already Fighting It? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

ポーランド政府は、2022年のノルドストリーム・パイプライン爆破事件への関与を疑われたウクライナ人被疑者「ウォロディミル・Z」のドイツへの引き渡し要請を拒否しようとしている。記事によれば、ポーランド首相ドナルド・トゥスクは「ノルドストリームを爆破されたことが問題なのではなく、それを建設したことが問題だ」と発言し、被疑者の行為を一部称賛するような言辞を示したという。同時に、ポーランドの国家安全保障機関首脳も「もし彼がロシア戦争機構を損なう行為をしたなら、それは処罰されるべきではない」と発言し、国家が被疑者側に肩入れするような態度を見せている。現在、ポーランドの裁判所は被疑者を40日間拘留し、ドイツ側の欧州逮捕状に基づく引き渡しの可否を判断中である。著者は、この事例を、ヨーロッパ法や国家間協力の枠組みを軽視する動き、あるいはウクライナ・ロシア戦争の文脈下で「合法な破壊行為」を英雄化する傾向の表れとして批判的に扱っている。
Poland Pushes Back On German Nord Stream Extradition Request, Praises Suspect For 'Harming Russian War Machine' - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

国家補助金・連邦資金への依存は、自由を蝕む慢性的な罠であると著者は警告する。連邦政府の部分的な閉鎖により、州政府や地方自治体が既約束のインフラ整備やエネルギー計画、助成金を得られなくなる恐れが広がったことが報じられている。だが、これを「連邦主義(地方分権)の復権」と期待するのは幻想だ。補助金や歳入の受給は「毒入りの甘い蜜」であり、最終的には統一的な強制基準(baseline)を押し付ける手段として機能する。政府への「中毒」は、減額だけでも市民・政治家双方にとって不当な切り下げ行為とみなされ、抗議を呼ぶ。20世紀以降、道路・教育・住宅・福祉など、あらゆる分野で連邦支出が拡大し、各州は徐々に自主性を手放してきた。補助金は縄目に似ており、受けるほど自由な選択肢を縛る。国家権力の集中化を食い止めるには、補助金依存を断ち、地方分権・退出(exit)の原理を重視するしかないと締められている。
TGIF: Hooked on the State | The Libertarian Institute [LINK]

著者ダン・サンチェスは、自由(liberty)の根拠として、「自然権論」「功利主義」「神学」を統合した観点を主張する。まず、ロスバードらが唱える自然権論(自己所有や私有財産の権利)を中心に据えつつ、これを合理的に人間の性向に即したものとみなし、功利主義(効用最大化)の観点からも、こうした権利を守ることが社会全体の福祉を高めると論じる。さらに、著者はキリスト教信仰者として、神が人間に与えた自然本性や善悪の認識、そしてモラル指導を通じて、自由の神学根拠を位置づける。創造主による権利付与という視点と、人間理性・経済原理との整合性を強調し、自由は「自然的・実利的・神聖的」な三重の根拠をもっていると結論づけている。
Liberty: Natural, Practical, and Divine | The Libertarian Institute [LINK]

2025-10-11

帝国に挑戦する思想

この数週間、トランプ大統領はアメリカ本土から1500マイル離れたカリブ海域で、スピードボート4隻を無警告で攻撃し、乗船者を皆殺しにするよう命じた。被害者は「ナルコ・テロリスト」とされ、違法薬物輸送の計画者と見なされたというが、裁判で有罪判決を受けた者はいない。記事は、憲法上、超法規的な殺害は許されず、議会が宣戦布告しなければ大統領は軍事行動を起こす権限を持たないと主張する。憲法第一の役割は、議会に法制定と宣戦の権限を与え、大統領はその法に基づいて行動すべきである。さらに、憲法修正第5条・第14条により「人の命・自由・財産は適正手続きなしには奪われてはならない」と規定されており、これらの原理は国籍を問わずすべての人に適用される。記事は、今回の命令を正当化するために作成されたという法的覚書が分類扱いとされている点を批判し、秘密の「殺害許可理論」が憲法および司法判断を無視する危険性を警告する。
When Presidents Kill - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスとの和平交渉中にトランプ大統領が要求したガザへの爆撃停止を無視していると著者は指摘する。トランプは「和平交渉の間は即時停戦を認めなければならない」と公式に強く主張し、西岸の併合も許さないという姿勢を示したが、イスラエル側はこれに従っていない。この記事は、ネタニヤフがアメリカの要求を事実上無視し、軍事行動優先の立場を固めていることを批判し、トランプ政権との関係の亀裂が露呈していると論じている。
Israel Ignores Trump Demand To Stop Bombing During Peace Discussions - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

ジャスティン・ライモンドが提唱した「リバタリアン・リアリズム(自由主義現実主義)」は、介入主義・帝国志向の外交政策に対する体系的批判の枠組みを提供しようとする思想である。記事は、この理論を、パブリック・チョイス理論(公共選択理論)と、不侵略原則(Non-Aggression Principle:NAP)の二本柱で構成されると説明する。ライモンドによれば、外交政策は「国家の利益」の抽象的な話ではなく、政治家・官僚・ロビー団体ら個人の利害・動機から生まれるものであり、選挙・権力・特権を狙うエリートが戦争と介入を歯車として使ってきたという。さらに、NAP を外交政策に適用することで、侵略・前方展開・条約による強制などを拒否し、国家間関係は非干渉・自己防衛を原則とすべきと論じる。記事は、この立場が「リバタリアニズム」でありながら現実的(realistic)な国家観をもたらし、帝国主義志向の政治勢力を批判・予測できる視座を与えると結語している。
Libertarian Realism: Justin Raimondo's Challenge to Empire | The Libertarian Institute [LINK]

著者ダグ・バンドウは、NATOと欧米が現在露呈している対ロシアへの態度を「狂気(mad)」と呼び、同盟国が戦争拡大を煽る方向へ暴走していると批判する。まず、ヨーロッパ諸国は依然として米国に安全保障を全面移譲したまま、軍事支出を増やすことなく他国依存の体質を続けており、NATOの創設当初の理念(欧州自身で防衛を担う)は実現されていないと指摘する。さらに、NATO加盟国の政府がロシアを「敵視」し、空域侵犯や無人機・風船飛行、サボタージュなどの疑いをもたらす事案を理由に、ロシアとの全面戦争を準備させようとしていると論じる。特に、ウクライナ支援を通じて、米欧は代理戦争(プロキシ戦争)を越えて、ロシア本土に攻撃を仕掛けるよう求める段階へ移行しつつあると警告する。著者は、もしヨーロッパが米国主導の戦争に巻き込まれ、核戦争になればその被害は計り知れず、米国も自殺的行為を選ぶことになると結論付け、「今こそアメリカファーストを明確に打ち出すべき時だ」と訴える。
NATO Goes Mad - The American Conservative [LINK]

2025-10-10

憲法無視の暴走

イスラエル政府は、長年にわたり秘密裏にソーシャルメディア操作を通じ、イラン王家ルーツのレザー・パフラヴィ(元イラン皇帝の長男)を「追放された正統な王位継承者」として国内外に宣伝するプロパガンダ工作を展開してきたという。このキャンペーンでは、AI によって生成された偽アイコンを持つ架空アカウント群、ボット/トロールネットワーク、プロファイル偽装などが駆使され、彼の支持・王政復帰の正当性を印象づける投稿が大量に拡散された。発覚のきっかけは、イスラエル政権関係者による AI 合成映像の投稿であった。この映像には、ネタニヤフ首相らとパフラヴィ家メンバーがテヘラン市内を歩く様子が映され、「来年は自由なテヘランで」などのキャプションが付されていた。投稿は異常な閲覧数を記録し、不自然な拡張パターンが研究者により追跡された。ハアレツ紙の調査によれば、こうしたアカウント群の一部は 2022 年のイランでの反体制運動時期に開設され、最近の 12 日戦争期にはさらに 100 を超えるアカウントが設立されて、ネットでの影響力強化に利用された可能性がある。しかし、この工作は大きな成果を得てはいない。パフラヴィ本人はイラン国内外で大きな支持を得ておらず、むしろ王位支持の主張は反感を買うケースも多い。記事は、イスラエルによるこの種の心理戦術的介入は、資源を注ぎ込みながら成果をあげられなかった点で「大きな失敗」であると評している。
Israel's Secret Social Media War On Iran - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

著者らは、トランプ政権が「国内戦争(everywhere war)」構想を導入し、憲法上の制約を無視して国家統制を拡大しようとしていると警鐘を鳴らす。特に注目されるのは NSPM-7(国家安全保障大統領覚書7号)で、これが「国内の脅威を調査・阻止・解体する」ために各省庁データを統合し、監視・捜査体制を強化する枠組みを定めているという。だが基準は曖昧で透明性や外部監督が欠如しており、反体制や批判的言論まで「脅威」として扱われかねないという懸念が提起されている。さらに、記事は政府が「戦争」と名付けるだけで対象を「戦闘員」と再定義できる論理の危険性を指摘。都市を戦場化し、市民を疑わしき者として扱う構図が国内にも適用されつつあると論じる。また、過去の法制度縮小や大統領権限拡大の流れ(愛国法、FISA 裁判所、NSA のメタデータ収集など)を振り返り、今日の NSPM-7 はそれらの「次段階」であり、特権的権力の恒常化・制度的正当化を図るものだと主張されている。最後に、著者らはこう警告する。このような体制拡大はクーデター的なものではなく、ゆるやかな「権力の常態化」によって自由を蝕む形で進行する危険がある。市民が無抵抗に受け入れれば、憲法的抑制は消失しかねないという。
Trump’s Everywhere War: An Insurrection Against the Constitution - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ政権は、「対テロ戦争(war on terror)」と「麻薬戦争(war on drugs)」の手法を組み合わせた過激な政策を展開しており、それが法の支配と市民自由を甚だしく脅かしているという批判がなされている。具体的には、アメリカ軍がベネズエラ沖で麻薬密輸の疑いがある船舶を撃沈した事件が紹介されているが、当局はその船が実際に麻薬を運んでいた証拠を提示できていない。この記事は、このような一方的な軍事介入が国際法および米国憲法原則を無視するものであると論じる。さらに、著者はトランプが先行政権の悪弊を拡張しており、戦時期の権限強化(監視体制、国家安全保障関連の強化、恣意的拘禁など)を麻薬戦争・テロ戦争双方に適用する動きを問題視する。特に、疑いだけで軍事攻撃を正当化し、立法権・司法審査を経ずに行動できるという前例を積み重ねることが危険とされる。著者は、こうした権限濫用と権力肥大の先にあるのは、憲法制約の骨抜き化であり、将来的な「無制限大統領権力」の恒常化だと警告する。
Donald Trump's 'Combo War' on Terror and Drugs Is Out of Control - National Security Journal [LINK]

モニカ・ダフィー・トフトとシディタ・クシによる『Dying by the Sword』のデータに基づき、アメリカは1776年から2019年までに392件もの軍事介入を行ってきたとされる。これらの介入は、ラテンアメリカ・カリブ海地域が約34%、東アジア・太平洋地域が約23%、中東・北アフリカが14%、欧州・中央アジアが13%、サブサハラが9%を占める。半数以上は第二次世界大戦以降、さらに冷戦後はそのペースが急増し、2001年以降では年平均 3.6 回に及ぶ。興味深い点として、冷戦期を除いた期間では、アメリカの攻撃性(hostility)は相手国よりも常に高く、つまり多くの戦争は防衛戦争ではなく意図的な帝国戦争(wars of choice)であった可能性が高い。さらに、1776年~冷戦終結までの介入の75%以上はアメリカ単独で実行された。記事は、こうした長年の介入政策が、対象国・地域において反米感情や不信、権威主義体制の肥大化を生んできたとして、アメリカ自身が対立国を「創造し」てきたという構図を提示する。そして、これらの戦争は「選択された戦争」であり、アメリカこそが戦争の escalator(拡大要因)であったと結論づける。

2025-10-09

トランプ政権のネオコン外交

パラマウント(CBSを含む)を所有するデビッド・エリソンは、イスラエル政府主導の活動に関与し、米国内の親パレスチナ活動家を監視・抑圧するためのスパイ計画に関わっていたとの内部メールが流出した。この計画「12部族」では、複数のユダヤ系億万長者を資金提供者として動員し、元イスラエル情報機関関係者が運営する監視会社を通じてボイコット・投資撤退・制裁(BDS)運動支持者を標的とする意図が明らかになっている。メールには、元イスラエル国防相ベニー・ガンツがエリソンをこの構想に招いた経緯や、彼らが「国家から独立」したように見せかけつつも実質的にはイスラエル政府と連携しようとした戦略が記されていた。また、エリソンはCBSの編集責任者に親イスラエル的立場を持つバリ・ワイスを起用しており、メディアの編集自由性にも強い懸念がもたれている。
New CBS owner David Ellison met with top Israeli general in scheme to spy on Americans - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプはウクライナ戦争を欧州諸国に「引き渡す」形で、米国の直接的関与を後退させたと主張する。だがその裏で、新たなる戦線が生まれつつあると著者は論じる。それが「第8の戦線」と呼ばれる、アメリカ国内を舞台とした戦いである。イスラエルは軍事・外交だけでなく、アメリカにおける政治・メディア・資金操作を通じて、世論支配や支援構造を確立しようとしていると著者は見る。超富裕ユダヤ人投資家らによる政治・情報機関への介入、米国内メディア掌握、SNSアルゴリズム操作などがその手段とされる。イスラエル支配を強化するには、アメリカ自体を戦場と見なし、アメリカ人の意識や政策を支配下に置く必要がある、というのが本論である。
American Juncture as Israel’s Eighth Front Ignites - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

「アメリカ・ファースト(America First)」と称されるトランプ外交路線は、実際にはリアリズム(現実主義)を装ったネオコン政策であり、政策内容においてバイデン政権との連続性が目立つと著者は批判する。外交理論には主にネオコン、リベラル介入主義、リアリズムの3派があり、リアリズムは国家の核心利益と周辺利益を区別し、選択的戦争を否定する。だが、トランプ政権の人事構成や行動を見ると、彼らは「アメリカ・ファースト」の言辞を用いつつ、実際には従来の介入主義的アプローチを継続しているというのである。ウクライナ、イスラエル、アジア、アフリカにおける外交政策はその典型例である。
What Happened to America First? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

記事は、ガザを破壊した関係者たち(例えばバイデン、トランプ、ネタニヤフら)が将来、戦争犯罪で裁かれるのではなく、平穏な「引退」を迎える可能性を論じている。歴史は勝者によって書き換えられ、残されたものは「時代が複雑だった」という語り口に塗り替えられるという。ガザに対する封鎖や爆撃、飢餓、医療崩壊といった苦難は既に現実に起きた事実であるが、数年後には記憶の隅に追いやられ、加害者たちは正当化される可能性があるという。過去の戦争加害者たち(例・ブッシュ、オバマ)も大きな非難を浴びつつも、退任後は事実上の社会復帰を果たした事例を挙げている。結論として、正義を機能させるには、記憶の改竄を許さず、加害者を権力から切り離し、責任を問う姿勢を維持することが不可欠である、という警告を発している。
War Criminals Don't Face Trial – They Get Retirement Deals - Antiwar.com [LINK]

本稿は、ウクライナ戦争における「プーチンに圧力をかけて交渉させる」シナリオを三幕構成で描写し、その危険性を批判する。第一幕では、ロシアのドローンがポーランド上空を飛行、また戦闘機がエストニア領空に侵入したと報道され、これをもってロシアが欧州への攻撃を意図しているとの物語が語られる。ただし実際にはその主張は根拠薄弱であり、誇張された可能性が高いと主張される。第二幕では、ウクライナの反攻作戦やアメリカ・NATO支援によってロシアを追い詰められるという希望的観測が流布されるが、実情はロシアが有利な立場を拡大しており、ウクライナ側は兵力・物資の面で限界に直面している。第三幕では、ウクライナにトマホーク巡航ミサイルを供与する構想が持ち上がる。これを使えばモスクワやクレムリンを攻撃可能になり、プーチンを交渉テーブルに引きずり出せるという演出である。しかし、この武器の供給は在庫量や発射装置の不足、さらには米露衝突へのエスカレーションの危険性という現実的な制約に阻まれる。結論として、これら三幕の演出は、プーチンを追い詰めて和平を迫るための物語づくりであり、実態と乖離した誇張がエスカレーションのリスクを孕んでいるというのである。
Pressuring Putin: A Play in Three Acts - The American Conservative [LINK]

2025-10-08

共和党の裏切り

共和党(GOP)はかつて「オバマケア(Affordable Care Act)」の廃止を公約に掲げてきたが、現状では、バイデン政権が導入したオバマケア補助金拡充措置(COVID救済の一環)は、共和党の反対をほとんど受けずに延長されようとしている。記事はこの「裏切り」を「オバマケア降伏」と呼び、共和党が政策的信念を放棄した証拠だと非難する。記事によれば、共和党内部では、オバマケア批判を続けるよりも、現状の補助金制度を温存しつつ、不法移民に補助金を与えさせないよう制約を設ける交渉に注力する構図になっている。かつてティーパーティー運動を支えた「廃止と置き換え(repeal & replace)」の思想は形骸化し、むしろオバマケアの恒久化を黙認する方向へと共和党政策が収斂してきたと論じられている。記事は、こうした動きの根底には、共和党が自由市場・医療選択権の概念を放棄したことがあると指摘し、真の改革には国家介入型制度を全体的に引き下げ、患者と医療提供者に選択と競争の自由を再び与える政策が必要だと主張する。
GOP Obamacare Surrender - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

著者ジェフリー・A・タッカーは、2020年以降のパンデミック対応、金融緩和、ワクチン政策等を、単なる政策の誤算ではなく、意図的かつ計画された「クーデター」的操作と主張する。多くの通貨が25~35%の価値下落を被ったのは、富の強制的移転であり、貧中層からエリート層・政府結託産業へ資産が流れたという。政策の根底には、政治勢力、産業部門、製薬産業の三重の動機が存在しており、それらが互いに補完し合いながら「世界を破壊し再設計する」構図を形成したと論じる。パンデミック前に準備されたシミュレーション(Event 201、Crimson Contagion など)をその根拠とし、これらは偶発的な訓練などではなく、事前策動された計画だったと断じる。著者は、現代世界におけるテクノロジー支配、製薬的支配、行政国家の集中を、この「クーデター」の持続・拡大形態と見なし、人々の認識変革と思想戦が最前線であると強調している。健康、自由、認知の領域がこの陰謀の対象であり、これに抗するには、ただリーダーを変えるだけでは不十分だと結論づける。
The Coup, the Calamity, and the Conspiracy - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

記事は、シオニスト勢力がイスラエルへの世界の好感度を宣伝・操作(プロパガンダ)で取り戻そうとしている試みを批判する。インフルエンサーやソーシャルメディア、ロビー活動を駆使し、「イスラエルは素晴らしい国だ」という物語を拡散しようとしているが、著者はそれが無意味だと断じる。人々は既にイスラエルの残虐行為やパレスチナ人への虐待の映像・報道を目撃し、記憶として持っているため、巧妙な言説でそれを帳消しにできるとは信じていない。宣伝は確かに心理的操作の手段ではあるが、それだけで真実を覆い隠す力はない。信頼を伴わなければプロパガンダは通じず、人々の認知と現実経験との矛盾は埋めがたい。記事は、イスラエルがこれまでのようなプロパガンダ戦略を頼りにしても、既に人々の目が開かれており、世界の意識を再び操ることは不可能だ、という結論を示す。
They Really Think They'll Be Able To Propagandize The World Into Liking Israel Again - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

著者テッド・ギャレン・カーペンターは、米国およびNATOがウクライナを支援する形態が、かつての代理戦争(プロキシ戦争)の暗黙のルールを破壊していると指摘する。たとえば、援助が単なる防衛兵器の供与ではなく、ウクライナ軍にロシア本土への長距離攻撃能力を付与し、ロシア国内への侵攻を助長する支援をしていることを挙げる。これにより、かつての「敵国本土への攻撃は禁止」という不文律が破られてしまったという。こうした行為は、代理戦争の枠組みを超えて、米国およびNATOが直接的にロシアと交戦する立場へと傾きつつあるとの懸念を呈する。著者は、こうしたエスカレーションを抑えず続ければ、核保有国ロシアとの全面戦争、すなわち第三次世界大戦への拡大リスクをはらむと論じ、米国はこの代理戦争を直ちに撤回・縮小すべきだと主張する。
US Now Violating Long-Standing Informal Proxy War Rules - Antiwar.com [LINK]

2025-10-07

和平案の罠

著者は、西側諸国がガザの戦後体制を「移行期統治機構(Gaza International Transitional Authority)」として設置する計画を密かに進めていると指摘する。計画では、元英国首相トニー・ブレア率いる暫定機構がガザの再建、治安、行政を数年にわたり統制する案が浮上しているという。これは「植民地支配の継続」を国際管理と称して正当化するものであり、ガザを従属下に置く構図を固定化すると主張されている。記事は、コソボやレバノンの国際統治モデルを例示し、それらが自由や自治をもたらさず、むしろ占領を代替するものだったと批判する。著者は、ガザは占領地であり、外部による「移行統治」は真の独立を妨げる偽装にすぎないと結論づける。加えて、真の平和にはパレスチナ主権の承認、占領の終了、法の平等の回復が不可欠だと説く。
Tony Blair and the Gaza Trap: Continued Colonial Control Disguised as 'Transition' - Antiwar.com [LINK]

2025年9月17日、パキスタン首相シェバズ・シャリフとサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、「戦略的相互防衛協定(Strategic Mutual Defense Agreement)」を締結した。協定は、両国の一方が他国に対する攻撃を受けた場合、それを互いへの攻撃と見なす「相互防衛義務」を明記しており、単なる条約を超える同盟性を帯びている。記事は、この協定が地域および世界秩序に3つの意味を持つと論じる。まず、サウジアラビアが密かにパキスタンの核の傘(nuclear umbrella)下に入る可能性を示唆している。次に、イスラム世界全体をカバーするような汎イスラム的安全保障体制構築の動きが加速されうること。最後に、協定は多極世界秩序の流れを象徴しており、サウジアラビアはアメリカの安全保障依存から脱却しつつ多様な防衛パートナーシップを形成する戦略を採り始めているとみる。協定締結前には米国への通報もなく、サウジは独自路線を歩み始めたことを示す証左として挙げられている。
How the Pakistan-Saudi Arabia Defense Agreement Changes the Region and the World - Antiwar.com [LINK]

トランプとネタニヤフが発表した和平案は、イスラエルによるガザ支配を事実上温存する仕組みを含んでおり、パレスチナ側にとって深刻な罠だと著者は論じる。案では、最初の72時間でイスラエル人囚人全員を解放すること、イスラエルは250名のパレスチナ囚人を釈放すること、人道支援を流すことなど一部明示されている。だが、他の重要項目には時期や実施方法が欠如しており、実効性が曖昧である。和平案では、イスラエル軍は段階的撤退をするが、最大70%のガザ領域を支配下に残す枠組みとなっている。民間行政は「無党派の国際委員会(independent, apolitical commission)」が担当し、その委員会はトランプ指導下の「平和委員会(board of peace)」が監督するという設計だ。パレスチナ内部の解放運動やハマスの軍事能力は解体対象とされ、政権運営から排除される可能性がある。政権移行後の自治体運営にはパレスチナ自治政府(PA)は一定期間関与しないこととなっており、その改革が完了しない限りその復帰は認められないとされている。仮にハマスが案を拒否すれば、アメリカ・イスラエルは「ガザ掃討(finish the job)」を正当化すると明言しており、拒否はさらなる軍事行動の口実を与える構図になっている。一方、受諾した場合も、パレスチナ側が国家としての主権を回復できる保証はなく、不確実で脆弱な地位に置かれる恐れが強い。つまり、この和平案は華やかな約束で装われているが、実質的にはパレスチナの主権や自決権を抑え込み、イスラエルの支配を形式的に再構築する罠である、というのが記事の主張である。
Why the Trump-Netanyahu ‘peace plan’ is a trap – Mondoweiss [LINK]

トランプ大統領はバグラム空軍基地を奪還すると主張しているが、これは無益な再介入であり、愚策にすぎないというのが著者の主張である。米軍は2021年に撤退し、アフガニスタンはタリバン政権下に戻った。だが、アメリカ国民にとってその地は「領土」ではなく、再び軍隊を派遣して基地を取り戻すことに見合う利益はない。現地住民は戦争に疲れており、再び戦火に巻き込まれる恐れを懸念している。過去の戦争が何年も続き数十万人の犠牲を出したことを考えれば、もう戦争を繰り返すべきではない。著者は、アメリカはアフガニスタンとの敵対関係をやめ、現実主義的外交アプローチへと移行すべきだと主張する。
Don’t Restart the Afghanistan War - The American Conservative [LINK]

2025-10-06

トランプ氏の変貌

著者ウィリアム・シュライヴァーは、アメリカ帝国主義的な傾向(#EmpireAtAllCosts派)が政権舵を支配しつつある状況を懸念する。戦争か平和かという選択は既に過ぎ去り、「賽は投げられた(iacta alea est)」段階にあると嘆く。記事は、世界経済・ドル体制・架空の担保が崩壊の瀬戸際にあるとし、ロシア・中国・イランを軸とする多極構造の勢力図が急速に再編されていると論じる。アメリカ内では、対ロシア・対中国・対イランのうちどこを最初の戦場とするかで権力闘争が進行しており、とりわけイランが戦争目標として現実性を帯びてきているという。ベネズエラへの軍事介入の噂も浮上しており、地政学的代替目標として狙われている可能性を指摘する。ただし、著者は米軍がロシアや中国と真正面から対峙すれば数週間で壊滅的打撃を受けると警告し、イラン戦争シナリオが現実主義的選択となってきたと結論づけている。
iacta alea est - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

著者は、ネタニヤフ(Bibi)がトランプに対して「監督(コーチ)」のような影響力を及ぼしていると論じる。ネタニヤフは米政権内での4度のホワイトハウス訪問、頻繁な電話会談を通じ、トランプの外交・軍事政策に変化をもたらしたという。記事によれば、トランプは以前「戦争を終わらせる」ことを公約していたが、ネタニヤフの助言・圧力を受けて、ウクライナやイスラエルへの武器供与を継続・拡大し、「戦争的姿勢」を前面に打ち出すようになった。さらに、トランプは内外の「敵」を敵視し、言論・移民・州政府などを非人間化しつつあり、これはネタニヤフのスタイルを模倣したものとも見られる。著者は、トランプがネタニヤフのような強権的リーダーを理想視し、自己像を変え始めていると警告する。記事は、トランプがネタニヤフとの関係を断ち、「アメリカ・ファースト」の立場に回帰するよう求めて結ばれている。
Coach Bibi Leaves a Mark - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

著者ジョナサン・クックは、報道機関が新聞報道の基本ルールを故意に破り、イスラエルによる戦争犯罪や残虐行為を隠蔽する手法を採っていると批判する。まず、通常なら最初に出るべき「ブレイキングニュース(速報)」という段階を飛ばし、すぐに「フォローアップ」段階に移行することが多い。この手法により、事件そのものの明快な責任追及を回避し、イスラエル側の言い訳を混ぜ込む余地を与える。例えば、ガザのナセル病院への攻撃では、報道は即座に「ハマスがカメラを使っている」との主張を取り上げ、病院爆撃という重大事実そのものを見えにくくする報道姿勢をとった。著者は、メディアは事実を伝えるよりも、読者の理解や印象を操作する立場をとることが増えており、こうした報道パターンがイスラエルへの同情・批判回避のための制度的装置と化していると主張する。
How the Media Tears Up Its Own Rulebook to Hide Israel's Atrocities - Antiwar.com [LINK]

下院議員ロ・カンナ(Ro Khanna)は、パレスチナ国家承認を米大統領と国務長官に促す書簡を circulating(回覧)し、これに47人の議員が署名した。一方、ジャック・オーキンロス(Jake Auchinloss)は AIPAC(イスラエル支持ロビー団体)寄りの書簡を発起し、「イスラエルの自衛権」「ガザ市民の苦難責任否定」「米国とイスラエル価値観の整合性」などを主張したが、署名はわずか30人にとどまった。この対比は、AIPAC の伝統的影響力が議会内で揺らいでいることを象徴する。以前は「ナプキンに書けば上院議員多数の署名を得られる」と豪語されてきたが、現在ではプロ・パレスチナ派の書簡が、AIPAC 支持書簡を上回る支持を得るという異例の状況が生まれている。世論調査でも、アメリカ国民や民主党支持層の間ではパレスチナ国家承認を支持する意見が多数派となっており、イスラエルに対する批判的立場が増えている点が影響している。
AIPAC’s and Israel’s influence is falling in Congress, two opposing letters show just how much – Mondoweiss [LINK]

2025-10-04

戦場となるアメリカ

本記事は、トランプ政権が「内なる敵(the enemy from within)」と称して、自国民を敵視し、軍事力を国内統制の道具へと転用し始めたと警告する。新設された「戦争省(Department of War)」は、もはや国防ではなく攻撃のために設計されており、民主党支配の都市を「戦場(training grounds)」と見なして軍配備を正当化していると言う。記事は、この動きを、憲法に反する軍事的支配、警察国家化、一般市民を戦闘員扱いする国家転換への道と位置付ける。軍と警察の区別が曖昧化し、法律的手続きなしの拘束、武力行使、住民を敵視する政府構造が常態化しつつあるという主張である。この記事は、創立当初から軍隊の権限を制限しようとした建国者たちの懸念を引用しつつ、現在の流れがまさにその予言されていたリスクの現実化と警告している。
Battlefield America: Trump’s War on the Enemy Within—the American People - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ大統領は、オレゴン州の州兵200人を連邦化してポートランドの街頭に展開する一方で、警察機能を連邦管理化する大統領国家安全保障覚書に署名した。これは憲法上の制約を無視し、州権・地方自治を踏みにじる強硬な措置である。著者ナポリターノは、建国の父らが意図した連邦政府の限定的権限には「警察力(police power)」が含まれておらず、それは州が保持すべき領域だと指摘する。9.11以降、テロ対策名目で連邦が州警察や地方治安機関に介入を強めてきたことが、警察国家化への道を開いたという。今回の覚書は、「反資本主義」「反米」「反キリスト教」と判断される集団に対して、政府が事前に調査・介入できるようにする規定を含み、憲法の根本原則を揺るがすものと論じられている。著者は、「私たちを守るべき保護者たちこそ、最も注意深く制限されるべき存在だ」と警鐘を鳴らして結んでいる。
Who Will Protect Us From the Protectors? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

トランプ大統領と「戦争長官(Secretary of War)」のペイト・ヘグセスは、バージニア州クォンティコ海兵隊基地に米軍の高級将校800人以上を招集し、異例の会議を開催した。平時におけるこのような大規模集会は前例が少なく、軍・外交関係者に動揺を与えた。記事は、この会議の目的が「軍を MAGA(“Make America Great Again”)化」する宣言と、高齢将校への批判を行う場であったと指摘する。会場は拍手に満ちず、スピーチは準備不足と冷ややかな反応に終わった。著者らは、真の目的はこの「大見せかけ会合」に隠された秘密会談である可能性を示唆する。トマホーク・ミサイル使用の報道や、米軍機の中東への展開、対ベネズエラ軍事行動の可能性といった動きと絡め、複数地域を舞台とする軍事行動準備の命令が密かに出された可能性も論じられている。
Generals Gathered in Their Masses... - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

ロバート・F・ケネディJr. が保健福祉省(HHS)長官として、アメリカで義務化または推奨されている「小児ワクチン接種スケジュール」(学校・保育所などで子どもに義務づけられる各種ワクチン)について、その有効性を疑問視し始めているという。ケネディはビデオを通じて、麻疹、百日咳、インフルエンザ等にはワクチンの導入後、死亡率の著しい低下が見られたとされるが、その多くはワクチン導入前からすでに自然減少傾向にあったと主張。さらに、結核、壊血病、猩紅熱など、ワクチン接種が普及していなかった疾病においても同様の死亡減少が認められ、衛生状態向上、食品保存や輸送技術、生活環境改善などが主因だと論じる。この見解に基づき、ケネディは効果が疑わしいワクチンをスケジュールから除外すべきとし、効果の低いものはリスクとの比較を見直すべきだと主張する。最終的には、現在のワクチンスケジュールを大幅に縮小、あるいは撤廃すべきという方向に至る可能性も示唆する。また、ケネディはこの議論を、「ワクチン接種を強制または圧力をかける政府の権限」を見直す契機とし、民主的・医学的根拠に基づかない強制措置を批判する姿勢を示している。
HHS Secretary Kennedy Challenges the Efficacy of Childhood Vaccine Schedule Shots - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2025-10-02

イスラエル支持で亀裂

アメリカ共和党内で、イスラエルへの支持に関して世代間の大きな亀裂が生じている。世論調査によると、35歳以上の共和党員では52%がイスラエルにより共感を寄せているのに対し、18〜34歳の若年層ではわずか24%に留まっている。また、ガザにおけるイスラエル軍の行動を「正当化される」と考える割合も、高齢層の52%に対し若年層では22%と、支持の差は歴然としている。この変化の背景には、若年層が主にソーシャルメディアからニュースを得ており、従来の保守派メディアとは異なる言説に触れていることがある。これを受け、一部の共和党議員も党の強い親イスラエルの方針への批判を強める動きを見せている。
The Republican–Israel Love Affair Hits a Generational Rift - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

作家ジョエル・サラティンは、現代社会の機能不全(暗殺、薬物乱用、識字率の低さなど)を指摘し、「故郷への道」は政府の役割を「保護」から「責任」へと変えることにあると主張する。彼は「アメリカ人を再び責任ある存在にせよ(MARA)」という計画を提唱し、その柱として、幼稚園から大学までの教育に対する政府の資金提供を全て廃止することを挙げている。また、医療への政府の関与(メディケア、メディケイドなど)や、厚生省の廃止も提案。さらに、全ての薬物を合法化し、その結果は自己責任とすべきだとしている。連邦政府の90%削減、10%の固定税率導入、海外軍事基地の閉鎖、投票権を納税額が受給額を上回る人々に限定することなど、広範な改革を要求。個人が自らの決定の結果を負うことで初めて、アメリカは偉大な時代を取り戻すことができるとしている。
The Way Home - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2025年9月10日、少なくとも19機のロシアのドローンがポーランド領空を侵犯した事件について、著者はその意図が不明確であり、エスカレーションを避けるべきだと論じる。ポーランドのF-16などがスクランブル発進し、4機が撃墜されたこの事件に対し、ポーランドはNATOの第4条を発動し、「第二次世界大戦以降で最も開戦に近い状況」にあるとした。しかし、西側情報機関は、ドローンの侵入が故意か偶発的か判断できていないのが実情である。ロシアが意図的にNATOとの戦争を引き起こす動機は薄いこと、撃墜されたドローンに弾頭がなかったこと、ポーランドの家屋破壊はポーランド軍のミサイル誤作動による可能性が高いことなどから、ウクライナのGPS妨害によりドローンがコースを外れた偶発的な事故であった可能性が有力であると筆者は指摘する。記事は、この事件を戦争をエスカレートさせる口実とせず、冷戦時代の不測の事態と同様に、緊張緩和と恒久的な欧州安全保障体制の構築に繋げるべきだと主張している。
Why Were There Russian Drones Over Poland? - Antiwar.com [LINK]

ドナルド・トランプ政権が打ち出す「国家防衛戦略」は、本国の脅威に焦点を当て、中国との競争を縮小し、ヨーロッパやアフリカでのアメリカの役割を軽視する方向性であり、筆者はこれを「異例で実現の可能性は低いが、歓迎すべき提案」と評価している。筆者は、真の「国家防衛戦略」とは、海外での絶え間ない軍事干渉ではなく、本国防衛に注力することだと主張する。現在の1兆ドルに迫る「防衛」支出を80〜90%削減してもなお、強力な国家防衛は可能であり、巨額な財政赤字と債務を抱える現状で、この再編は財政的にも理にかなっていると述べている。軍幹部が新たな戦略に懸念を示していることに対し、筆者は軍は政府の「被雇用者」であり、戦略を決定するのは文民政府の役割だと指摘。この戦略が実行されれば、海外での軍事行動の機会が減り、戦争犯罪が起こる可能性も減るだろうと述べている。ただし、軍幹部や軍事契約に依存する企業からのロビー活動、および外交のもつれを利用して支出を増やしたい政治家の思惑により、提案通りの削減や海外関与の縮小が実現する可能性は低いと悲観的な見解を示している。
'National Defense Strategy': A Novel and Unlikely, but Welcome, Proposition - Antiwar.com [LINK]

2025-10-01

偽りの国家承認

中東の不安定要因の主な原因は、しばしば非難されるイランではなく、むしろイスラエル自身にあるというのが著者の主張である。国連総会ではパレスチナ国家承認を支持する動きが西側諸国にも広がっており、イスラエルはこれに強く反発し、さらなる占領・併合をちらつかせながら抵抗している。最近のイスラエルによるガザへの軍事攻撃や飢餓政策、他のアラブ諸国への攻撃は、実態として大規模な市民被害を引き起こしており、多くの国々の不信を買っている。また、イスラエルはアラブ諸国や西側との関係を拡大しつつ、パレスチナ住民を抑圧する政策を維持することで「正規化(normalization)」の意味を歪めてきた。こうした外交政策は、実質的な和平ではなく、支配と対立を温存するための装置として機能している。著者は、米国および西側諸国は、イスラエルを中東における「盟友」扱いする固定観念から脱却し、イスラエル自身の政策責任や抑制を求めるべきだと訴えている。
Israel is the main source of instability in the Middle East | Responsible Statecraft [LINK]

この記事は、イスラエルが人道支援船団(Global Sumud Flotilla)を無人機などで攻撃し、米国市民を含む乗組員を危険にさらした事実を取り上げ、それが米国による「屈辱の儀式(humiliation ritual)」を示すものだと論じている。記事によれば、アメリカ政府はこれらの攻撃に対して沈黙を保ち、イスラエルを「価値ある同盟国」と称して責任追及を避けている。イタリア・スペインなど他国は自国民保護のため軍艦を派遣したが、米国は何も行動せず、結果としてイスラエルによる米国市民への攻撃は無罰と化しているという。歴史をさかのぼれば、ガザ自由船団事件(2010年)でアメリカ人が殺害された際も、米政府はイスラエルに対して実質的な責任追及を行わなかった。この記事は、米国が長年にわたり、自国市民やパレスチナ住民に対するイスラエルの暴力を黙認し続けてきた構造的な無責任と屈従を批判し、「この異常な関係」を転換しなければならないと主張している。
America’s Ongoing Humiliation Ritual - Antiwar.com [LINK]

近年、英国・フランス・カナダ・オーストラリアなどがパレスチナ国家を「正式承認」すると表明したが、著者ジョナサン・クックはこれを「オスロ平和プロセスの欺瞞の再演」にすぎないと断じる。オスロ合意以降、西側はパレスチナ自治政府を設立しつつ、国家を構える道筋を示すふりをしながら、実際にはイスラエルに対する依存体制を固定化させてきた。今回の承認もまた、真の主権を持たぬ「国家未満の実体(entity less than a state)」をイスラエルの影響下で存続させるための儀式的行為であり、実質的な変化は伴わないと見る。英国のスターマー首相は、ハマスは国家運営に参加できないと条件を付し、パレスチナに軍隊も認めないなど、承認後の国家構造を大幅に制限しようとしている。記事は、このような「象徴的承認」はイスラエルや西側の責任回避とプロパガンダ装置にすぎず、パレスチナ人民の実質的解放や国家成立を妨げるものに過ぎないと結論している。
Recognition of Palestine Is a Repeat of the West's Oslo 'Peace' Fraud - Antiwar.com [LINK]

英国議会は、調査報道サイト Declassified に対し、議会取材用のメディアパスを交付しない決定を下した。この決定には、Declassified の「ガザ関連の立場(standpoint)」が理由として挙げられており、議会側は同誌の編集方針や報道姿勢を問題視したという。当初は「議会施設の容量制限」だと説明されたが、情報公開請求で明らかになった内部メールでは、容量や定員の制約は実際には議論されておらず、政策的判断が主な理由であることが示されている。労働党、グリーン党、独立系議員らはこの措置を「メディア抑圧」「調査報道への弾圧」と非難しており、報道の自由および議会の透明性に対する重大な侵害だと主張している。
Parliament blocks Declassified, citing our Gaza ‘standpoint’ [LINK]