政治評論家、パトリック・ブキャナン(2022.4.15)
スウェーデンのアンデション首相とフィンランドのマリン首相はNATOへの加盟を申請する可能性が高いことを示唆した。ワシントン・ポスト紙は「歓迎すべきこと」だという。喜ぶ前に、この北欧2カ国のNATO加盟が米国にとって何を意味するのかを点検しておく必要があるかもしれない。
フィンランドはドイツと同じ大きさの国だが、人口はロシアの4%しかなく、ロシアとの国境は1335キロメートルもある。フィンランドがNATOに加盟すれば、これに怒ったロシアがフィンランドの国土を奪った場合、米国はNATO条約第5条に基づき、核保有大国であるロシアと戦争を行い、取り戻す義務が生じる。
ウクライナでの戦争とそれに伴う東欧の危機を考えれば、スウェーデンとフィンランドの政府が米国の「核の傘」の下でより大きな安全を求めるのは理解できる。だからといって、なぜ米国はロシアと戦争をすることまで約束するのか。その戦争は戦術核兵器の使用までエスカレートする可能性があるのに。
歴史はここで私たちに教訓を与えてくれる。1939年3月、英国はポーランドに無条件の戦争保証を行った。同年9月1日、ドイツがポーランドに侵攻した際、英国は英本国や大英帝国の重要な利益とは関係のない問題で、ドイツに宣戦布告する義務を負うことになった。
2008年8月のロシア・グルジア戦争、2014年の米国が支援したウクライナのクーデター、プーチンのクリミア併合、ウクライナ東部のルハンスクやドネツクの領有問題などはすべて、2008年のブカレスト宣言でNATOがグルジアとウクライナに加盟の道を開いたことがきっかけで進行した。
ドイツの宰相ビスマルクは、世界大戦が起こるとすれば「バルカン半島で起こるばかげたこと」がきっかけになると予言した。実際、第一次大戦は1914年6月にサラエボで起きたオーストリア大公の暗殺事件をきっかけに勃発した。オーストリアに戦争の「白紙委任状」を渡していたドイツは参戦した。
米国が二度の世界大戦に途中まで巻き込まれずに済んだのは、もつれた同盟関係から自由だったからだ。しかし今では30カ国からなる同盟(NATO)を率い、さらに2カ国(スウェーデン、フィンランド)が増える見込みで、そのうち1つはロシアと長い国境を接しているのだ。米国の幸運はいつまで続くだろうか。
(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Should We Commit to Fight Russia – for Finland?
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