2022-04-19

物価高の責任はプーチンや「強欲な」企業ではなく、FRBにある

元米下院議員、ロン・ポール(2022.4.18)

バイデン米政権とその同盟国は、ロシアのプーチン大統領を経済的失敗の都合のよい言い訳として使い続けている。最近のデマは、ロシアのウクライナ侵攻が3月の米消費者物価指数の前年比8.5%上昇を引き起こしたというものだ。

ロシア軍がウクライナに進駐するずっと前から、物価は急騰していた。さらに、プーチンが食料とガスの輸出を止めたのではなく、バイデン政権と議会が制裁を課し、米国の消費者をさらなる物価上昇で苦しめたのである。経済効果の責任は、ロシアではなく、米政府にある。

米国は長年にわたり、米国とNATOの軍事力をロシアに近づけるという明確な目標を持って、ウクライナの問題に干渉してきた。最も悪名高い例は、2014年に米国が組織したクーデターで、ウクライナの民主的に選出された政府を転覆させた。

冷戦終結をめぐる交渉で、米国はNATOをドイツの国境を越えて拡大することを支持しないと約束したにもかかわらず、ウクライナを含むNATOの拡大を支持した。ロシアの不満はもっともだ。冷戦時代の「封じ込め」戦略の立役者であるジョージ・ケナンら外交専門家は、NATOがロシアに接近すればロシアはこれに対抗すると警告していた。

ウクライナ紛争の前、バイデン氏とその仲間の民主党議員は、物価上昇を「強欲な」企業のせいだとし、反トラスト法の訴追を強化すれば何とか物価を下げられるとまで主張していた。そして、プーチンが新たな言い訳になった。

物価上昇の主犯は、プーチンでも「強欲」な企業でもない。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長らが悪いのだ。FRBは2019年9月、前代未聞のマネー創出の乱発に踏み切り、新型コロナ後はさらなる金融緩和と低金利、ゼロ金利政策に踏み切った。物価の上昇はFRBの政策の直接的な結果である。

FRBは金利を引き上げ、バランスシートを縮小することで、物価を調整しようと計画している。このため、景気は後退に転じる可能性が高い。金利を上げると連邦政府の債務支払いも増える。これが、FRBが自由市場の金利に近いところまで金利を上げない理由である。

最良のシナリオは、70年代型のスタグフレーションに戻ることだろう。最悪のシナリオは、FRBがインフレ抑制に失敗し、議会が財政支出を止められず、ドルの基軸通貨の地位が否定され、大規模な金融危機につながるというものだ。貧困の拡大だけでなく、自由への弾圧や全体主義をもたらすかもしれない。

危機はまだ回避できるかもしれないが、それは米議会が軍産複合体向け予算をはじめとする支出削減に真剣に取り組む場合のみだ。議会はまた、FRBを監査し、代替通貨を合法化し、貴金属と暗号通貨をすべてのキャピタルゲイン税から免除することで、金融政策の改革に着手すべきである。

福祉国家・戦争国家・不換紙幣が一体となった体制は終わるだろう。いつ終わるのか、さらに権威主義的な政府に取って代わられるのか、それとも限定的な立憲政治に戻るのかは、わからない。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Blame Powell, Not Putin or ‘Greedy’ Corporations, for Price Hikes

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