経済学者・哲学者、ハンス・ホッペ(2022年4月16日)
国家は領土を拡大しようとする傾向がある。その一つの方法が戦争だ。私人や私的組織が侵略のコストを自ら負担しなければならないのに対して、国家は戦争のコストを民衆に転嫁することができる。そのため、国家は民間の組織よりも本質的に戦争好きなのだ。
大国といえども、戦争は自国民の支持を得て行わなければならない。自国民に対し、攻撃の理由を明確に説明しなければならないのだ。プーチンにとって最大の問題は、目先の軍事的な出来事ではなく、ロシアが少子化の国であることだろう。戦争で母親たちが子を失うにつれ、政権への支持率は下がっていく。
小国は厳格な中立政策をとらなければならない。もちろん武装は必要だ。とはいえ、外国勢力との戦争に勝つ見込みがないことがわかれば、降伏を考えざるをえない。なぜなら、腐敗した一団(自国政府)が別の腐敗した一団(他国政府)と交代するにすぎないからだ。
たとえば、ウクライナ戦争。ウクライナが西側の模範的な民主国家であったかといえば、そうではない。汚職の指標ではロシアより悪かった。ウクライナの一人当たりの経済生産性は、ロシアより低い。ウクライナの指導者は腐敗している。
大国の攻撃に備える一つの方法は、自分自身が大きな国家になることだろう。しかし大きな国家は自国民をひどく搾取するという問題がある。もう一つの方法は、小国が同盟を結ぶことだ。ただしNATOはバルト三国など小国が大胆に振る舞い、西側諸国全体を戦争に巻き込む恐れがある。拒否権が必要だろう。
(健全な国民国家とされる)米国ではとてつもなく残酷な戦争(南北戦争)があった。北軍は南部の民間人をわざと標的にしたから、今プーチンがウクライナでやっているより、もっとひどい戦争だった。今日に至るまで、南部の大部分の人は、これは北部による侵略戦争だったと考えている。
欧州共同体の基本的な考え方は、国と国との競争を減らすことだ。今の結束は、経済力のある国の強盗の親分(政府)が、経済力の弱い国の強盗の親分を買収することで保たれている。欧州全体の経済力が低下すれば、こうした支援はもはや不可能になる。そうなれば、EUはばらばらになるだろう。
(次より抄訳)
Hoppe: “My Dream Is of a Europe Which Consists of 1,000 Liechtensteins.” | Mises Wire
https://mises.org/wire/hoppe-my-dream-europe-which-consists-1000-liechtensteins
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