今回のロシアの侵略が何か特殊なものだという見方は、歴史を完全に書き換え、2003年の米国のイラク侵略を無視している。当時は米国が国連安保理の常任理事国でも問題なかったのに、なぜ今ロシアは許されなくなるのか。米国は好きな国を侵略し、それでも逃げ切れるだけの力を持っているからだ。
米国は厚かましくも、「ルールに基づく国際秩序」を守る白馬の騎士を自任し続けている。しかし米国が先制攻撃や選択的戦争で国々を侵略する以上、その「ルール」が何の意味もなさないことは明白だ。米自身が反故にすることを望む「ルールに基づく国際秩序」で、指導的立場になれるかは疑わしい。
米国の偽善的態度は世界貿易、国際法、新たな冷戦の可能性にまで影響が及ぶ。多国間主義という概念は、米国の体制転覆計画の妨げとなる場合、何の意味も持たない。米国はウクライナ問題で多国間の道徳的な十字軍を要求しているが、他の国からほとんど協力を得られないのは、偶然ではあるまい。
北大西洋条約機構(NATO)以外の国で、ロシアの石油や小麦、その他あらゆるものから自国民を切り離し、貧困化させるという米国の要求に応じようとするものはほとんどない。アジアからアフリカ、中南米に至るまで、世界の多くは米国の政治家を喜ばせるために国民を飢えさせることを望まないだろう。
今こそ国連廃止の好機かもしれない。米国は30年間、国連を軍事介入にお墨付きを与え、同盟国への口実にし、敵の烙印を押す米主導の機関にしてきた。ルールに基づく国際秩序の体裁を整えたが、都合で無視もした。イラク侵攻前には安保理で反対国を非難し、ウクライナなど東欧の友好国を抱き込んだ。
世界は少なくとも反ロシア圏と中立圏の二つのブロックからなるポスト・グローバリゼーションの世界に突入しつつある。バイデン米大統領は「新しい世界秩序」で、米国が「自由世界」をリードすると主張している。
それには少なくとも部分的には道徳的リーダーシップに基づく、ソフトパワーの拡大が必要だ。だがここ数十年、米国がルールに基づく秩序をあからさまに無視してきたせいで、その可能性はますます低くなっているように思われる。
(次より抄訳)
The "Rules-Based International Order" Is Dead. Washington Killed It. | Mises Wire [LINK]
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