リンカーンが南部に侵攻したのは、奴隷制を廃止するためではなかった。本人が繰り返したとおり、暴力で合衆国の結束を維持するためだ。その目的のため多数が死傷した。彼は最初の大統領就任演説で、奴隷制が存在する州に干渉しないよう憲法の修正を支持するとさえ述べていた。
中世社会では、都市などが王の要求、とくに戦争中の支援の要求に抵抗し、自由を確保するのは当然で、美徳でさえあった。しかし近代国家は、市民がそう考えないよう仕向けた。中央政府の侵害に抵抗すれば、それは反逆罪だ。かつて美徳だった行為は、今や最も重い犯罪になった。
かつて合衆国は非中央集権で、州は中央政府に度々抵抗し、自由を守った。それが南北戦争によって中央集権の近代国家となり、あらゆる抵抗は反逆という悪になった。南部の独立を阻止する戦争は、独立という考えそのものに反対し、統一された中央政府を支持する戦争になった。
米南部が独立していれば、独立権で中央政府を牽制する連邦制のモデルとして、近代国家の代替案となっただろう。しかし独伊などの統一運動は昔も今も、申し分ない進歩として描かれる。もし欧州が非中央集権にとどまっていたら、世界は多くの悲しみを味わわずに済んだだろうに。
0 件のコメント:
コメントを投稿