武器によらない平和
戦乱の世を描いたマンガは面白いけれども、ときどき嫌になる。下っ端の敵兵たちがまるでバイ菌のように盛大に殺されるからだ。固いことは言いたくないが、敵兵だって家族はいるだろうし、好きで戦場にやって来たとも限らないだろう。でも、そんなことを気にしていたら話が進まない。
ところが、気にする人物がいた。三国志で有名な天才軍師、諸葛孔明だ。陣中で没する間際、「数々の仲間を失い、幾多の敵を倒してきた…」と回想し、「次の人生は命のやり取りなどない…平和な世界に生まれ変わりたいものだ」と願う。そしてなんと、現代の日本に転生する。『パリピ孔明』の始まりだ。
生まれ変わった孔明のミッションは、すばらしい歌声で感動を与えてくれた歌手の卵、英子の軍師として、クラブ音楽による天下泰平をなしとげること。さまざまな秘策で英子を一歩一歩スターに近づけていくストーリーは、ギャグの楽しさと合わさって、読みだしたら止まらない。
なにより、前世では人を殺(あや)めることに向けられていた孔明の知力が、誰も傷つけずに使われるのがいい。企画の勝敗をめぐって一時対立したグループのメンバーやファンが和解し、ライブハウスで笑顔で楽しむ姿を見て、孔明は思う。「音楽…人…敵も味方もない」
そう、平和は武器ではなく、文化や商業を通じた人の交流がもたらすのだ。
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