この記事は、市場経済の主要な擁護者であったマレー・ロスバード(Murray Rothbard)の著作、特に1973年の論文「A Future of Peace and Capitalism」への論評を通じて、自由市場としての資本主義が最終的に勝利する運命にあるという彼の楽観的な見解を解説しています。
1. 資本主義の敵と定義の混乱
政治・思想界における資本主義の敵:
左派: 社会正義、平等、環境保護などの要求に合わせるために市場プロセスを規制すべきだと主張。
ネオコン(新保守主義): 信用拡大と米国の世界的軍事力による「世界秩序」維持のためにグローバル資本主義を主張。
古保守主義(パレオコン): 地域社会の崩壊、国際主義、道徳的悪影響を理由に市場を非難。
定義の混乱: 「資本主義」という言葉は、しばしば貪欲、汚染、腐敗した実業家など、人々が嫌悪するものの総体として使われている。ロスバードは、この用語が自由市場資本主義(平和的・自発的な交換)と国家資本主義(暴力的収奪)という2つの全く異なる概念を混同していると指摘した。
2. ロスバードによる資本主義の明確化
資本主義とは何か: ロスバードは、資本主義を社会における自発的な活動、特に交換によって特徴づけられる活動の総和として明確に定義する。それは財産権の自由な交換と、政府による妨害の不在という枠組みの中で生まれるシステムに他ならない。
市場交換の本質: 新聞の購入からCEOの雇用まで、すべての交換は相互の利益を目的とした平和的な行為であり、グローバル市場はこの相互利益の考え方の延長線上にある。
政府介入の分類: 政府の活動(規制、課税、保護主義など)は、次の2つのタイプに分類される:
2者間の交換を禁止または部分的に禁止すること。
市場では起こりえない「交換」を誰かに強制すること。
ロスバードにとって、課税は強盗であり、国家そのものは大規模な強盗に他ならない。市場の本質が常に自発性であるのに対し、国家の本質は常に強制である。
3. 資本主義の不可避性
「左」と「右」を超えて: ロスバードは、自由市場支持を「右」とも「左」とも特徴づけるのは正確ではないと考えた。1973年当時、保守派は軍国主義や独占的特権といった前資本主義的な制度形態に固執し、国家と企業の連携という形で古典的自由主義革命を逆行させようとしていた。これは、社会主義者と共通する、管理と重商主義の手段を用いるものであった。
社会主義の失敗と市場の生産性: ロスバードは、社会主義が試みられ失敗に終わった東ヨーロッパ諸国が市場モデルに移行せざるを得なくなっていることに注目し(1973年当時)、「自由市場資本主義がそこで勝利することはほぼ避けられない」と予言した。
最終的な勝利の根拠:
産業時代において、社会主義は工業システムを運営できず、長期的に見ればネオ重商主義(介入主義)も同様に運営できないことが明らかになった。
自由市場資本主義は、唯一道徳的で、最も生産的なシステムであるだけでなく、工業化時代における人類にとって唯一存続可能なシステムになった。
彼の楽観主義の根拠は、市場は機能するが、政府は機能しないという確信にある。何百万、何十億もの相互に利益のある交換がもたらす執拗な圧力が、中央計画立案者の意図を打ち破り、最終的に勝利を収めるだろう。
ロスバードの歴史観は、過去に部分的に果たされた「自由、繁栄、平和」の約束が、未来の資本主義の形として必ず成就するという信念に基づいています。
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