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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2025-11-05

物価高の本当の原因

論旨は「物価上昇の主因は企業利潤ではなくマネー供給の拡大である」という点にある。価格は供給者が提示するが、受け入れるか最終決定するのは消費者であり、利潤追求だけで一般物価は上がらない。費用も最終価格を決める要因ではなく、価値判断は需要者側にある。中央銀行の拡張的金融政策で通貨量が増え、財・サービス量に対してカネが相対的に過剰になると、広範な価格上昇が生じる。コスト上昇や「貪欲」よりも、この貨幣膨張が一般インフレの源泉だとする。ゆえに価格統制は供給を痩せさせ不足を招くため逆効果であり、生活水準を下げる恐れがある、という結論である。
Increases in the Money Supply, Not Corporate Profits, Drive Price Increases | Mises Institute [LINK]

本稿は、低金利と信用膨張が横行する「金融化経済」において、不正と杜撰な与信がいかに温存されるかを、トライカラー(Tricolor)とファースト・ブランズ(First Brands)という2つの破綻事例を通じて示したものである。トライカラーは米テキサス州の自動車販売・金融会社で、主に不法移民を含む信用情報のないサブプライム層に年利16%超で融資を行っていた。しかし資金の大半は自社資本ではなく、JPモルガンなど大手銀行からの「倉庫融資」に依存し、貸し出した自動車ローンを証券化して投資家に売却するモデルだった。現在の捜査では、同一ローンを複数の融資の担保に使う「二重譲渡」疑惑が浮上し、破産に至った。一方、ファースト・ブランズは自動車部品会社だが、買収を繰り返すために過剰債務化し、さらに売掛債権を担保にオフバランスで20億ドル以上を借り入れていた事実が再編過程で露呈し破綻した。本来なら審査で弾かれるはずのずさんな企業が資金調達できた背景には、中央銀行による信用膨張で市場に行き場のない資金が溢れ、投資家・銀行が利回り追求のためにリスク判断を放棄した構造がある。実体経済が停滞するなか、資金は生産的投資ではなく金融工学と粉飾に吸い寄せられ、バブル末期には不正が噴出する——著者はこれを「イージーマネーが生む必然的な腐敗」と総括している。
Easy Money Breeds Fraud: The Cases of Tricolor and First Brands | Mises Institute [LINK]

チューリップ狂騒(1630年代)は、しばしば「史上初のバブル」として語られるが、その実像は単純な投機狂乱ではない。ミーゼス派内部でも、ダグラス・フレンチと筆者の見解は一見相反するが、実際には相補的である。フレンチは、当時のオランダ経済が豊富な信用と流動性に覆われていた事実を指摘し、これをオーストリア学派の信用循環論に位置づける。アムステルダム銀行や手形流通、劣悪貨幣などによるマネー供給拡大が、美術品や不動産と同様に珍種チューリップ球根の長期的価格上昇を支え、1635〜36年の短期的高騰と暴落を生んだとする。一方、筆者は価格急騰の直接要因を、市場制度の特異性に求める。球根は土中にあるため現物受け渡しが不可能で、多くの取引は違法かつ非拘束的な先物契約だった。契約はごく少額の証拠金で成立し、決済放棄も容易だったため、居酒屋で行われた「共通球根」の取引は数週間で暴騰・崩壊した。しかしこれは制度的欠陥が生んだ局地的現象であり、経済全体への影響は軽微だった。希少球根は前後の時期も安定して高値を維持している。両者を統合すれば、背景に「緩いマネー」、表層に「契約制度の歪み」があり、長期的希少品の上昇と短期的バブルは異なる力学で説明できる。教訓は、すべての価格高騰を同質のバブルとして扱うべきではなく、需要の実質性・制度設計・信用膨張を層別に見る必要がある、という点にある。
Tulipmania Reconsidered, Reconciling Austrian Perspectives | Mises Institute [LINK]

現在のアメリカ経済では、インフレが中産階級の生活を長期的に蝕んでいる。過去5年間で消費者物価指数(CPI)は約20%上昇とされるが、実際の体感物価はそれを大きく上回り、食品・住宅・衣料・交通など生活必需品は30%以上値上がりしている例も多い。ミーゼス派経済学者フランク・ショスタックが指摘するように、物価上昇は「企業の強欲」ではなく、政府による通貨供給拡大=インフレに起因する。最大の転機はコロナ期であり、政府は約6兆ドルを新規マネーとして投入した。その結果、米国のマネー供給(M2)は2020年の15兆ドルから22兆ドル超へ急膨張し、国民一人当たりの流通貨幣は5万ドルから7万5000ドルへと50%増加した。これは必然的に物価上昇を引き起こす。2022年以降、FRBは利上げと量的引き締め(QT)でインフレ抑制を試みたが、QTで減らした1兆ドルを上回る規模の財政赤字マネーが新たに供給され、M2は2025年に再び過去最高を更新した。すなわち、金利引き上げやQTよりも政府支出による通貨発行の方が強力に作用している。政府とエリート層はインフレを容認する。借金は「価値の減ったドル」で返済でき、資産を持つ富裕層は打撃が小さい。一方で賃金上昇が物価に追いつかない中産階級こそ最大の被害者であり、生活維持が困難となり階層縮小が進む。本気でインフレを抑えるには、さらなるQTとマネー供給縮小が不可欠であり、それは景気後退を伴う可能性が高い。しかし、それを避ければ、インフレは長期化し、中産階級はゆっくりと消滅していく――筆者はこう警告している。
Inflation: Slowly the Middle-Class Dies | Mises Institute [LINK]

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