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インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2025-11-29

資本主義は勝利する

この記事は、市場経済の主要な擁護者であったマレー・ロスバード(Murray Rothbard)の著作、特に1973年の論文「A Future of Peace and Capitalism」への論評を通じて、自由市場としての資本主義が最終的に勝利する運命にあるという彼の楽観的な見解を解説しています。

1. 資本主義の敵と定義の混乱

  • 政治・思想界における資本主義の敵:

    • 左派: 社会正義、平等、環境保護などの要求に合わせるために市場プロセスを規制すべきだと主張。

    • ネオコン(新保守主義): 信用拡大と米国の世界的軍事力による「世界秩序」維持のためにグローバル資本主義を主張。

    • 古保守主義(パレオコン): 地域社会の崩壊、国際主義、道徳的悪影響を理由に市場を非難。

  • 定義の混乱: 「資本主義」という言葉は、しばしば貪欲、汚染、腐敗した実業家など、人々が嫌悪するものの総体として使われている。ロスバードは、この用語が自由市場資本主義(平和的・自発的な交換)国家資本主義(暴力的収奪)という2つの全く異なる概念を混同していると指摘した。

2. ロスバードによる資本主義の明確化

  • 資本主義とは何か: ロスバードは、資本主義を社会における自発的な活動、特に交換によって特徴づけられる活動の総和として明確に定義する。それは財産権の自由な交換と、政府による妨害の不在という枠組みの中で生まれるシステムに他ならない。

  • 市場交換の本質: 新聞の購入からCEOの雇用まで、すべての交換は相互の利益を目的とした平和的な行為であり、グローバル市場はこの相互利益の考え方の延長線上にある。

  • 政府介入の分類: 政府の活動(規制、課税、保護主義など)は、次の2つのタイプに分類される:

    1. 2者間の交換を禁止または部分的に禁止すること。

    2. 市場では起こりえない「交換」を誰かに強制すること。

    • ロスバードにとって、課税は強盗であり、国家そのものは大規模な強盗に他ならない。市場の本質が常に自発性であるのに対し、国家の本質は常に強制である。

3. 資本主義の不可避性

  • 「左」と「右」を超えて: ロスバードは、自由市場支持を「右」とも「左」とも特徴づけるのは正確ではないと考えた。1973年当時、保守派は軍国主義や独占的特権といった前資本主義的な制度形態に固執し、国家と企業の連携という形で古典的自由主義革命を逆行させようとしていた。これは、社会主義者と共通する、管理と重商主義の手段を用いるものであった。

  • 社会主義の失敗と市場の生産性: ロスバードは、社会主義が試みられ失敗に終わった東ヨーロッパ諸国が市場モデルに移行せざるを得なくなっていることに注目し(1973年当時)、「自由市場資本主義がそこで勝利することはほぼ避けられない」と予言した。

  • 最終的な勝利の根拠:

    • 産業時代において、社会主義は工業システムを運営できず、長期的に見ればネオ重商主義(介入主義)も同様に運営できないことが明らかになった。

    • 自由市場資本主義は、唯一道徳的で、最も生産的なシステムであるだけでなく、工業化時代における人類にとって唯一存続可能なシステムになった。

    • 彼の楽観主義の根拠は、市場は機能するが、政府は機能しないという確信にある。何百万、何十億もの相互に利益のある交換がもたらす執拗な圧力が、中央計画立案者の意図を打ち破り、最終的に勝利を収めるだろう。

ロスバードの歴史観は、過去に部分的に果たされた「自由、繁栄、平和」の約束が、未来の資本主義の形として必ず成就するという信念に基づいています。


(Geminiを利用)
Why Capitalism is Inevitable | Mises Institute [LINK]

2025-11-28

リバタリアンの戦争論

マレー・ロスバードによるこの記事は、リバタリアン運動が「戦略的知性」を用い、現代の最も重要な問題である戦争と平和にリバタリアン理論を適用する必要があると主張しています。

その根底にあるのは、非暴力の原則財産権の絶対性です。


🛡️ リバタリアン理論の基本原則:非暴力の絶対性

  • 基本公理: 誰も他者の身体や財産に対して暴力をふるう(攻撃する)ことを脅したり、実行したりしてはならない。暴力は、そのような暴力を犯した者に対してのみ、すなわち防衛的にのみ行使できる。

  • 無辜の第三者への暴力の禁止: 犯罪者(攻撃者)に対する正当な防衛であっても、罪のない第三者の身体や財産を侵害することは断じて許されない。たとえば、盗人を捕まえるために爆弾を投下して無辜の人々を殺傷する行為は、窃盗犯以上の犯罪的侵略行為である。

  • 「私に自由を、さもなくば彼らに死を」: 正当な防衛の最中に無辜の人を殺害し、それを「私に自由を、さもなくば死を」というスローガンで正当化しようとするのは論理的に誤りであり、実際のスローガンは「私に自由を、さもなくば彼らに死を」という、擁護の余地のないものとなる。

  • 戦争の正当性: 暴力の行使が個々の犯罪者に厳密に限定される場合のみ、戦争(広義の紛争)は正当である。


💣 現代兵器と大量殺戮の犯罪性

  • 核兵器の特性: 現代の核兵器や「通常型」の空中爆弾は、無差別大量破壊兵器であり、犯罪者のみを対象とすることができない。これは、弓やライフルといった旧式の兵器との決定的な種類の違いである。

  • 最大の罪: したがって、核兵器や類似の兵器の使用、またはその脅威は、正当化できない人類に対する罪と犯罪である。

  • 軍縮の最優先: 大量殺戮の阻止は、他のいかなる政治的目標よりも重要であり、核軍縮はリバタリアンの最優先課題でなければならない。


⚔️ 国家(State)と戦争の犯罪性

  • 国家の本質: 国家は、特定の地域内で暴力行使の独占を確立した集団であり、特に侵略的暴力(徴税)の独占を通じて財源を得る唯一の組織である。

  • 国家間の戦争(水平的暴力)の性質:

    1. 無差別破壊の必然性: 国家間の戦争は異なる地域間で起こるため、現代兵器の使用が容易になり、無辜の民間人に対する侵略がほぼ不可避となる。

    2. 強制的な資金調達: 私的な紛争や革命は自発的な資金提供で戦えるのに対し、国家間の戦争は常に自国民に対する増税という侵略(課税攻撃)によってのみ遂行される

  • 結論:国家の戦争は常に非難されるべき: 革命や私的な紛争の一部は正当化され得るが、国家間の戦争は常に非難されるべきである。

  • リバタリアンの目的: 既存の国家が個人と財産への侵略を最小限に抑えるよう、国際問題においては戦争を完全に回避し、外交に専念するよう圧力をかけるべきである。

  • 帝国主義: 他国の国民に対する国家Aの侵略(帝国主義)は、本国の納税者を搾取し、被支配国の国民に対する抑圧を悪化させるため、リバタリアンはこれを非難しなければならない。

🚨 戦争と国内の専制

  • 「戦争は国家の健康」: 戦争は、国家がその権力、規模、そして国民に対する絶対的な支配を拡大する最高の機会である。

  • 徴兵制の専制: 徴兵制は、戦争が国家の専制を増長させる最も露骨な方法である。自由を防衛するために、その本質が自由の抹殺と個人の人権の蹂躙にある軍隊に強制的に参加させられるという論理の不条理性が指摘されています。

  • 国家の真の関心: 国家が最も厳しく罰するのは、殺人や窃盗といった市民に対する犯罪ではなく、反逆罪や徴兵忌避など、国家自身の権力に対する脅威である。これは、国家が私人の権利を守るよりも、自身の権力維持に強い関心を持っていることを示している。


    (Geminiを利用)
    War, Peace, and the State | Mises Institute [LINK]

2025-11-27

ロスバードと結社の自由

ルー・ロックウェルにによるこの記事は、リバタリアン経済学者マレー・ロスバードの思想に基づき、「結社の自由(Freedom of Association)」と「差別の禁止」や「優遇措置」といった政府による介入について論じています。

ロスバードの単純な解決策は、自由な社会におけるすべての取引は自発的であるべきというものです。


🏛️ ロスバードの結社の自由の原則

  • 中核となる信条: ロスバードにとって、リバタリアニズムの基本は、すべての人自分の所有物(財産)に誰を入れるか、誰を使うかを選ぶ権利を持つことです。

  • 「差別」の定義: 彼にとって「差別(Discrimination)」とは、個人の基準に基づいて有利または不利に選択する行為であり、それは選択の自由、ひいては自由な社会の不可欠な要素です。

  • 政府の介入の拒否: ロスバードは、人種、性別、宗教に基づいて差別を禁止したり(反差別法)、あるいは特定の集団を優遇したりする(アファーマティブ・アクション/優遇措置)といった、すべての政府による強制的な介入を拒否しました。

💰 経済的コストによる差別への抑止力

  • 市場原理の作用: ロスバードは、ほとんどの人が差別をしないのは、そうすることで経済的コストが発生するためだと考えました。自由市場においては、個人は自分の選択のすべてのコストを自分で負う必要があります。

  • 例:家主の差別: たとえば、家主が「背の高いスウェーデン系アメリカ人」にしかアパートを貸さないと決めれば、その結果として多くのテナントを断ることになり、大きな金銭的損失を被ります。

  • 利益動機: 利益動機は非常に強く、ほとんどの事業主は個人的な意見のために取引を諦めることを望まないため、差別は経済的に不利に働きます。

  • 財産権の優先: たとえ差別的な選択が特定の集団に大きな不利益をもたらすとしても、他者の財産権を侵害する権利は誰にもないとロスバードは主張します。

📜 ジム・クロウ法以前の南部における自由市場の機能

  • 政府介入以前の統合: 記事は、ジム・クロウ法が施行される1890年〜1910年以前のアメリカ南部では、承認された歴史物語とは異なり、数万もの企業(黒人・白人経営問わず)が人種を問わずサービスを提供していたという事実を指摘しています。

  • 市場が勝者を選択: ニューオーリンズの路面電車、チャールストンの劇場など、多くの都市で人種統合された施設が多数派であり、非分離の施設が経済的に優勢でした。

  • ジム・クロウ法は「カルテル強制メカニズム」: この状況が変わったのは、州政府が隔離を義務付ける法律(ジム・クロウ法)を制定した後だけでした。これらの隔離法は、結社の自由と契約の自由への明白な侵害であり、市場の競争に勝てなかった事業主たちが、州に保護されたカルテルを形成するための手段であったと分析されています。

    • 経済的動機: 白人のレストラン経営者が隔離を求めたのは、人種的な嫌悪感からではなく、人種を問わずサービスを提供する競争相手に顧客を奪われていたためです。

    • 統合のコスト増: ジム・クロウ法は、人種統合されたビジネスのコストを体系的に引き上げ、州に保護されたカルテルだけが生き残るように仕向けました。

🤝 結論

ロスバードの教えに従い、著者は優遇措置隔離も、どちらも強制するすべての法律に反対し、真の結社の自由を守るべきだと主張して結論づけています。


(Geminiを利用)
Murray Rothbard on Freedom of Association - LewRockwell [LINK]

2025-11-26

リバタリアンの外交思想

この文章は、故ジャスティン・ライモンド氏の外交政策に関する考え方、特に彼が提唱した「リバタリアン・リアリズム」の理論を概説しています。ライモンド氏は、パット・ブキャナン氏が「我々の国を忌まわしい戦争から遠ざけるという大義に不可欠」と評した人物で、Antiwar.com の共同創設者であり、非介入主義的な右派(オールド・ライト)の擁護者でした。

1. リバタリアン・リアリズムの核心

ライモンド氏の理論は、「国際関係におけるロマンスの排除」を特徴とし、従来の外交政策理論(伝統的リアリズム、リベラリズム、マルクス主義)とは一線を画します。

  • 伝統的リアリズムの否定: 国家が「国益」という凝集した単一の利益を持つという考え方を否定します。国家は、他の勢力とのバランスを取るために動く「客観的な外力」によって強制されるわけではないと主張します。

  • 方法論的個人主義: 外交政策の行動を理解するために、オーストリア学派や公共選択論の経済学者と同じく、方法論的個人主義を採用します。つまり、国家の行動は、その国家を構成する個人(政治家、官僚、ロビー団体)の利益によって突き動かされていると見なします。

2. 外交政策を推進する要因

ライモンド氏によれば、外交政策を動かす主たる要因は、政治家や官僚が権力を維持したいという個人的な欲望です。

  • 権力維持の動機: すべての政治家は、再選や権力の維持を望んでいます。

  • 無関心な一般大衆の隙: 外交政策は一般大衆にとって理解されにくく、優先順位が低いため、組織化された利益団体(エスニック・ロビー、軍事請負業者、内部官僚組織)の影響を受けやすい領域です。

  • 特定の利益団体: これらの利益団体は、金銭的、あるいはイデオロギー的(例:ネオコンのソ連に対する「聖戦」の願望)な動機に基づき、自己の利益となるように外交政策を誘導します。

3. 「誰の利益か?」という問い

リバタリアン・リアリストは、政策立案者が「アメリカ国民の利益のため」だと主張するとき、必ず「誰の利益か?」と問う必要があります。

  • 具体的な事例:

    • ナンシー・ペロシ氏の台湾訪問(2022年): 選挙区の台湾系住民へのアピールという動機。

    • 対キューバ政策: フロリダ州のキューバ系亡命者コミュニティの動機。

    • 対ベネズエラ政策: マルコ・ルビオ上院議員(当時の国務長官)やキューバ亡命者の動機。

4. リバタリアン・リアリストの役割

ライモンド氏が提示するリバタリアン・リアリストの役割は、「外交政策の誰が誰であるか(who’s who)」を特定することです。

  • 具体的な証拠の要求: 曖昧な陰謀論ではなく、「特定の個人、特定の政策結果、および得られた利益の間の因果関係を確立する、具体的な、すなわち証拠を引用することが必要」です。

  • 歴史的教訓: 1920年代から30年代にかけて、第一次世界大戦で利益を得たのがデュポン社、JPモルガン社などの武器製造業者や金融業者、そしてイギリス政府であったように、戦争や介入から誰が利益を得るのかを厳密に調査することが不可欠です。

結論

ライモンド氏の理論は、アメリカだけでなく世界中の国際関係を理解するのに役立つ因果的・現実主義的な分析を提供します。それは、すべての国家が、何よりも権力を望む政治家によって操縦されているという視点であり、提示された外交政策が本当に平均的なアメリカ国民の利益になるのかを批判的に分析するためのツールを提供します。


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Foreign Policy, Justin Raimondo Style | Mises Institute [LINK]

2025-11-25

帝国主義の逆説

ハンス・ヘルマン・ホッペによるこの記事は、国家の本質的な性質と、その対外的な行動、特に戦争と帝国主義の関係について、オーストリア学派の視点から分析したものです。

1. 「国家」の本質:独占的権力と税金

筆者は、国家を以下の2つの特徴を持つ機関として定義します。

  1. 究極的な意思決定(管轄権)の強制的領土独占者: 紛争の究極的な仲裁者であり、自身が関わる紛争も裁定します。

  2. 課税の領土独占者: 法と秩序の提供に対して、国民が支払うべき価格を一方的に決定する機関です。

予測される帰結として、国家にしか裁定を求められない場合、正義は国家に有利なように歪められます。紛争を解決するどころか、独占者は自らの利益のために紛争を引き起こす傾向があります。さらに、正義の質が低下する一方で、課税権を持つ国家機関は、収入を最大化し、生産的な努力を最小化することを目指します。

2. 国家、戦争、帝国主義の関係

国家の対外的な結果に焦点を当てると、以下の傾向が見られます。

  • 集中化と排除的な競争: 課税と法の歪曲を行う機関である国家は、最も生産的な市民が「脱出」して税から逃れる脅威に常に晒されています。国家は、支配と課税基盤の拡大を望むため、他の国家と対立します。異なる国家間の競争は排除的であり、ある領域には究極的な意思決定と課税の独占者は一つしか存在できません。この競争は、政治的な集中化、究極的には単一の世界国家へと向かう傾向を促進します。

  • 本質的な攻撃性: 国家は、税金で賄われた究極的な意思決定の独占者であるため、本質的に攻撃的な機関です。個人の攻撃的な行動とは異なり、国家は攻撃行動のコストを納税者に外部化できるため、挑発者や侵略者になりやすく、集中化のプロセスは国家間の戦争という形で進むことが予想されます。

  • 自由主義のパラドックス: 戦争での勝利は、長期的に見て、国家が自由に使える経済的資源の相対量に依存します。国家は課税と規制によって富を創造するのではなく、既存の富を食い潰します。

    • その結果、経済に対する課税や規制の負担が比較的低い「リベラルな国家」ほど、人口が増え、国内で生産される富が増える傾向にあり、より非リベラルな国家を打ち負かし、自国の領土や覇権的支配の範囲を拡大する傾向があります

    • このパラドックス(逆説)が、西ヨーロッパが世界を支配するようになった理由や、最も自由主義的な国家の一つであったアメリカ合衆国が、最も攻撃的な外交政策を追求してきた理由を説明します。

3. 「民主的平和論」への批判

筆者は、民主主義国家同士は戦争をしないという「民主的平和論」を批判します。

  • ヘゲモニー(覇権)の問題: 民主的平和論者が提示する証拠は、民主主義が平和をもたらすのではなく、米国のような覇権的で帝国主義的な勢力が、その支配下にある国々が互いに戦争するのを許さなかったという事実にすぎません。ソ連支配下の東欧諸国間で戦争がなかったのも、ソ連がそれを許さなかったからです。

  • 民主主義と自由の混同: 民主的平和論は、民主主義と自由(リバティ)を概念的に混同していると指摘します。自由の基礎は私有財産であり、私有財産は民主主義(多数決)とは論理的に両立しません。筆者にとって、「民主主義は共産主義の穏やかな変種」であり、自由とは何の関係もありません。
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The Paradox of Imperialism | Mises Institute [LINK]

2025-11-24

古代中国の経済論争

中国古代の漢帝国は前2世紀後半の武帝のころ、北はオルドス地方、西は西域、南は華南からベトナム方面にいたる対外戦争によって、領土を拡大した。中国の版図は最大領域に達したが、問題も生じた。拡大した領土を維持するため、莫大な軍事費が必要となり、財政が悪化したのである。

塩鉄論
塩鉄論(平凡社東洋文庫)

武帝は財政再建のため、商人の子で財政を司る官僚であった桑弘羊(そうくよう、そうこうよう)の意見を入れ、大量の銅銭(五銖銭)を発行した。一方で銅銭の発行が引き起こすインフレを防ぐため、均輸法や平準法といった流通や価格を国が統制する制度を設けた。こうした政策は、銅銭を容易に手に入れることのできる官僚や商人には有利である一方、農産物を銅銭に換えて税を支払わなければならない農民にとっては不利だった。官僚や商人はあまりある銅銭で土地を購入し、貧しい農民は銅銭を手に入れるために土地を手放し、小作人となっていったのである。

武帝が始めた財政再建策はもう一つあった。国家による塩・鉄・酒の専売である。のちに酒の専売制だけは廃止されたが、塩鉄専売のほうはとうとうそのままであった。やがて専売政策により人民の生活が苦しくなったとして、廃止論が台頭した。これをきっかけに、古代中国の経済論争が巻き起こった。

武帝の次に即位した昭帝の時代、賢良・文学の士と呼ばれる民間の有識者六十数人が全国から都の長安に集められ、財政再建の功により御史大夫に昇進していた桑弘羊ら行政当局を相手に専売政策について討議する会が開かれた。開催の背景には、桑弘羊の権威失墜を狙ったライバルで武人出身の霍光(かくこう)の思惑があったとされる。その経緯はともかく、次の宣帝の時代、官吏の桓寛がまとめた著作『塩鉄論』に記録された討議の内容は、きわめて興味深い。

会議では桑弘羊らが法家思想に基づいて専売制の維持を主張し、有識者が儒家思想に基づいて廃止を主張した(以下、山田勝美訳、佐藤武敏訳から適宜引用・要約。カッコ内は篇名)。

有識者側はいきなり大上段に振りかぶって、すべての政治経済活動の根底には仁義道徳の考えが必要であると説き、農業を大事にし、商工業を抑えるよう強調する。当面の決め手としては、専売と均輸法の廃止を要請し、これこそ人民本位の農業の振興策だとしている(本議)。農業重視の政策が結果として商業を自由放任とする点は、18世紀フランスのケネーらの重農主義と共通しており、関心を引く。

これに対し、当時72歳だった御史大夫で、専売政策の立案者であり推進の最高責任者でもある桑弘羊は受けて立ち、こう答えた。

匈奴は信用のできない奴で、再三にわたってわが辺境を侵略し、乱暴を働いている。だがこれを討伐するとなると、中国の青年を犠牲にしなければならないし、といって放っておけば、どこまで侵盗されるかわからない。とりでを修理し、のろしを準備しての屯田による辺境警備策は、実に先帝・武帝陛下の仁慈によるものである。その結果、国費が賄いきれなくなったので、一連の新経済政策を編み出し、国家の財源を確保し、辺境の軍事費を調達しようとするものである。これを撤廃せよなどという議論は、一つには国庫を空っぽにし、二つには軍事費を切り詰め、辺境防備の中国青年を見殺しにすることになる。一体、どうして国費を賄うつもりなのか。撤廃するわけにはいかない(同)。

桑弘羊は一歩進んで、商業活動の一つである貿易のメリットを説く。たとえば中国の一端の絹布で、匈奴側の万金の品物が手に入るし、敵国の使用物資の量を減少させる狙いもある。異国の様々な珍奇な品物が国内に流通しても、我が国のお金はさして流出しない。かえって外国品が国内に流通すれば、国民生活は豊かになり、お金が流出しないから、国民生活も充足する(力耕)。

この桑弘羊の主張は17世紀英国で流行した重商主義に似ている。お金は交換手段にすぎず、食べたり着たりすることはできないから、お金が増えれば生活が充足するという部分は誤っているが、貿易奨励の考えは正しい。だが問題は、貿易にしろ国内の商業活動にしろ、それを民間ではなく、政府が主導・実行するところにある。

有識者側は統制経済に反対する根本的な主張を次のように展開する。今日、国家が鉄器を作っているが、粗悪品が多く、費用は節約されず、卒や徒刑囚はたくさん動員され、労働は限りがない。民間でやると民衆は一体となり、父子は力を合わせ、みんな良い器物を作るのに精を出し、悪い器物は集まらない。ところが今日は、国家が塩・鉄を管理し、値段を統一し、鉄器は堅すぎて切れ味の悪いのが多いが、人民は善悪を選択することができない。役人は留守がちで、器物の入手は困難だ——(水旱)。

漢文学者の山田勝美氏は、統制経済の不便を詳しく述べたこの部分から現代日本の経験を想起し、「これらの痛切なる苦い経験が、かつての太平洋戦争中における統制政策に、少しでも採り入れていたら、もってスムーズに政策が進められたであろうに」と慨嘆する。古典を軽視するとがめは、統制政策の失敗となって跳ね返った。

消費者の満足が常に求められる民間企業と違い、国家のお役所仕事はむしろ消費者に負担を押しつける。いつの時代も変わらないこの真理を、古代中国の経済論争は教えている。

そもそも漢の政府が財政難に陥ったのは、匈奴をはじめとする異民族の侵略から辺境を防衛するためだ。軍備を撤廃すべきでないと繰り返す桑弘羊に対し、有識者はこう反論する。かつて匈奴との交易が盛んだったころ、匈奴は漢に親しみ、帰順し、往来していた。その後、漢が匈奴の君長を騙し討ちにしようとする間違った計略を行ってから、匈奴は和親を絶ち、戦争が続くようになった。辺境の人たちは数十年も軍役に従うようになった(和親)。

そして有識者は匈奴との和親を求め、こういう。「君子は慎んで落ち度なく、人と交わるのに丁寧にして礼を守ってゆけば、世界中の人はみな兄弟になる。自分を反省してやましいところがなければ、一体、どうして心配し、どうして恐れる必要がありましょうか」。これは儒教の祖・孔子の言行録『論語』(顔淵)からの引用である。

有識者の非戦の主張は理想主義が過ぎると見えるかもしれないが、実は財政危機という現実を見据えた、現実主義の立場でもある。巨額の政府債務を抱えながら戦争の火遊びにたわむれる、現代の帝国への警鐘といえるだろう。

2025-11-22

最小国家主義は最悪

この記事は、無政府資本主義(アナルコ・キャピタリズム)の視点から、最小国家主義(Minarchism)—権利保護のみに限定された小さな政府を支持する立場—を厳しく批判しています。著者は、最小国家主義は自由主義と国家主義の間の妥当な妥協点などではなく、むしろ「最悪の種類の国家偶像崇拝」であると論じています。

主な論点

1. 最小国家主義は「国家主義ライト」に過ぎない

  • 国家の定義はその「規模」ではなく、「暴力と強制の独占」というその「性質」によって決まると主張しています。

  • 「少し濡れているのも、濡れていることには変わりない」という比喩を用い、国家がどれほど小さくても(最小国家であっても)、それは依然として「国家」であり、本質的に人々の権利を侵害する存在であることに変わりはないと論じています。

2. 「原則」と「選好(好み)」の混同

  • 著者は、最小国家主義者が「原則」「選好」を混同していると批判します。

  • 例えば、「税率が低い方が、高い税率よりマシだ」と主張するのは個人の「選好」に過ぎません。

  • 真のリバタリアンの原則に照らせば、「課税は窃盗(財産権の侵害)」です。窃盗の額が少ないからといって、それが窃盗でなくなるわけではありません。したがって、最小国家(少ない侵害)を支持することは、原則に基づく行動ではありません。

3. 「保証人」としての国家という幻想

  • 最小国家主義者の致命的な誤りは、国家を正義、平和、そして自然権の「必要不可欠な保証人」と見なしている点です。

  • 彼らは国家なしで権利が守られる世界を想像できず、「制限された国家」を作ろうとしますが、著者はこれを幻想だと断じます。歴史的に見て、国家は本質的に権力と暴力を拡大する「獣」であるため、制限を設けようとしても必ず肥大化し、暴走するからです。

4. なぜ「最悪」の国家主義者なのか

  • 著者は、社会主義者などの他の国家主義者よりも、ある意味で最小国家主義者の方が「タチが悪い(最悪である)」と見なしています。

  • 他の国家主義者は、国家を「自分たちの目的を強制するための権力の道具」として(ある意味正しく)認識しています。

  • 対して最小国家主義者は、国家を「自由をもたらすもの」「権利の守護者」として美化・理想化しています。

  • 人々の権利を侵害する張本人である「国家」を道徳的に高い地位に祭り上げているという点で、彼らの態度は「偶像崇拝(Idolatry)」であり、最も深く国家主義に侵されていると結論付けています。

結論

著者は、リバタリアンとしての唯一の一貫した解決策は、国家という「獣」に首輪をつけようとすること(これは常に失敗する)ではなく、国家を廃止すること(獣を殺すこと)であると述べています。国家を制限する無駄な議論に労力を費やすのではなく、国家なしで社会問題を解決する方法を模索すべきだと説いています。

Minarchism: The Worst Kind of State Idolatry | Mises Institute [LINK]
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2025-11-21

ディープステート解体への道

動画「How Executive Power Can Dismantle the Deep State | Patrick Newman」[LINK] は、ミーゼス研究所のフェローであるパトリック・ニューマン博士によるマレー・ロスバード記念講演の様子です。


本講演は、アメリカの「ディープ・ステート(影の政府)」を解体するために、いかに行政府の権限を活用すべきかという戦略を、歴史的な事例(特にジャクソン主義)を通して論じるものです。

以下に講演の要点をまとめます。

1. 過去40年間の政府縮小の試みが失敗した理由

1980年代以降、ロナルド・レーガン、ティーパーティー、ドナルド・トランプ政権など、保守派やリバタリアンによる連邦政府の権限削減の試みはことごとく失敗してきました [03:44]。

  • 結果: 政府支出は対GDP比で増加し、連邦債務は増加し続け、規制の総ページ数も増大しました [05:17]。

  • 真の障壁: これらの試みが失敗した原因は、ディープ・ステート(Deep State)、すなわちワシントンD.C.周辺に集中する特権的なロビイスト、官僚、政治家からなる「既得権益層」の存在にあります [06:40]。彼らは無制限な権力を行使し、変革に抵抗し、国民の利益ではなく強力な特定利益団体への「クロニズム(縁故主義)」に加担しています [08:09]。

2. ジャクソン主義:成功した唯一のリバタリアン戦略

ニューマン博士は、アメリカ史上、政府の規模と権限の削減に唯一成功したのは、1830年代のジャクソン主義者たちアンドリュー・ジャクソン、マーティン・ヴァン・ビューレン、ジェームズ・K・ポークなど)であると主張します [03:04]。

彼らは当時の「ディープ・ステート」である「アメリカン・システム」(中央銀行、保護関税、連邦政府による国内改良事業)を解体しました [17:47]。

  • 中央銀行の破壊: 第二合衆国銀行(当時の連邦中央銀行)の再認可に拒否権を行使し [26:50]、連邦預金を強制的に引き出して中央銀行制度を崩壊させ、独立財政制度を確立しました [19:07]。

  • 関税の引き下げ: 関税率を約40%から約20%まで引き下げ [19:28]、自由貿易の時代を到来させました。

  • 効果: これらの改革は、後のアメリカにおける最初の産業革命Industrial Revolution)を促す要因となりました [22:55]。

3. ジャクソン主義者の「実行マニュアル」(The Playbook)

ジャクソン主義者が成功したのは、議会(立法府)ではなく、行政府の権限をフル活用して改革を進めたからです [25:13]。

  1. 拒否権(Veto Power)の積極利用: それまでほとんど使われなかった拒否権を、保護関税や国内改良事業などのクロニズム(縁故主義)法案を攻撃するための主要な手段として活用しました [26:17]。

  2. 大統領令(Executive Orders)による規制機関の解体: 大統領令を用いて、議会が支持する中央銀行からの預金引き出しを断行するなど、議会の抵抗を回避しながら規制を解体・執行しました [27:18]。

  3. ポストの入れ替え(Rotation in Office): 官僚機構を既得権益とみなし、定期的に職員を入れ替えることで、官僚の長期的な既得権益化を阻止しようとしました [28:47]。

4. 現代への応用:ディープ・ステート解体への道

ニューマン博士は、現代において意味のある改革を達成する最も可能性の高いルートは、行政府の権限に焦点を当てることであると結論付けています [13:37]。

  • 財政削減戦略:

    • 拒否権の活用: 議会が特殊な利権法案を多数詰め込む「オムニバス法案」や継続予算決議(CRs)を拒否することで、予算を個別の法案に分解し、無駄な支出を削減しやすくする [34:03]。

    • 予算の差し止め(Impoundment): 大統領が議会が割り当てた予算の一部を支出しない権利を行使し、政府支出を抑え込む [40:51]。

  • 規制緩和戦略:

    • 規制庁の制御: 大統領令により、独立規制機関(IRA)が主要な規制を通過させる際に、ホワイトハウスの管理下にある行政管理予算局(OMB)の承認を義務付ける [46:24]。

    • 「1つの規制につき10の規制を廃止する」といったルールを課し、規制の純コストを毎年ゼロ未満にするよう求める [47:45]。

  • 官僚機構の解体:

    • 内部からの解体: 大統領が連邦政府の部門に、リバタリアンの価値観を持つ人材をトップとして任命し、内部から官僚機構の規模と権限を縮小させる(例:教育省の解体への取り組みなど) [49:16]。

ニューマン博士は、この戦略には腐敗のリスクも伴うことを認めつつ [56:32]、過去の戦略が失敗してきた現状において、これは「今、この場で自由を達成する」ために最も現実的で成功の見込みがある唯一の戦略であると締めくくっています [55:09]。

(Geminiを利用)

2025-11-20

戦争と「孤立主義」

リバタリアンの思想家であるマレー・ロスバードは、孤立主義(Isolationism)をリバタリアン的な対外政策の必須の原則位置づけています。彼の主要な論点は、国家権力の最小化というリバタリアンの国内目標を、対外的に完全に表現したものが孤立主義であるという点に集約されます。

1. 孤立主義と国家権力の最小化

  • 孤立主義=国家権力の最小化の対外版: ロスバードにとって、孤立主義は国家権力を可能な限りゼロに近づけるというリバタリアンの目標の、対外的な側面です。

  • 国家の成長: 介入主義(Interventionism)は孤立主義の対極にあり、究極の介入である戦争は国家の健康(War is the health of the state)であると述べています(ランドルフ・ボーンの言葉を引用)。

  • 戦争の常態化: 戦争は危機的状況を提供し、それが「非常措置」という名目で国家権力の大幅な拡大(徴兵、増税、中央銀行、高関税、規制など)を可能にし、これらの拡大は戦後もほとんど解除されずに恒久的な国家権力の増大となってきました。彼は、米墨戦争、南北戦争、そして特に第一次世界大戦が国家権力増加の大きな転換点であったと指摘しています。

2. 第一次世界大戦とコーポレート・ステートの確立

  • ウィルソン主義の影響: ロスバードはウッドロー・ウィルソンを「アメリカ史上最大の悪影響を与えた人物」とみなし、彼の対外政策が1917年以降の永久的な集団安全保障(collective security)の概念を設定したと批判しています。これは、アメリカが世界中で他国に干渉し、「民主的な」政府を樹立するという役割を負うという考え方です。

  • 国内の経済的ファシズム: 国内においては、ウィルソン時代に「コーポレート・ステート(企業国家)」、あるいは「経済的ファシズム」と呼ぶべき体制への意図的な移行が確立されました。これは、政府、大企業、大労働組合、そして知識人の「不浄な協力関係」であり、政府が経済を規制・助成する体制です。第一次世界大戦中の戦時産業局(War Industries Board)による経済計画が集団主義のモデルとなり、戦後も平和時の体制として定着させようとする試み(フーバー、フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策)に引き継がれました。

3. 集団安全保障の批判と「公正な戦争」

  • 紛争の最大化: 集団安全保障の概念は、世界のどこで起こった小さな国家間の紛争であっても、それを地球規模の世界的紛争にまでエスカレートさせる災害であると批判しています。

  • 「侵略者」の誤った類推: 国家間の紛争を個人間の紛争(ジョーンズ対スミス)の「警察活動」になぞらえるのは誤りです。なぜなら、リバタリアンの観点からすれば、どの国家もその領土の正当な所有者ではないからです。

  • 介入の最小化: ある国家(ルリタニア)が別の国家(ワルダビア)と争う場合、両国とも自国の国民に対しては侵略者です。第三者(例:アメリカ、国連)が介入してワルダビアを擁護すれば、関与する政府が増えるほど、より多くの罪のない市民が殺され、より多くの人々が課税や徴兵の犠牲になるため、全体の侵略が最大化されます。国家が関わる侵略を最小化する最善の方法は、第三者国が一切の紛争から遠ざかることです。

  • 革命戦争は別: ロスバードは、アメリカ独立戦争は正当化できる唯一の戦争であると同意しています。その理由は、それが国家機構に対する戦争、つまり武装した公衆による下からの戦争であり、無実の民間人を傷つけたり、大規模な徴税や徴兵を伴ったりする可能性が低い(または、戦略的にそうせざるを得ない)からです。革命軍は標的を国家機構に絞る一方、反革命軍は人民の支持がないため、士気をくじくために民間人への大量虐殺的なテロ(戦略的集落政策など)に頼りがちです。

4. 適切なリバタリアン対外政策

  • 政府の孤立: 適切なリバタリアン対外政策の基本要素は、政府に対し「海外で何もしないよう」圧力をかけること、つまり「店じまいして帰国すること」です。スメドレー・バトラー将軍の憲法修正案の提案(アメリカの兵士、航空機、船をアメリカ国外のいかなる場所にも送らない)がこの考えを表しています。

  • 「国」の孤立ではない: ロスバードが提唱する孤立主義は、「国」を孤立させることではなく、「政府」を孤立させることです。貿易、旅行、移住を自発的に行う個人間の交流は、平和的に行うべきです。


Murray Rothbard on War and "Isolationism" | Mises Institute [LINK]
(Geminiで要約・翻訳)

2025-11-19

チェイニーを悼まない理由

この記事は、ディック・チェイニー元副大統領の死去に際して、彼を「悪の怪物」「権力狂いの好戦家」と断定し、哀悼の意を表さない理由を説明するものです。著者は、彼に関する真実だけで十分であり、故人を「中傷する必要すらない」と主張しています。


🏛️ 戦争の立案者と金融的動機


著者は、チェイニーを両方のイラク戦争(1991年の湾岸戦争と2003年のイラク侵攻)の立案者であると指摘しています。

  • 2003年のイラク侵攻: 副大統領として、イラクが大量破壊兵器を保有しているという虚偽の主張を最も熱心に広めました。
  • 1991年の湾岸戦争 (砂漠の嵐作戦): ジョージ・H・W・ブッシュ政権下で国防長官を務めていた際に、作戦を監督しました。
  • 金融的利益: ブッシュ政権の間、チェイニーは世界最大級の石油会社ハリバートンのCEOを務めており、イラクが世界有数の石油埋蔵国であることを指摘し、個人的な金銭的利益が戦争を支持する一因であったと示唆しています。

🌍 広範な征服計画と覇権主義


元英国首相トニー・ブレアの著書を引用し、チェイニーにはアフガニスタンとイラクだけでなく、シリア、イランを含む全ての中東諸国と戦争をするという壮大な計画があったと述べています。

チェイニーは、「世界を一新しなければならない」と考えており、そのために「徹底的な強硬な力」が必要だと信じていました。

さらに、チェイニーは冷戦後のアメリカの世界戦略を定めるメモの立案者とされ、その内容は以下の通りです。

  1. 主な目標: 競合するライバル超大国の出現を防ぐこと(西ヨーロッパ、東アジア、旧ソ連圏、南西アジアを支配する敵対的な勢力を阻止する)。
  2. 目的: アメリカの利益を守り、アメリカの価値観を促進すること(国際法への尊重、民主主義の普及、開かれた経済システムの奨励)。
  3. 単独行動の準備: 国連を通じた集団行動ができない場合や迅速な対応が必要な危機においては、アメリカは単独で行動する態勢を整えるべきであると明記しています。

🔪 イラク戦争の真の動機


エドワード・C・ダガン氏の論文を引用し、イラク侵攻は9/11への過剰反応や大量破壊兵器の脅威、民主主義の拡散、石油の利益、ネオコンの役割といった他の説明に反するものだと主張しています。

  • 真の動機: チェイニーとラムズフェルド国防長官による、「大統領権限を強化し、アメリカ軍を増強する」という長期的な政策、すなわち「アメリカの優位性(primacy)」を追求するためのものでした。
  • 彼らはイラク侵攻を「テロとの戦い」を拡大する機会と捉え、大統領権限の強化ハイテクで潤沢な資金を持つ軍隊への変革という長年の目標を追求したとされています。

🗣️ 拷問の擁護


チェイニーは拷問や「強化された尋問技術」を支持し、それについて後悔していないと公言しています。彼は、水責めなどの手法は拷問には当たらないと主張し、9/11のテロリストの行為と比較すればCIAの行動は「見劣りする」と述べました。


結論


著者は、チェイニーの「有害な遺産に対抗する」ために全力を尽くし、マレー・ロスバードやロン・ポール博士が擁護した伝統的な非干渉主義の外交政策に立ち返ることを呼びかけています。


Why I Won’t Be Mourning Dick Cheney - LewRockwell [LINK]

(Geminiで要約・翻訳)