資本家に搾取されず、労働者が豊かな生活を送るはずだったソ連は、飢饉や弾圧などで膨大な犠牲者を出した末、1991年に崩壊しました。
けれども「ソ連は社会主義だから滅びた。資本主義の日本には関係ない」と考えたとしたら、それは誤りです。ソ連が滅びたのは、政府が市場経済の原理に無知だったからです。日本に無縁の話ではありません。
松戸清裕『ソ連史』によれば、ソ連の最高指導者だったフルシチョフは1957年、3〜4年のうちに国民1人あたりの食肉・牛肉・バターの生産量で米国に追いつき、追い越せと号令しました。これは非現実的でした。畜産物の政府買付価格は安くて生産コストに満たず、農民が生産増大に積極的に取り組もうとしないからです。
農民の生産意欲を高めるには、買付価格の引き上げが必要です。それには小売価格を上げざるをえません。平均30%引き上げたところ、肉製品の不足が続いていた不満もあって、国民は強く反発しました。ある州では数千人が抗議し、軍の発砲で数十人が死傷します。
またフルシチョフは、安価で供給されるパンを餌に家畜を飼う都市住民が少なくないことが、パン不足を招いているとみて、都市住民による家畜の飼育を禁止しました。この結果、都市は食肉不足に陥ります。農家の付属地削減で野菜も不足しました。
環境破壊は資本主義の病だという俗説に反し、社会主義のソ連で環境は大規模に汚染されていました。利潤の最大化への無関心が罰金や悪評をいとわぬ態度につながったとも、生産計画達成のため環境対策を後回しにしたともいわれます。
今の日本はソ連のような独裁国家ではありませんし、ソ連ほど厳しい経済統制を行なっているわけでもありません。けれども財政危機に瀕しているにもかかわらず、政府の規模拡大をやめようとせず、市場経済への介入を改めない傾向は、ソ連と同じ道をゆっくりたどっているように見えます。ロシア革命の亡霊はそばにたたずんでいます。(2017/11/09)
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