2018-11-18

税軽減は補助金にあらず

税について議論するとき、陥りやすい誤った考えがあります。税の軽減や免除を特別な恩恵のように受け止め、一部の人だけがそれを享受するのは不公平で、許してはならないという考えです。

日経電子版の記事によれば、政府は中小企業の廃業増加を食い止めるため、税制を見直します。これに対し読者の間で、税金を投入してまで中小企業主を助けるのはおかしいと異論が出ています。

もし本当に税金が投入されるのであれば、たしかにおかしなことです。けれども記事を読んでみると、どうもそういう話ではありません。

記事によれば、今は親族内で会社を引き継ぐ場合、相続税や贈与税の支払いを猶予する制度があります。しかし、雇用の8割以上を維持しないと全額納付を迫られ「使い勝手が悪い」と不評です。政府はこうした要件を見直します。

これは税金を投入する話ではありません。税負担を軽くする話です。二つは似ているようで、まったく違います。

中小企業主を助けるために補助金を与えるのであれば、それは税金の投入です。ただし、その税金は他人のお金です。だから使い道が適切かどうか問題になります。

一方、中小企業主を助けるために税金の負担を軽くする場合、その税金は他人のお金ではありません。中小企業主自身のお金です。税軽減は自分のお金を返してもらうにすぎません。補助金ではありません。

それでもサラリーマンなど他の納税者は、中小企業主だけが税軽減の恩恵にあずかるのは不公平で許せないと思うかもしれません。もともと自営業者はサラリーマンに比べ課税所得の捕捉率が低いという恨みもあります。けれどもそれは悪平等の思想です。

税軽減を受けられない納税者が、自分の負担が重くなったと感じ、不公平だと非難したくなる気持ちはわかります。しかしそれはたとえるなら、奴隷が自由になった仲間をねたみ、憎むようなものです。悪いのは自由になった奴隷ではありません。他の奴隷に自由を許さない奴隷主です。

同じように、税を減免される納税者は悪くありません。悪いのは無駄な支出を削ろうともせず、他の納税者に負担を押しつける政府です。

しかも中小企業主の相続税や贈与税は減免されるのではなく、支払いを猶予されるだけです。これでは多少見直すくらいでは廃業は止まらないでしょう。税は国民同士の憎しみを煽り、国を滅ぼします。(2017/11/18

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