日経電子版によると、訪日外国人が増加するなか、観光客の新たな受け皿となる民泊の健全な普及を後押しするのが狙いとのことです。
しかし民泊に限らず、「健全」なサービスを普及させるのに政府の規制強化は必要ありません。むしろ逆効果ですらあります。
無許可の違法民泊を問題視する際によく持ち出されるのは、犯罪です。6月に東京で民泊を悪用した覚せい剤密輸事件、7月に福岡で民泊を利用した外国人女性旅行者への性的暴行事件が起き、そのたびに違法民泊は犯罪の温床とのイメージが強調されました。
けれどもこれらの犯罪は例外にすぎません。もし違法民泊の大部分が犯罪の温床なら、政府が規制を強化するまでもなく、怖がって誰も利用しなくなるはずです。
しかし実際には、自治体が許可した正規の民泊の10倍を超える違法民泊があるとみられています。大半の違法民泊は犯罪と無縁であり、だからこそ多くの利用者がいるのです。
そもそも違法民泊が生じる大きな原因は、建築基準法で定める住宅地域の多くで民泊が禁止されているといった規制にあります。建築基準法の地域区分は住宅地に介護老人施設を建てられないなどの問題を引き起こしていますが、民泊の場合も硬直的な規制が家主を法令違反に走らせているといえます。
違法民泊を営むのはいかがわしい一部の業者で、厳しく取り締まろうと自分には関係ないと思うかもしれません。しかし一般市民が違法民泊を敵視し、規制強化に賛成すれば、自分自身が民泊の提供者や利用者として便益を得る自由を狭めるだけです。
法令違反は「悪い」ことです。しかしそれは本当に悪いことでしょうか。住宅など自分の財産を自由に使う財産権は、憲法で保障された権利です。本当に悪いのは規制を破る側なのか、それとも過度な規制の側なのか。違法民泊の問題はそれを問いかけています。(2017/11/29)
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