国際政治経済学者の進藤榮一氏は著書『アメリカ帝国の終焉』で、アジアにおいて「もう一つの資本主義が誕生し、蘇生し、興隆しつづけている」と強調します。
これまで後発国の発展は、先進国を追い上げるのがせいぜいとされてきました。しかし最近は生産のモジュール化で、一気に追い抜く戦略が可能になりました。先端技術を選択的に利用しながら後発技術をフル稼働させ、膨大な人口のニーズを満たすのです。
代表は中国の山寨(さんさい)企業です。広告や流通にお金をかけず、先端技術は日本企業から部品として入手。特許の縛りを巧みに回避し、庶民に商品を安く早く売り込みます。精巧だけれど値段が高く、巨大な途上国市場に食い込めない日本製品とは対照的です。
勃興するアジアを牽引する中国の躍進は、中華帝国の再来ととらえられがちです。しかし、それは正しくないと進藤氏は異を唱えます。中国の興隆は単独の力によるものではなく、アジアの他の国々と相互に連鎖・依存・補完することで可能になっているからです。
中国で人民解放軍と資源エネルギー産業との軍産複合体が生まれ、南シナ海での膨張主義的行動につながっているのは事実だと進藤氏は認めます。けれども資源開発を日本など周辺諸国とともに進めれば、膨張主義の拡大を防ぐ抑止力になると論じます。
日経電子版の記事によれば、日本は東南アジア諸国連合(ASEAN)と経済連携協定(AJCEP)で最終合意しました。日本自身が衰退への道を脱するためにも、軍事力ではなく、経済の力でアジアの平和と繁栄に貢献してほしいものです。(2017/11/13)
0 件のコメント:
コメントを投稿