政府はこれまでも少子高齢化を食い止めようと、結婚・妊娠・出産・育児などの支援策をあれこれと打ち出してきました。しかし効果は疑問ですし、私生活への干渉になりかねません。歴史を振り返ると、もっとスマートな人口増加策が見えてきます。それは市場経済の拡大です。
鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』によれば、日本は過去1万年に人口の波が4つあります。①縄文時代②弥生時代以降③14~15世紀以降④19世紀~現代――です。①②④の時期はそれぞれ気温上昇、水稲農耕、工業化を支えに人口が増えました。
興味深いのは、室町時代に始まる③の波です。人口成長を支えた原動力は「市場経済の展開」だと鬼頭氏は指摘します。具体的には、隷属農民の労働力に依存する名主経営が解体し、家族労働力を主体とする小農経営への移行が進んだことです。
室町時代には貨幣の普及とともに利潤獲得の機運が高まり、農民はより良い生産方法を求めて選択的に行動するようになります。隷属農民に依存する旧来の名主経営は、衣食住などの費用がかさむうえ、勤勉な労働が期待できず、生産効率が悪かったのです。
晩婚や生涯独身の多かった隷属農民が自立することで、社会全体の有配偶率が高まり、出生率が上昇しました。一方で、食生活の充実や住生活の向上により死亡率も改善します。この背景にも、生産力向上や流通の拡大など市場経済の発展がありました。
現代の隷属農民といえば、稼ぎの多くを税金(社会保険料を含む)で取り上げられる企業家や労働者でしょう。新内閣には市場経済を活性化する規制緩和とともに、大幅な減税を期待します。小手先の少子化対策よりも、はるかに効果が大きいはずです。(2017/11/02)
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