今年9月のことですが、人気ロックバンド、サカナクションのコンサートの電子チケットを転売目的で取得したなどとして詐欺罪に問われた男性に対し、神戸地裁は懲役2年6月、執行猶予4年を言い渡しました。
男性は今年2月、インターネットのチケット販売サイトを通じて、サカナクションの電子チケット2枚(販売価格計1万3000円)を転売目的で購入。入場券となる二次元コードを表示するスマートフォンを貸し出すことで2枚を計7万4000円で転売したそうです。
チケットの高値転売を非難する人々はよく、「異常な高値」といいますが、この事件の場合、転売価格は販売価格の約5.7倍。絶版になった古本だとこれくらいの値段はざらですから、もしチケットと同じルールが導入されたら、逮捕者が続出することでしょう。くわばらくわばら。けれども笑いごとではありません。
あらゆる転売を禁止したら市場経済が成り立たないことは明らかなので、チケット転売を批判する人々も、転売そのものは認めます。その代わり、「高値転売」を非難します。「異常な高値」がよくないというのです。
しかし「異常」の基準は何でしょうか。そんなものはありはしません。売り手と買い手が互いに納得して取引し、そこで成立した価格は、すべて正当なものです。他人から見て「異常」だからといって取引を否定したら、市場経済は成り立ちません。
音楽ファンの中には、チケット転売をなりわいとする転売屋が厳しい摘発でいなくなれば、一般のファンに回るチケットが増えると期待する人がいます。けれどもこれまで転売屋を通じて買っていた人が一般販売に回りますから、買えずに悔しい思いをする人は減りません。
日経電子版の記事によれば、ヤフーが「ヤフオク」のガイドラインを改定し、転売目的とみられるチケットの出品を禁止しました。ヤフーがそう判断し、実行するのは自由です。しかしそれは本当に利用者のメリットになるのでしょうか。2020年東京五輪を控え、政府がチケット転売規制を強める気配があるのも気がかりです。
自由が失われるとき、それは大衆の支持を得やすい、ささいなところから始まるものです。古本転売の悪夢が現実にならないことを祈ります。(2017/11/10)
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