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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-01-25

木村貴の経済チャンネル(2026年)

  1. 中央銀行はいらない/「個人主権」で暮らしを守る(2026/01/05
  2. 「リアル」な経済学とは? オーストリア学派入門【ライブ配信】(2026/01/11
  3. ベネズエラ攻撃、ドル衰退に拍車/新NISAで注目、「分散投資」の落とし穴(2026/01/12
  4. 積極財政は経済を壊す 株高の陰に3つの病理/アフリカの成長がアジアを抜く?(2026/01/18

*ショート動画を除く。タイトルは変更する場合があります
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2026-01-24

「自己資金」による石油戦争という嘘

この記事は、トランプ政権によるベネズエラへの軍事介入を、かつてのイラク戦争と同様の「石油で戦争費用を自給自足できる」という誤った主張(嘘)に基づいていると批判する内容です。

以下に主なポイントを要約します。


1. 「自己資金調達」という繰り返される主張

トランプ大統領は、ニコラス・マドゥロ大統領の拘束後、「ベネズエラの石油資源が莫大であるため、今回の軍事作戦に米国民の税金は一切かからない」と主張しています。これは、2003年のイラク戦争時にポール・ウォルフォウィッツ国防副長官が行った「イラクは自国の再建費用を自ら賄える」という主張と酷似しています。

2. イラク戦争の教訓と現実のコスト

歴史を振り返ると、イラク戦争の費用は当初の見積もり(1,000億〜2,000億ドル)を大幅に上回り、実際には約2兆ドルに達しました。

  • インフラ破壊: 戦争による石油インフラの損害を過小評価していた。

  • 長期的負担: 退役軍人の医療費、障害補償、借入金の利息など、戦後数十年にわたる巨額のコストが発生した。

3. ベネズエラ介入の現状と被害

2026年1月に行われたマドゥロ拘束作戦(150機以上の航空機を投入)は、短時間で終了したと発表されましたが、実態は悲惨なものでした。

  • 死傷者: 少なくとも80人(民間人と軍人を含む)が死亡し、米兵も負傷。

  • 物理的被害: 首都カラカスは爆撃により甚大な被害を受けた。

  • 外交の失敗: 昨年、デルシー・ロドリゲス氏らが提案した「平和的な政権移行案」をトランプ政権は拒絶し、武力行使を選択した。

4. 今後の展望と政治的動き

マルコ・ルビオ国務長官は、次の標的としてキューバを示唆するなど、さらなる軍事行動の拡大を否定していません。これに対し、チャック・シューマー上院院内総務(民主党)ら議会側は、トランプ大統領の軍事キャンペーンを正式に阻止するための採決を行う構えを見せています。


戦争費用の比較(推定値と実績値)

項目当初の予測 (イラク)実際のコスト (イラク)ベネズエラへの懸念
直接費用1,000億〜2,000億ドル約2兆ドルインフラ破壊による石油収益の激減
主な要因短期的な軍事費のみ長期占領、利息、退役軍人支援債務による将来世代への負担
(Geminiを利用)
The Lie of “Self-Financing” Oil Wars – Mother Jones [LINK]

2026-01-23

グリーンランド、トランプ氏の愚行

この記事「Greenland: Trump’s Folly(グリーンランド:トランプの愚行)」の内容を要約しました。

この文章は、2026年現在のトランプ大統領によるグリーンランド買収・併合への執着を痛烈に批判する内容となっています。


要約:グリーンランド買収計画 — トランプ大統領の野望とその代償

1. 高まる緊張と軍事行使の示唆

トランプ大統領は、デンマーク自治領であるグリーンランドを米国の直轄地にしようと画策しています。交渉が進展しない中、トランプ氏は「平和的な譲渡に応じない場合は武力行使も辞さない」という姿勢を示しており、欧州諸国に大きな混乱と反発を招いています。

2. 「戦略的・経済的価値」という口実

買収を正当化するために「北極圏の安全保障」や「希少資源(レアアース)」が挙げられていますが、記事はこれを「根拠のない口実」と切り捨てています。

  • 軍事面: 米国はすでにピトゥフィク宇宙基地などの軍事拠点を有しており、NATO加盟国であるデンマークとの関係上、領土化せずとも戦略目的は達成されています。

  • 資源面: レアアースの存在は誇張されており、厚い氷床に覆われた土地での採掘は極めて高コストで、経済的合理性に欠けています。

3. 動機はトランプ氏の「エゴとレガシー」

買収への執着は、国家の利益ではなく、トランプ氏自身の承認欲求と歴史に名を残したいという野望に起因すると分析されています。

  • 領土を倍増させたジェームズ・ポーク大統領への憧憬。

  • イラン攻撃中止などの不満を、領土拡大という「目に見える成果」で解消しようとする心理。

  • 一部のテック億万長者による「自由都市」構想などの特殊な関心。

4. 莫大なコストと人権の無視

平和的な買収であっても推定700億ドル(約100兆円規模)という巨額の公費が投じられることになります。これは国民生活を向上させるものではなく、単なる「大統領へのご機嫌取り」に過ぎません。何より、グリーンランドの人々自身が米国(およびデンマーク)による統治を望んでいないという基本的人権の侵害が最大の問題です。


結論として:

この政策は戦略的必要性がなく、膨大な増税と他国の主権侵害を強いる「トランプ氏の個人的な虚栄心を満たすための無謀な試み」であると結論づけられています。

(Geminiを利用)
Greenland: Trump’s Folly | Mises Institute [LINK]

2026-01-22

イラン政権転覆工作の失敗

この文章の著者は、国際政治学者(現実主義/リアリズムの大家)として知られる ジョン・ミアシャイマー(John Mearsheimer) 氏です。

この文章は、2025年末から2026年初頭にかけてイランで起きた抗議デモを、欧米メディアが報じる「内部の自然発生的な民衆蜂起」ではなく、アメリカとイスラエル(タグチーム)による周到な政権転覆工作であったと主張する批判的な論評です。

ミアシャイマー氏特有の視点

この文章には、彼の理論である「攻勢的リアリズム」に基づいた以下の特徴が色濃く反映されています。

  • 「プレイブック(台本)」という表現: 大国が他国の体制を崩壊させる際の手法を構造的に捉える。

  • 「12日間戦争」の戦力分析: 単なる政治的な勝敗ではなく、ミサイルの在庫数や迎撃能力といった軍事的な「物理的限界」から勝敗を冷徹に分析する。

  • 核抑止力の論理: 外部からの攻撃が、相手国に核兵器を保有させる「強力なインセンティブ(動機)」を与えるというリアリズムの視点。


💡 ジョン・ミアシャイマーによる分析:「イランにおけるタグチームの失敗」

国際政治学者のジョン・ミアシャイマー氏は、2025年末から2026年初頭にかけてのイラン情勢について、欧米の主流メディアとは真っ向から対立する視点を示しています。

彼は、今回の混乱を「イラン国内の民主化運動」ではなく、アメリカとイスラエル(タグチーム)による「政権転覆(レジーム・チェンジ)」の失敗であると定義しています。


💡 要約:イランにおける「タグチーム」の失敗

本稿の核心は、アメリカとイスラエルによるイラン政権打倒の試みが失敗に終わったという点にあります。著者はそのプロセスを以下の4つの要素からなる「プレイブック(台本)」として解説しています。

1. 政権転覆工作の4つの柱

  • 経済制裁: 2025年1月のトランプ大統領就任後、経済を破綻させて民衆の不満を爆発させるための「最大級の圧力」をかけた。

  • 暴力の扇動と技術支援: 2025年12月、CIAやモサドが現地で活動し、平和的なデモを暴力的な暴動へと変質させた。また、通信遮断対策として大量のStarlink端末を事前に持ち込ませた。

  • メディア工作: 欧米メディアを通じて「デモは純粋に国内問題であり、政府のみが悪である」というプロパガンダを流布した。

  • 軍事介入の準備: デモが臨界点に達した段階で、米イスラエル軍が直接攻撃を仕掛ける手はずだった。

2. なぜ失敗したのか

イラン政府が迅速かつ断固とした対応をとったため、戦略は崩壊しました。特にStarlinkの遮断に成功したことが決定打となり、デモ隊の連携と外部との通信が断たれました。その結果、軍事攻撃の機会も失われ、現体制は生き残りました。

3. 「12日間戦争」の再評価

2025年6月の「12日間戦争」についても、欧米ではイスラエルの勝利とされていますが、事実は異なると指摘しています。

  • イスラエルは迎撃ミサイルを使い果たし、イランのミサイル攻撃にさらされていた。

  • トランプ氏はイラン核施設を「完全に破壊した」と主張したが、実際には数ヶ月の遅延に留まった可能性が高い。


🚩 結論

著者は、今回の一連の動きが失敗しただけでなく、むしろイラン側に「核抑止力を持つべき強力な動機」を与えてしまったと警鐘を鳴らしています。結果として、アメリカとイスラエルはこのラウンドにおいてイランに敗北したと結論づけています。

(Geminiを利用)
The Tag Team Fails in Iran - Antiwar.com [LINK]

2026-01-21

米国はイランに介入するな

Llewellyn H. Rockwell, Jr. による論説「Why We Must Stay Out of Iran」(2026年1月19日付)の要約を、重要なポイントに絞ってまとめました。


記事の要約:イランへの軍事介入に反対する理由

ロックウェル氏は、イラン国内の反政府デモに対するトランプ政権の軍事介入の動きを強く批判し、リバタリアニズム(自由至上主義)の観点から「非介入主義」の徹底を訴えています。

1. 外交の基本原則:自国防衛に徹せよ

  • 米国の役割: 米国外交の唯一の目的は「米国の防衛」であるべき。

  • 脅威の不在: イランは米国にとって直接的な脅威ではなく、他国の内情がいかようであれ、軍事介入を正当化する理由にはならない。

2. マレー・ロスバードの非介入主義

ロックウェル氏は、思想家マレー・ロスバードの言葉を引用し、以下の倫理的・実務的リスクを指摘しています。

  • 市民の犠牲: 戦争は、徴兵、増税、そして罪のない市民の殺戮を招く。

  • 第三国の義務: 紛争が発生した場合、第三国が介入することは被害を拡大させるだけであり、最善の策は「一切関与せず撤退すること」である。

3. 地政学的背景とイスラエルの影響

  • ネタニヤフ首相の影響: イスラエルのネタニヤフ首相は、宿敵イランを排除するために米国を焚きつけていると批判。

  • トランプ氏への懸念: トランプ大統領がネタニヤフ首相の強い影響下にあり、米国の利益よりも他国の利益(イスラエルの安全保障)のために動くリスクがある。

4. 緊迫する現状(2026年1月の情勢)

  • 軍事オプション: ペンタゴンは核施設や弾道ミサイル基地への空爆案を提示しており、外交交渉は停滞している。

  • トランプ氏の姿勢: デモ隊への暴力を「レッドライン」とし、関税措置や外交中断を表明。かつて掲げていた「国家建設(ネイションビルディング)の拒否」から一転し、軍事的成功という虚栄心のために介入に踏み切る可能性が高いと警告。


結論

ロックウェル氏は、介入を支持する保守派(エイブ・グリーンウォルド氏など)の「イラン解放が世界を安全にする」という主張を否定し、米国の軍事行動は混沌を招くだけであると断じています。読者に対し、介入反対の声を上げ、本来の非介入外交に戻るよう呼びかけています。

(Geminiを利用)
Why We Must Stay Out of Iran - LewRockwell [LINK]

2026-01-20

トランプ氏よ、初心に返れ

ロン・ポール氏による寄稿文「President Trump: Peace is Popular(トランプ大統領:平和は人気がある)」の要約です。

【要約】トランプ政権の変貌と国民の反発

ロン・ポール氏は、トランプ大統領がかつての「不介入主義」の公約を捨て、好戦的な外交政策に傾いている現状を強く批判しています。


1. 公約に反する「政権交代」への執着

トランプ大統領は、イランでの反政府蜂起が失敗に終わった直後にもかかわらず、公然とイランの「政権交代」を支持する発言を繰り返しています。

  • 軍事的威圧: イランへのミサイル攻撃を一時検討し、空母打撃群を派遣。

  • 他国への介入: ベネズエラでの石油利権を狙った拉致作戦や、グリーンランドに対する強硬な支配要求など、候補者時代の「新しい戦争はしない」という約束とは真逆の行動をとっています。

2. 世論調査が示す「民意との乖離」

最新の世論調査の結果、アメリカ国民はトランプ政権の軍事路線を支持していないことが明らかになりました。

  • 対イラン武力行使: 共和党支持者を含む7割のアメリカ人(独立系では8割)が反対しています。

  • グリーンランド: 武力による領土取得には86%が反対

  • 外交方針: 「米国は国際情勢において目立たない役割を果たすべき」と考える人が急増(2025年9月の33%から45%へ)。

3. 政権への警告と提言

トランプ大統領の支持率は第2期で最低の42.1%にまで落ち込んでいます。

  • 原因: 側近をネオコン(新保守主義者)で固め、国民に人気のあった「平和」の立場を放棄したため。

  • 結論: 残りの任期でトランプ氏が「候補者時代の初心」に戻り、ネオコン顧問を解雇して不介入主義を再発見することを期待する、とポール氏は結んでいます。


(Geminiを利用)
President Trump: Peace is Popular - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2026-01-19

グロティウス、国際法の父

長年にわたり、君主や国家は宗教拡張、領土獲得、資産略奪などを目的として戦争を行ってきた。たとえば16世紀イタリアの政治思想家マキャベリは、戦争を「完全に正当な国家政策」とみなした。しかし、フーゴー・グロティウスはこれに異を唱え、戦争を避けられない場合でもその破壊と殺傷を制限すべきだと強く主張した。「他人を無意味に傷つけることは愚かであり、愚かさを超えた行為である」とし、「戦争は最も重大な事柄である。無辜の人々にも多くの災厄をもたらすからだ」と述べている。


グロティウスは17世紀オランダの法学者・哲学者で、近代国際法の父とされる。また、平和と理性を法の中心に据え、戦争に対して強く反対した思想家でもあった。戦争が避けられない状況においても、自然法と理性に基づき、戦争の破壊性を抑える必要性を唱えた。

自然法とは、人間が制定する実定法に対して、自然のうちに存在する法である。実定法が特定の時代や社会でしか通用しない相対的なものであるのに対して、自然法はあらゆる時代や地域で通用する絶対的なものである。自然法思想は、古代のストア派や中世のスコラ哲学のうちにみられるが、近代では、自然法は、神の永遠の法に基づくものではなく、人間の自然な本性である理性が見出すものとされた。そのように説いた代表的な論者がグロティウスであり、そのため近代自然法の父とも呼ばれる。

グロティウスの主著『戦争と平和の法』(1625年刊)は、戦争の正当性と進行に対する自然法に基づく法的枠組みを構築し、近代国際法の礎となった。この著作は、格調高いルイ13世への献辞に始まり、プロレゴメナ(序論)の後、全3巻からなる本文という構成になっている。

その第1巻は、法の起源についての序論を述べた後、正当戦争なるものが存在するかという一般的問題を論述する。第2巻では、戦争の生じうるあらゆる事由(自衛、被害回復、処罰)を説明し、第3巻では、戦争中の行動規範(非戦闘員保護、比例原則など)を定め、正義の有無にかかわらず戦争に法的制約を課すべきだと説いた。

さらに、グロティウスの自然法の枠組みは、理性や慣習だけでなく、神学的・実用的要素も含んでおり、宗教や文化の違いを超えて国際社会に受け入れられる普遍性を持たせていた。

この著作の中の有名な言葉に、「我々が今述べていることは、神は存在しないとか、神は人事を顧慮しないといった、最大の冒瀆を犯さずには認め得ないことをあえて容認したとしても、ある程度まで妥当するであろう」(柳原正治『グロティウス』より引用)という序論の一節がある。これは、自然法の原則が神への依存を超えて、理性のみから導かれ得るという考えを示した点で、画期的だった。グロティウスは自然法を神の創造した秩序の一部と考え、十戒など聖書の道徳はこの自然法の理解に役立つとみなした。自然法と啓示は矛盾せず、宗教的伝統と理性に基づく法は両立できるという立場を取った。

グロティウスの自然法思想は、ドイツのプーフェンドルフ、イギリスのジョン・ロックら17~18世紀の哲学的・政治的議論に大きな影響を与え、イギリスの名誉革命やアメリカ独立戦争の思想的背景にもなった。のちには、ジュネーブ協定、国連憲章など現代国際法の精神的土壌となった。

グロティウスの62年間の生涯は、オランダでいう八十年戦争(1568〜1648年)の期間にすっぽり包まれている。この戦争はネーデルラント(現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルク)がスペインに対して起こした独立戦争で、スペインの支配からの解放と、北部7州によるオランダの建国、ウェストファリア条約での国際的な独立承認につながった。

オランダは独立戦争の休戦が成立した17世紀前半、経済が繁栄する黄金時代を迎えた。独立戦争中、スペイン軍に封鎖された南部のアントウェルペンの市場は壊滅し、代わって、独立した北部のアムステルダムに南部から多数の商工業者が亡命した結果、経済活動が劇的に活発化した。造船の技術に長けたオランダ人は、バルト海貿易でも優位だったほか、アジアにも早くから進出した。1602年にはそれまでの多くの会社を統合してオランダ東インド会社をつくり、ジャワのバタビアに拠点を置いた。当時有力な金・銀の産地だった日本で、イギリスが撤退し、スペイン、ポルトガルがキリスト教布教の問題で排除されると、日本との貿易を独占したのは周知の通りだ。

米シンクタンク、ミーゼス研究所で公開する論文によれば、グロティウスの思想は商業活動の自由化、金融制度の安定化、国際平和の確立に寄与し、結果として資本蓄積と産業高度化を促した。グロティウスは単なる法理論家にとどまらず、その自然法思想や自由貿易の擁護、平和構想によって、オランダ黄金時代の経済的繁栄を直接・間接に支えた。米思想家マレー・ロスバードは「グロティウスの影響で、財産権の考えが経済領域にまで拡大されるようになった」と指摘する。

グロティウスは波乱の人生を送った。1583年、オランダ・デルフトの名門に生まれた。若い頃から神童として知られ、11歳でライデン大学に入り14歳で卒業。1598年15歳でオランダ使節団の随員としてフランスのアンリ4世の宮廷を訪問し、王から「オランダの奇跡」とその才を嘆賞された。同年12月、16歳で弁護士を開業。オランダ東インド会社がポルトガル船を捕獲するという事件が起こり、会社の委嘱によりオランダ側の立場を擁護する著作を執筆した。これが国際法に興味をもった機縁といわれる。

1607年以後、政治・外交の実際に参画するが、やがて神学論争をめぐる政治闘争に巻き込まれる。宗教的寛容を説き、両派の和解に努めたが、その努力は成功しなかった。18年に逮捕され、翌年国家転覆の陰謀を理由に終身禁固・財産没収の刑を宣告され、古城に幽閉された。3年後、妻や使用人の助けにより、書物を運ぶ箱に身をひそめて劇的な脱走に成功する。フランスに亡命してフランス王の保護を受け約10年間フランスに滞在し、その間に『戦争と平和の法』を完成させた。

1631年から数年間オランダ、ドイツを流浪したが、スウェーデン女王により駐仏大使に任用され、再びパリに帰った。44年大使解任、翌年スウェーデンにいったん帰国したが、その年の8月、ドイツのリューベックに向かって旅立ち、途中暴風のため遭難。かろうじて避難上陸し、馬車でリューベックに向かう途中、ロストックで8月28日夜半、疲労のために息を引き取った。

現代の国際紛争では、無辜の人々を傷つけてはいけないというグロティウスの訴えに反する行為が目立つ。その思想をあらためて噛み締めるべきだろう。

<参考資料>
  • 『グロティウス』柳原正治(清水書院) [LINK]
  • Natural Law and Peace: A Biography of Hugo Grotius | Libertarianism.org [LINK]
  • An Austrian Perspective on the History of Economic Thought | Mises Institute [LINK]
  • Hugo Grotius and the Dutch Golden Age | Published in Journal of Libertarian Studies [LINK]

2026-01-17

外交理念の変節

アダム・ディック氏によるこの記事の要約は以下の通りです。

要約:トランプ大統領と「保護する責任(R2P)」

かつてリベラル派の「人道的介入主義」を批判し、2024年の大統領選では「平和の候補者」として戦争反対を訴えていたドナルド・トランプ大統領が、現在はそのリベラル派の理念である「保護する責任(R2P:Responsibility to Protect)」を、海外での軍事介入を正当化する根拠として利用していると筆者は指摘しています。

主なポイントは以下の通りです。

  1. 理念の変節

    元々「R2P」は、サマンサ・パワーやスーザン・ライスといったヒラリー・クリントン周辺のリベラル介入主義者(ネオコンの双子の片割れと評される)に結びついた概念であり、シリアやリビアでの失敗を招いたものとしてトランプ側近や支持者から批判されてきました。しかし、トランプ大統領は現在、この「他国の人々を救う」という理屈を自らの軍事行動の正当化に使っています。

  2. ナイジェリアへの介入

    2025年12月、トランプ大統領はナイジェリアで殺害されているキリスト教徒を保護することを理由に軍事攻撃を命じました。ここには米国の国家安全保障に対する直接的な脅威への言及はなく、純粋に「被害を受けている人々を助ける」という人道的介入の論理が用いられました。

  3. イランへの軍事威嚇

    トランプ大統領は、イランの反政府デモ隊に対し「助けは向かっている」と約束し、デモ隊が殺害されるようなことがあれば、米国は彼らを「救済」するために軍事行動を起こす準備ができている(Locked and loaded)と宣言しています。また、「MIGA(Make Iran Great Again)」というスローガンまで登場しています。

「平和の候補者」との矛盾

筆者は、トランプ大統領が「他国での被害を止めるためなら軍事力行使は適切である」というR2Pの考え方に傾倒していることは、制約のない介入主義を招く危険な方式であると批判しています。これは、彼が選挙中に掲げていた反戦的な姿勢とは明らかに矛盾しており、かつて彼が「滑稽で危険だ」と嘲笑していたリベラル派の思考そのものに陥っていると結論づけています。

(Geminiを利用)
Donald Trump, A Responsibility to Protect President - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2026-01-16

ロスバードとホッペ

ハンス=ヘルマン・ホッペの著書『Getting Libertarianism Right』の第4章「Coming of Age with Murray(マレーと共に成人して)」は、ホッペが師であり友人でもあったマレー・ロスバードとの10年間にわたる親交を振り返り、彼から学んだ「実存的な教訓」について綴ったエッセイです。

主な内容は以下の通りです。

1. ロスバードとの出会い

ホッペは1985年に初めてロスバードに会いました。当時ホッペは35歳、ロスバードは59歳でした。ホッペはすでに博士号を持ち、知的・理論的にはミーゼス主義者およびロスバード主義者として確立されていましたが、ロスバードと直接働き、生活を共にする中で、単なる「大人(Adult)」から、真の意味で「成人(Coming of Age)」した人間になったと述べています。

2. 性格の対比

二人は対照的な性格でした。ホッペが自身を「冷徹で率直、対立を辞さない北ドイツの人間」と評する一方で、ロスバードを「都会的で陽気、社交的で、プライベートでは決して対立を好まない温和な人物」であったと描写しています。この違いにもかかわらず、二人はすぐに意気投合しました。

3. 歴史修正主義の重要性

ホッペがロスバードから学んだ最大の教訓の一つは、「リバタリアニズム理論を歴史修正主義(Revisionist History)で補完する必要性」です。

  • 公式な歴史への疑い: 勝者によって書かれた公式の歴史を鵜呑みにせず、犯罪捜査のように「誰がこの政策で利益を得るのか(カネの流れを追え)」という視点を持つこと。

  • ドイツ人としてのアイデンティティ: 戦後ドイツの教育で「自国を恥じるべき」と教えられてきたホッペに対し、ロスバードはドイツの文化や学術的伝統の素晴らしさを説き、ホッペがドイツ人であることに誇りを持てるよう助けました。

4. 陰謀論への見解

ロスバードは、歴史上の出来事を「単なる偶然の連続」と見るのではなく、特定の目的を持った集団による「陰謀(合意の上での行動)」の結果である場合が多いと説きました。これは突飛な陰謀論ではなく、現実的な社会分析の手法としてホッペに受け継がれました。

5. 「右派」への転換と文化の重要性

ロスバードは晩年、リバタリアニズムが単なる「不可侵の原則(NAP)」の遵守だけでなく、共通の文化、伝統、道徳に支えられたコミュニティを必要とすると説くようになりました。

  • 偽りの権利の拒絶: 「人権」や「差別されない権利」といった新しい権利の多くは私有財産権と相容れないものであり、左派的・平等主義的な「知的ゴミ」であると断じました。

  • 多文化主義への批判: 異なる文化が遠く離れて共存することは可能だが、同じ場所での強制的な多文化主義は社会的不信と紛争を招き、リバタリアン的な秩序を破壊すると論じました。

6. 批判への態度

ロスバードは、メディアや既存の学者から「人種差別主義者」「ファシスト」といった激しい誹謗中傷(Smear bund)を受けましたが、それを笑い飛ばして無視していました。ホッペもその姿勢を学び、自身への批判に対しても「敵が多ければ名誉も多い(Viel Feind, viel Ehr)」という精神で活動を続けていると述べています。


この章は、ロスバードという偉大な知性が、一人のドイツ人学者に理論だけでなく、いかにして「現実の世界を直視し、不当な批判に屈せず、自分の文化を愛するか」という生き方を示したかを記した感動的な回想録となっています。

(Geminiを利用)
Chapter 4: Coming of Age with Murray | Mises Institute [LINK]

2026-01-15

リバタリアンのポピュリスト戦略

リンク先は、ハンス=ヘルマン・ホッペ(Hans-Hermann Hoppe)の著作『Getting Libertarianism Right』の第3章「Libertarianism and the Alt-Right: In Search of a Libertarian Strategy for Social Change(リバタリアニズムとオルタナ右翼:社会変革のためのリバタリアン戦略を求めて)」の内容です。

この章の主な要点は以下の通りです:

1. リバタリアニズムとオルタナ右翼の共通点と相違

  • 共通点: ホッペは、オルタナ右翼の多くのリーダーがリバタリアン的な傾向(特にロスバードへの理解やロン・ポールの支持)を持っていることを指摘しています。また、既存の政治体制やリベラルなエリートに対する懐疑心、自由な結社の権利(差別する権利を含む)の重視などが共通しています。

  • 相違点: オルタナ右翼の中には、経済的な保護主義(関税や貿易制限)を支持する者が多く、これはリバタリアンの自由貿易の原則と対立すると述べています。また、リチャード・スペンサーのような一部の勢力が「国家(ステート)」を肯定する方向へ向かっていることを批判的に見ています。

2. 社会変革のための「ポピュリスト戦略」の提案

ホッペは、ハイエクが提唱したような「知識人から大衆へ」というトップダウンの変革モデルを否定します。なぜなら、現代の知識人やメディアは国家に雇われた「問題の一部」だからです。

代わりに、支配エリートを飛び越えて大衆に直接訴えかける「リバタリアン・ポピュリズム」が必要だと主張しています。

3. 具体的な戦略の柱

ホッペは、リバタリアンがオルタナ右翼的な視点から学ぶべき点として、以下の具体的な戦略を挙げています。

  • 大量移民の停止: 移民は「招待制」であるべきだとし、福祉目的の移民や文化的に相容れない移民の流入に反対しています。これは「強制的な統合」を避けるための自由な結社の権利に基づいています。

  • 福祉国家の解体と「被害者」の特定: 税金を消費する側(国家エリートや依存層)と、税金を払わされている側(生産的な市民)を明確にし、特に「白人、ヘテロセクシャル、キリスト教徒、家族を持つ男性」などが国家の文化的・経済的攻撃の標的にされているという視点を示しています。

  • 「強制的な統合」の廃止: 人種、宗教、性的指向などによる差別を禁じる法律(不当差別禁止法)を撤廃し、人々が自分のコミュニティで誰と関わるかを自由に決定できる権限を取り戻すべきだと説いています。

  • 分権化と脱退(セセッション): 中央集権的な国家を解体し、小さな政治単位への分裂を促すことで、自由な競争と社会秩序を回復させることを目指しています。

結論

この章でホッペは、リバタリアンが「政治的正しさ(ポリコレ)」を捨て、オルタナ右翼が重視するような「文化・伝統・秩序」の重要性を認識しつつ、リバタリアンの核心である「私有財産権」に基づいた現実的な社会変革を目指すべきだと結論づけています。

(Geminiを利用)
Chapter 3: Libertarianism and the Alt-Right: In Search of a Libertarian Strategy for Social Change | Mises Institute [LINK]

2026-01-14

ネオコンになった米国第一

記事「TGIF: “We’re” All Neocons Now」(シェルドン・リッチマン著)の要約です。

要約:私たちは皆「ネオコン」になったのか

著者のシェルドン・リッチマンは、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」と、その政敵である「ネオコン(新保守主義)」の間には、本質的な違いはないと批判しています。

1. アメリカ・ファーストとネオコンの一致

トランプ氏によるベネズエラへの軍事介入と政権転覆は、彼が否定してきたはずのネオコン的介入主義と何ら変わりません。トランプ氏は介入の理由として「良き隣人」「安定」「エネルギー資源の確保」を挙げましたが、これらは従来のネオコンが介入を正当化する際に用いてきた論理と同一です。手法やスタイルの違い(品性の欠如など)はあっても、国家利益のために他国へ介入するという原則において両者は一致しています。

2. 帝国主義への回帰と「ドンロー・ドクトリン」

トランプ氏の姿勢は、テディ・ルーズベルトのような初期の帝国主義的な大統領を彷彿とさせます。彼は「ドンロー・ドクトリン(トランプ版モンロー主義)」を掲げているようですが、本来のモンロー主義(1823年)が「他国への不干渉」を前提としていたのに対し、トランプ氏はベネズエラの資源を「我々のもの」と呼び、露骨な干渉を行っています。これは、他国の主権を尊重しようとしたF・ルーズベルトの「善隣政策」とは対照的な「悪隣政策」であると著者は指摘します。

3. 砲艦外交の再来

「米軍の全選択肢を維持する」「米国が1年以上ベネズエラを統治する」といったトランプ氏の発言や、コロンビア、メキシコ、デンマーク(グリーンランド)への脅しは、アメリカ外交の暗部である「砲艦外交」そのものです。

結論

リッチマン氏(リバタリアン的視点)によれば、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」は、自由主義的な不干渉主義ではなく、単に「アメリカの利益」を名目に他国を支配しようとする、伝統的な(あるいはネオコン的な)介入主義の焼き直しに過ぎないと結論付けています。

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TGIF: "We're" All Neocons Now | The Libertarian Institute [LINK]

民主主義による脱文明化

リンク先は、ハンス=ヘルマン・ホッペ(Hans-Hermann Hoppe)の著書『Getting Libertarianism Right』の第2章「Democracy, De-civilization, and the Quest for a New Counterculture(民主主義、脱文明化、そして新しいカウンターカルチャーの探求)」のページです。

この章の主な内容は以下の通りです:

1. 民主主義による「脱文明化」

ホッペは、民主主義を単なる政治形態ではなく、社会を「脱文明化(de-civilization)」させるプロセスであると批判しています。

  • 時間の選好(Time Preference)の上昇: 民主主義下では、政治家は「次の選挙」のことしか考えず、他人の財産を収奪して支持者に分配することを繰り返します。これにより、社会全体で貯蓄や長期的な投資よりも、今すぐの消費や略奪が優先されるようになり、文明の基盤である「未来への備え」が失われます。

  • 法的不確実性: 多数決によって法律が絶えず書き換えられるため、普遍的な正義(自然法)が失われ、政治的な力を持つ者が勝つという「無法状態」が蔓延します。

2. 寄生的なエリートと知識人の腐敗

民主主義は、生産的な人々から略奪し、寄生的な人々(政治家や公務員)に分配する仕組みであると述べています。

  • 知識人の買収: 本来、言葉を扱う知識人は市場での需要が少ないため、国家に従属しやすい傾向があります。国家は彼らを「公教育」や「プロパガンダ」の担い手として雇用し、国家の侵害を正当化させる理論を作らせます。

  • 分断と統治: 国家は社会福祉プログラムや特権を通じて、貧困層や特定の業界を味方につけ、国民を分断(Atomization)することで支配を容易にします。

3. 社会の「アブスルディスタン(不条理の国)」化

ホッペは、現代の民主主義社会を「誇大妄想妄想狂が運営する精神病院」や「アブスルディスタン(官僚主義や社会の不条理が常態化した架空の国)」と呼んでいます。

  • 価値の逆転: 強制が自由と呼ばれ、消費が投資と呼ばれ、男性が女性と呼ばれるような、現実と乖離した不条理な言説が主流となり、自然法を信じるまともな人々は「ネアンデルタール人」や「過激派」として排除される状況を嘆いています。

4. 脱出の困難と「新しいカウンターカルチャー」

リバタリアン(ホッペの言うネアンデルタール人)は、このシステムから脱出(分離・独立)しようとしますが、民主主義国家はそれを「反逆」として禁じ、財産を持ち出すことも許しません。

  • Property and Freedom Society (PFS) の役割: ホッペが設立したPFSのような集まりは、こうした現状を打破するための「新しいカウンターカルチャー(対抗文化)」の拠点であるとしています。

  • 文明を再建するためには、民主主義的な迷信を打破し、私有財産権と自然法に基づく本来の社会秩序を取り戻すための知的・文化的な戦いが必要であると結論づけています。

要約すると、「民主主義は文明を破壊する寄生的なシステムであり、これに対抗して私有財産と真の自由を守るための新しい文化的エリート(カウンターカルチャー)を形成しなければならない」という極めて挑戦的な主張がなされています。

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Chapter 2: On Democracy, De-Civilization, and the Quest for a New Counterculture | Mises Institute [LINK]

2026-01-13

帝国主義を再び偉大に?

ロン・ポール(Ron Paul)氏によるこの記事は、2026年1月3日に行われたアメリカ軍によるベネズエラへの軍事介入と、ニコラス・マドゥロ大統領の「逮捕」を強く批判する内容です。

以下に要約と主要なポイントをまとめました。

記事の要約

トランプ大統領はベネズエラへの軍事介入の理由を、当初の「麻薬カルテル摘発」から「石油資源の確保」へと一変させました。ロン・ポール氏は、この変節と他国(イランやキューバなど)への介入示唆を、「平和主義」を期待してトランプ氏を支持した若年層への裏切りであり、かつて彼が否定した「体制転換(レジーム・チェンジ)戦争」への回帰であると断じています。


主要なポイント

  • 介入動機の変化と石油の現実

    トランプ政権は、マドゥロ大統領逮捕の正当化として「麻薬」を掲げていましたが、制圧後は露骨に石油資源へのアクセスを強調し始めました。しかし、石油業界内では、米国内のシェール革命やベネズエラの重質油輸送コストの高さから、この介入の経済的合理性に懐疑的な声もあります。

  • 「暫定統治」と他国への脅威

    トランプ氏はベネズエラを「適切な移行」ができるまで米国が管理すると宣言しました。また、マルコ・ルビオ国務長官らによるキューバへの警告や、リンゼー・グラハム上院議員が掲げた「Make Iran Great Again(イランを再び偉大に)」というスローガンに象徴されるように、ベネズエラが「始まりに過ぎない」可能性が示唆されています。

  • 膨れ上がる軍事予算と国民への負担

    政権は軍事予算を1.5兆ドルにまで増額しようとしています。トランプ氏は関税収入で賄えるとしていますが、ポール氏はこれを不可能とし、最終的にはインフレ(「隠れた税金」)を通じて米国民がそのコストを支払わされることになると警告しています。

  • 若年層支持者への裏切り

    2024年の選挙でトランプ氏が若者の支持を得た大きな理由は、彼が「終わりのない戦争」を止めると約束したからでした。この約束を破り、再び帝国主義的な軍事介入を繰り返すことは、共和党にとって将来的な支持基盤の喪失につながると指摘しています。


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Making Imperialism Great Again? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

現実主義的なリバタリアン

リンク先は、ハンス=ヘルマン・ホッペ(Hans-Hermann Hoppe)の著書『Getting Libertarianism Right』の第1章「A Realistic Libertarian(現実主義的なリバタリアン)」のページです。

この章の主な内容は以下の通りです:

1. 右派と左派の世界観の定義

ホッペは、リバタリアニズムを論じる前に「右派」と「左派」を定義します。

  • 右派: 人間には肉体的・知的に根本的な「不平等」があるという現実を認め、その結果として生じる社会的な格差や階層を自然なものとして受け入れる立場。

  • 左派: 人間の違いは環境要因によるものであり、本来は平等であるべきだと主張する立場。生物学的な差異による格差であっても、それを「不当な運」と見なし、国家による再分配や補償(平準化)を求めます。

2. リバタリアニズムとの互換性

ホッペは、リバタリアニズムが右派・左派のどちらと親和性があるかを論じています。

  • 右派との関係: 強く肯定しています。リバタリアンは、人間が不平等であるという経験的事実を認めるべきであり、平和的な市場取引の結果として生じる格差を容認する「レッセ・フェール(自由放任)」の原則は、右派の世界観と一致すると述べます。ただし、犯罪や国家の特権によって生じた不平等については、修正(回復)が必要だと付け加えています。

  • 左派との関係: 強く否定しています。左派の掲げる「平等主義」は現実に反しており、リバタリアンが守るべき私有財産権や個人の自由と根本的に矛盾すると主張します。

3. 「左派リバタリアン」への批判

ホッペは、自らをリバタリアンと称しながら左派的な価値観(反差別、オープンボーダー、伝統的道徳の破壊など)を持つ人々を厳しく批判しています。

  • 彼らの主張は、伝統的な家族形態や共同体の権威を弱めるものであり、それは結果として国家による社会統制(分断して統治せよ)を助長していると警告しています。

  • 特に、白人・中産階級の伝統的な家族モデルこそが経済的成功と文明の基礎であり、これをおとしめることは文明の衰退を招くと論じています。

4. 結論

ホッペの言う「現実主義的なリバタリアン」とは、抽象的な権利論に終始するのではなく、人間の生物学的・社会的な現実(不平等)を認め、文明を支える伝統的な社会構造(家族、私有財産、差別化の権利)を重視する、保守的・右派的な視点を持つリバタリアンのことを指しています。

要約すると、「平等主義はリバタリアニズムの敵であり、真のリバタリアンは(右派的な意味での)社会の自然な不平等と伝統的な秩序を認めるべきだ」という主張が展開されています。

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Chapter 1: A Realistic Libertarian | Mises Institute [LINK]

2026-01-12

無法な大統領職

アンドリュー・P・ナポリターノ氏による論評「A Lawless Presidency(無法な大統領職)」の要約です。

要約:ベネズエラ侵攻と憲法違反

本稿は、トランプ政権によるベネズエラへの軍事介入とマドゥロ大統領の拘束を、米憲法および国際法に対する重大な違反であると強く批判しています。

  • 憲法上の権限逸脱:

    憲法は宣戦布告の権限を議会にのみ与えています。筆者は、議会の承認を得ずに軍事行動を命じたトランプ氏の行為は、大統領の宣誓義務(憲法の擁護)に背くものであると指摘しています。

  • 国際法の無視:

    米国が批准した国連憲章は、他国への不法な攻撃を禁じています。批准された条約は憲法と同様に「国の最高法規」ですが、今回の侵攻は国連の承認も経ていません。

  • 政権側の主張への反論:

    当時のルビオ国務長官らが主張した「緊急事態であった」「議会は信頼できない」といった釈明に対し、筆者は、死者を出した大規模な軍事行動が「侵攻ではない」とする強弁を退け、これらを「失笑もの」の論理であると断じています。

  • 拡大する大統領権限への危惧:

    9.11以降、議会が不作為を決め込む中で大統領権限が肥大化し、政府が憲法の枠組みを超えて行動する「ウィルソン的(進歩主義的)」な統治が定着してしまったことを批判しています。

  • 道徳的・法的な矛盾:

    今回の行動の背景には、石油資源への欲望やCIAの麻薬取引関与の身代わり(スケープゴート)という側面があると指摘。自身の情報機関(DNIやDEA)でさえベネズエラが麻薬供給源ではないと認めていた中で行われたこの侵攻には、「いかなる法的弁護の余地もない」と結論づけています。


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A Lawless Presidency - Antiwar.com [LINK]

ロスバードの遺産を守れ

オスカー・グラウ氏による「マレー・ロスバードの遺産を守るために(In Defense of Murray Rothbard’s Legacy)」は、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領を「ロスバード主義者」として称賛する動きに対し、ミレイはロスバードの理念を裏切る「右翼日和見主義者」であり「ネオコン」であると激しく批判する論考です。

以下に、その主な内容を要約します。


1. ロスバードの原則と「パレオ・リバタリアニズム」

著者(グラウ氏)は、マレー・ロスバードの思想は生涯一貫しており、状況に応じて戦略を変えることはあっても、「反国家・私有財産・徹底した地方分権」という核となる原則は揺るがなかったと強調します。1990年代の「パレオ・リバタリアニズム」も、その原則を当時の状況に適応させたものに過ぎません。

2. ミレイとロスバードの決定的相違

フィリップ・バグースらのリバタリアン学者は、ミレイを「ロスバード的な右翼ポピュリズムの体現者」と評価していますが、グラウ氏はロスバードが掲げた「右翼ポピュリズムの8項目」に照らし合わせ、ミレイがいかにそれらから逸脱しているかを論じています。

項目ロスバードの主張ミレイの実際
福祉 (Welfare)福祉国家の完全な解体。福祉受給者を「犠牲者」と呼び、受給制度を維持。バウチャー制による教育・医療の国家資金維持。
特権の廃止人種・グループへの特権廃止。「ホロコーストの矮小化」を理由に訴訟を起こし、特定のグループを特権化している。
中央銀行 (Fed)中央銀行の廃止、銀行家への攻撃。公的債務を「名誉」として返済を約束し、銀行家の利益を守る。中央銀行の廃止は不透明なまま。
外交 (America First)徹底した反戦・非介入主義。熱狂的なシオニズム、米・NATO・イスラエルへの支持。アルゼンチンを「軍事大国」にしようとする。
家族の価値伝統的な家族・一夫一妻制の重視。結婚を「忌まわしい」と呼び、子供(人間)ではなく「4本足の子供(犬)」を愛でる価値観。

3. 「右翼日和見主義」への批判

グラウ氏は、ミレイをロスバードが警告した「右翼日和見主義(Right-wing opportunism)」の典型だと断じます。

  • 漸進主義の罠: ロスバードは「自由への段階的な改革」という名目で原理原則を先延ばしにすることを拒絶しましたが、ミレイは「3段階の改革案」という名の下に国家主義的な政策を正当化しています。

  • ネオコンの偽装: ミレイの本質は「アナルコ・キャピタリスト(無政府資本主義者)」を装ったネオコンであり、国家権力を利用して特定の利益団体(特にシオニストや米軍事産業)に奉仕していると批判しています。

4. ミーゼス研究所内部の「裏切り」

著者は、ミーゼス研究所の主要メンバー(フィリップ・バグス、ウエルタ・デ・ソト、ダニエル・ラカジェら)がミレイに「学術的なお墨付き」を与えていることを強く非難しています。

  • 彼らはミレイを宣伝することで個人的な利益(本の翻訳、身内の雇用、勲章の授与など)を得ていると指摘。

  • かつてシオニズムを理由に追放されたウォルター・ブロックよりも、ミレイという「偽物」を広めている彼らの方がロスバードの遺産を傷つけていると主張しています。


結論

この論文は、ミレイ現象を「リバタリアニズムというラベルを貼った国家主義的な詐欺」と定義し、ミーゼス研究所はロスバードの純粋な思想を守るために、ミレイを擁護する学者たちを排除すべきであるという過激な提言で締めくくられています。

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In Defense of Murray Rothbard’s Legacy, by Oscar Grau - The Unz Review [LINK]

ラブレーと自由の精神

ルネサンス時代の欧州では、人間を尊重し、人間の尊厳や価値を重視する人文主義(ヒューマニズム)の思想が盛んになった。この思想に基づき、フランス・ルネサンス文学最大の傑作といわれる物語『ガルガンチュワとパンタグリュエル』を著したのが、作家で人文主義者(ヒューマニスト)のフランソワ・ラブレーだ。


ルネサンス時代に生まれたラブレーは、宗教改革の混乱の中で成長し、キリスト教のカトリック(旧教)、プロテスタント(新教)それぞれの不寛容に抵抗した。最も尊敬する人物は、人文主義者の王者と呼ばれる、オランダのエラスムスだった。

ラブレーは1495年ごろ、中部フランス、ロワール川流域の町シノン近郊の村で、地主の三男として生まれたとされる。青年時代を、旧教のいろいろな宗派の修道院で過ごしたが、いわゆる在家僧になる許可を得て、フランス各地の大学で古典学、法律、医学を勉強したと伝えられる。とくに医学では優秀な才能を示した。

当時、ドイツのグーテンベルクが15世紀半ばに改良・実用化した活版印刷術が、製紙法の普及とあいまって情報伝達に一大変化をもたらしていた。手で写してきた中世の写本や木版に代わって、新しい思想や聖書の普及に大きな役割を果たした。ラブレーはこれらの出版物からむさぼり食うように知識を吸収したと思われる。生活のために、当時盛んになり始めていた古典文芸の翻刻に携わったが、そのかたわら、フランス王側近らの庇護を受け、侍医として仕えた。

ラブレーは1532〜52年にかけて『ガルガンチュワとパンタグリュエル』を執筆する。巨人の父子ガルガンチュワとパンタグリュエルを中心とした奇想天外な物語のなかに、社会や教会批判を盛り込んだ。このうち筋の上で2巻目にあたる『第二之書パンタグリュエル』が1532年にまず出版された。筋の上で1巻目にあたる『第一之書ガルガンチュワ』は1534年、『第二之書』の後で公にされ、順番が入れ替わっている。全5巻のうち5巻目は死後出版されたが、偽作ともいわれる。

当時、規制の制度、とりわけ宗教に挑戦することは、勇気を必要とした。たとえば、ラブレーの友人だったフランスの出版業者でヒューマニスト、エティエンヌ・ドレは絞首ののち火あぶりにされたし、同じくフランスのヒューマニストで、エラスムスや宗教改革者ルターの著書を翻訳したルイ・ド・ベルカンもパリの広場で火刑に処せられた。16世紀前半、これらの有名な人物たちとともに、多くの人々が旧教会側からの迫害によって命を落としていた。

それもあって、ラブレーの作品は、真正面からの教会批判でなく、遠まわしに批評する風刺の手法で貫かれることになった。博識に基づく主張をそのまま伝えるのではなく、地口・しゃれ・語呂合わせなどを駆使し、ときには性器や糞尿に関する露骨な描写や語彙を交えて、多くの人が楽しめるよう工夫している。

それでも、少なくとも生前に出版された4巻目まで、各巻が発表されるたびに、フランスの思想検察機関ともいえるパリ大学神学部(ソルボンヌ神学部)から告発され、何巻かは禁書にされている。ラブレーが滑稽な物語に託した鋭い批判を、見抜いたいたからにほかならないだろう。

ラブレーは修道院生活の経験に基づき、その欠点や短所を詳しく見聞していた。たとえば『第二之書』では、修道士のことを「これなる族(やから)は、ただひたすら瞑想に耽り礼拝にいそしみ断食を行なって五欲煩悩の身を責めさいなむこと以外にはなすべきことはないとか、哀れにも脆き人間の心を真に孚(はぐく)み養うこと以外になすべき勤めはないのだとか、巧言たらたら世の善男善女に言い聞かせ、しかも事実はその逆で、飲んだり食ったりして言語道断の大騒ぎ」(渡辺一夫訳、以下同)とこきおろしている。

また『第一之書』では、怠惰な修道士は「百姓のように汗水流すこともせず、武士のように国土を衛らず、医師のように病人を医(いや)しもせず、優れた福音伝道師や教育者のように世人に説教したりこれを教化したりすることもいたさず、商売(あきうど)のように国家社会に必要なる利便物資を運ぶこともいたさぬ。さればこそ万人より罵られ忌み嫌われるのだ」と罵倒している。

ラブレーは尊敬したエラスムスと同じく、戦争を嫌った。『第一之書』では、羊飼いと煎餅売りのささいな喧嘩をきっかけに、ガルガンチュワと暴君ピクロコルとの間に戦争が起こるというエピソードが描かれる。ガルガンチュワは武勇に優れた修道士ジャンの活躍で勝利を収め、ほうびとしてジャンの望む修道院の建立を許可する。

この「テレームの僧院」は、自由主義者ラブレーの夢を形にしたユートピアといわれる。それまでの修道院の常識を破り、美男美女が豪華な衣服を着て、自由で楽しく、しかも責任ある生活を送るのだった。そこでの規則は、ただ、「欲するところをなせ」という1項目だけだった。

なぜそれだけの規則で、楽しく、しかも責任ある生活を送れるのだろうか。これについてラブレーは「正しい血統に生れ、十分な教養を身につけ、心様(こころざま)優れた人々とともに睦み合う自由な人間は、生れながらにして或る本能と衝動とを具えて居り、これに駆られればこそ、常に徳行を樹(た)て、悪より身を退(ひ)く」からだと述べている。

フランス文学者の渡辺一夫氏は、『第一之書』の訳注で、ここで述べられた楽天主義や自由主義は「ラブレーの理想的人間像の一面に触れているに違いない」と述べている。また訳者解説で、「欲することをなせ」という原理を実行する人々は「教養も人格も十分に備わった男女であるべきだという条件がつく」と指摘し、ラブレーの考えは「極めて理想主義的な性善説に立脚した貴族的な自然主義的主張」だとも説明する。

ラブレーの晩年の消息は詳しくわかっていないが、ちょうどエラスムスがそうであったように、旧教側からも新教側からも白い目で見られるような憂き目に遭っていたようだ。それでもその作品は今も熱い自由の精神で読者の心を打ち、権力の横暴を糾弾する。歴史家のジム・パウエル氏は「ラブレーがすたれないのは、人生への大いなる喜びゆえだ」と述べている。

2026-01-10

去勢された共和党

ランド・ポール米上院議員の寄稿(2026年1月7日付)は、大統領による独断的な軍事行動と、それを抑止できない議会の無力さを痛烈に批判する内容です。

「私の党は、大統領の言いなりになる『去勢された者たち(eunuchs in the thrall)』になってしまったのか?」という点に焦点を当てて、内容を日本語で要約・解説します。


1. 寄稿の要点まとめ

ランド・ポール議員は、主に以下の3点を主張しています。

  • 憲法上の原則: 憲法は「宣戦布告の権限」を大統領ではなく、明確に連邦議会に与えている。ベネズエラの首都を爆撃し政権を転覆させる行為は紛れもない「戦争」であり、議会の承認なしに行うことは憲法違反である。

  • 目的は手段を正当化しない: ポール議員自身、ベネズエラの社会主義体制を強く批判しているが、「社会主義が邪悪であること」と「大統領が独断で戦争を始める権利があること」は別問題である。

  • 議会の職務放棄: かつての建国の父たち(ジェファーソンやマディソン)は、行政(大統領)が最も戦争を好む性質を持つと予見し、議会にブレーキ役を託した。しかし、現在の議員たちは責任を問われることを恐れ、その権限を自ら大統領に差し出してしまっている。


2. 「去勢された者たち」という比喩の背景

ポール議員が「自分の党(共和党)は、大統領に支配された去勢された者(宦官)の集まりになったのか」と問いかけているのは、現代の政治における「チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)」の崩壊を象徴しています。

なぜ「去勢された」と表現したのか?

  • 権力の喪失: 歴史的に、議会は予算や宣戦布告を通じて大統領をコントロールする「牙」を持っていました。その牙を自ら抜き、大統領の決定に無批判に拍手するだけの存在になったことを、生殖能力(=自律的な生命力・権限)を失った「宦官」に例えています。

  • 党派性の優先: 本来、議会は大統領がどの政党出身であれ、その行き過ぎを監視すべきです。しかし、現在の議員たちは「同じ党の大統領だから」という理由で、憲法違反の疑いがあっても沈黙し、盲従していると批判しています。


3. 歴史的なデータと現状

ポール議員の危惧を裏付けるデータとして、以下の背景があります。

項目内容
正式な宣戦布告1942年(第二次世界大戦)を最後に、米国は一度も正式な宣戦布告を行っていません。
大統領による軍事介入朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク、アフガニスタンなど、多くが議会の明確な宣戦布告なし(または曖昧な権限委譲)で実行されました。
AUMF(武力行使容認決議)2001年以降、議会は大統領に広範な軍事権限を与える決議を連発し、それが現在も軍事行動の「空白の小切手」として利用されています。

結論

ポール議員の問いに対する答えは、「議会が自らの憲法上の義務よりも、党利党略や政治的な保身を優先している」という厳しい現状認識に基づいています。彼は、大統領を縛る「憲法の鎖」を再び手にするよう、同僚議員たちに猛省を促しているのです。

(Geminiを利用)
Has my party become 'eunuchs in the thrall' of the president? | Responsible Statecraft [LINK]