ミーゼス研究所の記事(ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスによる「利子率」の理論)について解説します。
ミーゼスの利子論は、彼の経済学体系(人間行為学)の中でも非常に独創的な部分であり、「純粋時間選好説(Pure Time-Preference Theory)」と呼ばれます。彼は、利子を単なる「お金の価格」ではなく、人間の行動に深く根ざした「時間の価値」として定義しました。
主なポイントは以下の通りです。
1. 「利子」の正体は「時間選好」
ミーゼスによれば、利子は「資本」が生み出す報酬でも、政府がコントロールすべき数字でもありません。それは、「現在の満足を、未来の満足よりも高く評価する」という人間の普遍的な心理(時間選好)から生じるものです。
現在財と将来財: 「今すぐ手に入る100万円」は、「1年後に手に入る100万円」よりも価値が高いと誰もが感じます。
プレミアム(上乗せ): 将来まで消費を待つ(貯蓄する)ためには、その「待つこと」に対する対価が必要です。この「現在」と「未来」の価値の差額が、利子の本質的な源泉です。
2. 「根源的利子(Originary Interest)」
ミーゼスは、市場の利子率の土台にあるものを「根源的利子」と呼びました。
これは、すべての人間が持つ「未来より今を優先したい」という度合いを反映しています。
社会全体で人々が「もっと将来のために蓄えよう」と思えば(時間選好が低くなれば)、根源的利子は下がり、より長期的な投資(工場建設や研究開発など)が可能になります。
3. 利子率が果たす「経済の調整」機能
利子率は、市場における「貯蓄(供給)」と「投資(需要)」を調整する羅針盤の役割を果たします。
正しい信号: 利子率が低いということは、人々の貯蓄が十分にあり、将来に備えているというサインです。これを受けて、企業家は長期的なプロジェクトを開始します。
資源の配分: 利子率は、どのプロジェクトが実行価値があり、どれが資源の無駄遣いであるかを振り分けるフィルターになります。
4. 中央銀行による介入の危険性
ミーゼスは、中央銀行(政府)が人為的に利子率を操作することに強く反対しました。
偽の信号: 中央銀行が通貨を増発して利子率を無理やり下げると、企業家は「貯蓄が十分にある」と誤解し、本来なら採算の合わない過剰な投資(誤投資:Malinvestment)を始めてしまいます。
景気循環(バブルと崩壊): この偽の好景気はいずれ行き詰まり、大規模な不況(バブル崩壊)を招きます。これが「オーストリア学派の景気循環理論」の核となる考え方です。
5. 結論:利子は「文明の尺度」
ミーゼスは、時間選好が低く、利子が低い社会ほど、人々が未来に投資できるため文明が発展すると説きました。逆に、将来が不安で「今さえ良ければいい」と考える社会では利子率が高騰し、資本が食いつぶされて社会は衰退します。
まとめ:
ミーゼスにとって利子とは、「人間の時間の使い道に対する主観的な評価」が市場で表現されたものです。それを人為的に操作することは、経済の羅針盤を壊し、破壊的な不況を招く行為であると警告しています。
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