リバタリアン研究所(The Libertarian Institute)に掲載されたオスカー・グラウ(Oscar Grau)氏による記事「陰謀の人間行為学(The Praxeology of Conspiracies)」の要約は以下の通りです。
この論考は、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスが提唱した「人間行為学(プラクシオロジー)」の視点から、歴史における「陰謀」の正当性と分析手法を考察しています。
1. 人間行動学と陰謀
人間行動学は、人間が特定の目的を持って意識的に行動するという「行動の公理」に基づいています。人間は常に現状よりも満足度の高い状態を目指して行動し、その過程で周囲の出来事に影響を与えようとします。著者は、「複数の個人が共通の目的(利益)のために秘密裏に協力すること」を陰謀と定義し、これは人間行動の結果として極めて自然な現象であると述べています。
2. 「陰謀論」という言葉による排除への批判
現代では「陰謀論者」という言葉が、権力側の公式見解に異を唱える人々を社会的に排除し、信用を失墜させるための武器として使われています。しかし、ハンス=ヘルマン・ホッペの言葉を引用し、「歴史上の出来事の多くは、特定の個人やグループが意図した結果である」と指摘します。これを否定することは、歴史を「理解不能な偶然の積み重ね」とみなす不合理なことだと批判しています。
3. 歴史分析の手法:探偵のように調査せよ
マレー・ロスバードの教えを引き、歴史を分析する際は「公式発表」を鵜呑みにせず、探偵のような手法をとるべきだと主張しています。
「カネの流れを追え(Follow the money)」: 誰がその政策や出来事から利益(富や権力)を得るのかを特定すること。
動機の解明: 権力者が自分たちの犯罪や過失を隠蔽しようとするのは当然であり、その裏にある動機を暴くことが歴史研究の重要な役割である。
4. 陰謀分析の限界と注意点
著者は、すべての陰謀説を肯定しているわけではありません。「悪い陰謀分析」の例として、ロスバードの言葉を借りて以下の点に注意を促しています。
巨大な単一の陰謀という幻想: すべての出来事を一つの万能な黒幕グループに結びつけるのは非現実的である。
競合する勢力: 実際には複数の権力ブロックが時に協力し、時に争っており、世界は一つのグループによって完全にコントロールされているわけではない。
5. 結論
リバタリアンの視点では、国家自体が一種の「犯罪組織」とみなされます。したがって、支配エリートが常に何らかの陰謀(密議や権力維持の工作)に関わっていると考えるのは論理的に妥当です。
「陰謀」をまるでユニコーンを信じているかのようにあざ笑うのではなく、経済学や人間行動学の知識を動員して、事実に基づいた厳密な調査を行うことこそが、真実の歴史を明らかにする道であると締めくくっています。
0 件のコメント:
コメントを投稿