ジャレド・ピーターソン
(2023年3月10日)
ウクライナ戦争の状態についていろいろ読もうとしても、プロパガンダや明らかな嘘の霧を切り裂くのは至難の業である。しかし少しずつ、断固たる、じっくりとした、すり減るような、痛みを伴うロシアの勝利という図式が浮かび上がってくる。ウクライナ人の死傷者はほぼ間違いなく、耐えられず維持できない水準に達している。最も近い推測では25万人の死傷者が出ており、膨大な人口からなるロシアよりもケタ違いに多い。ウクライナは男性の若者世代を失いつつあり、すべては衰退する米国の世界覇権の支えとなっている。
As Bakhmut starts to fall, the American Thinker looks at US policy on the war in Ukraine. https://t.co/ECVZlDWgrZ
— John Moran (@RueDaungier) March 11, 2023
米国の政策を動かしている、悪質で混乱した犯罪的なほど無謀な新米どもは、この破壊的で非常に危険で勝ち目のない紛争を意図的に長引かせているが、ウクライナの破滅と若者の大量死には無関心であり、国務省やペンタゴン(国防総省)の廊下を歩く者にとっては単なる大砲の餌に過ぎない。この戦争の最終問題となるかもしれない、想像を絶する結果〔核戦争〕にも無関心である。
もしキッシンジャー(元米国務長官)や他の多くの人々が提案した、中立で北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないウクライナが、ロシアの合理的な要求どおり2021年に米国に受け入れられていたら、そしてウクライナが米国の指示により、ドンバス地方のロシア語話者とロシア民族に対する8年間の米主導の戦争をやめ、ミンスク2を履行していたら、この戦争は起こることはなかっただろう。
ウクライナが中立を守り、ウクライナの国境内に米国の兵器設備はなく、キエフによるドンバスの住民への無慈悲な迫害は終わり……そして結果はこうだ。戦争は起きない。
しかし米国の軍産複合体は戦争を望み、それを実現した。その目的はベトナム戦争のような泥沼でロシアを疲弊させ、弱体化させることだ。こうして、米国ネオコン(新保守主義者)インテリの妄想に従えば、米国にノーと言える二つの国〔ロシアと中国〕のうちの一つが、ネオコンの夢である米国の地球上の単独支配を妨げる国の候補から外れることになる。
米国が引き起こしたこの戦争の結果は、米国のネオコンが夢見るようなものとは大きく異なるかもしれない。ロシアは天然ガスやその他の重要な資源を求める新たな顧客がアジアに現れ、通貨ルーブルは依然として強く、国民の80%が自国政府を支持している。欧州、とくにドイツの経済は、米国の液化天然ガスのコストが、悪魔のようなロシアのパイプラインガスのコストを大幅に上回っているために自由落下しており、新興諸国BRICSはアジアや南半球で新しい貿易ルートや支払い方法を開発し、世界の基軸通貨としてのドルを脅かす。
米国の軍産複合体が30年にわたり行ってきた、自国に対する不必要な攻撃的行動によって脅威を感じているロシアとの核戦争の危険性である。
ロシアが実際に脅威を感じてきた、米国の軍産複合体による30年にわたる不必要な攻撃的な行動には、以下のものがある。
- NATOの執拗な東方拡大。これはロシアがドイツ統一を受け入れ、東欧から軍隊を撤退させ、ワルシャワ条約を解消すれば、東方拡大は決して起こらないという1990年に西側諸国の指導者が行った明確な約束に反している。
- 2008年のウクライナとグルジア(ジョージア)へのNATO加盟の誘い。これは当時から、ロシアにとってまったく受け入れがたいものであることがよく知られていた。1962年にソ連がキューバを同じように自陣に引き入れようとしたことが米国にとってそうであったように。
- ウクライナの民主的な選挙で選ばれた親ロシア派の大統領を退陣させた2014年のクーデターに、米国が深く関与していた。
- 米国がポーランド、バルト三国、ルーマニアを含む新NATO加盟国に高度な兵器設備を設置した。
- バイデン政権の2021年、ウクライナを事実上のNATO加盟国として扱った。
ロシアが2022年2月24日に19万人の軍隊をウクライナに送り込んだ動機は、前述の脅威の認識と、腐敗したキエフ政権によるドンバスの住民に対する8年間の戦争だった。ロシアのウクライナへの進出は欲望に満ちた欧州征服の第一歩だとする主張は、滑稽で見え透いた嘘である。それを口にする人は、少しも信じていないし、1991年12月のソ連崩壊以降、ロシアが欧州に攻撃的な脅威をもたらすと信じていた国際関係学の学識ある研究者は一人もいない。ウクライナでロシアが世界征服を企んでいるという主張は、もしそのようなプロパガンダが西側メディアによって至るところで流布され、その結果、不注意でほとんど意識のない国民に丸呑みされていなければ、笑い話になるはずだ。
紛争の動機とされるものについてのメディアの嘘と、その嘘を暴くことになる適切な歴史についての理解しがたい完全な沈黙は、戦争自体の進行と政府に関する報道にも反映されている。
主流の報道から判断すると、ロシアはつねに負け続け、血を流して死に、敗北は大きく、勝利はごくわずかで、軍備と弾薬はほぼ使い果たし、敵よりも大量の犠牲者を出し、戦争の結果にかかわらず、軍事力として大きく弱体化しているのである。ある日、バハムートは軍事的に「無意味」だと言われ、次の日には、バハムートが陥落すれば西方へのロシアのさらなる征服への道が開かれるため、最後の一人になるまで死守されると言われる。ウラジーミル・プーチン(露大統領)は、がん、パーキンソン病、認知症で死にかかっている。プーチンは不人気で、殺されるか退陣させられそうで、敵に囲まれている、などなど。
このすべては、西側エリートとその御用メディアによる必死のプロパガンダである。連中は、自分たちが引き起こしたウクライナ戦争が大惨事になりつつあることに、徐々に気づき始めている。
戦争が続いている間、米政府がノルドストリーム・パイプラインを爆破したという現実的な可能性が浮上し、西側の重要な指導者たちの額に玉のような汗が浮かび始めている——これは歴史上最も巨大なテロ行為の一つとなるだろう。そして、忘れてはならないのは、このテロ行為は単にロシアに対してだけでなく、米国の同盟国であり、パイプラインが産業競争力と国民の幸福の鍵であったドイツに対しても行われたことである。もしこの驚くべき行為がバイデン大統領のホワイトハウスで行われたとしたら、NATO、米欧関係、米政府、世界における米国のイメージにどのような影響を与えるだろうか。
西側諸国はウクライナで方針を転換する必要がある、しかも迅速に。勝てない戦争を長引かせ、過去の失策に執着し、ロシアにわざと孤立感と脅威を与え続ければ、悲劇的に消耗し破壊されたウクライナ人の代わりにNATO軍を直接投入することでしか戦争を継続できない状況に近いことに気づくだろう。
その方法(NATO軍の投入)には、文明滅亡の深刻な可能性がある。なぜなら、通常の戦場で何が起ころうとも、ロシアはウクライナが米国の広大な軍事基地としてその玄関口に置かれることを許さないからである。
The US’s March of Folly in Ukraine - American Thinker [LINK]
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