ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年3月6日)
米国のウクライナ政策に対する国内支持率に関する最近の世論調査は、明らかに複雑な様相を呈している。バイデン政権が財政・軍事援助や軍事情報共有を通じてウクライナの戦力を支援する取り組みについては、米国人の過半数が依然として支持している。
Ted Carpenter on public opinion: The American people do not exhibit much patience regarding overseas crusades that produce inconclusive results, much less undeniable failure. https://t.co/GaqOr2s3Uy
— Responsible Statecraft (@RStatecraft) March 7, 2023
しかし、その水準は2022年末の世論調査と比べても低下しており、2022年2月のロシアの侵攻直後に存在したきわめて高い支持水準からは大幅に低下している。
米国民の世論は、第二次世界大戦以降の米国の過去の軍事行動に見られるような下降線をたどっているようだ。しかし今回は、米軍が直接戦闘に参加しておらず、ましてや死傷者が出ていないにもかかわらず、支持率の低下が起きている。ウクライナ紛争が始まって1年も経たないうちに、戦争疲れが強まっていることは、政府の政策に対する国民の支持が非常にもろいことを警告するシグナルとなるはずである。
2023年2月15日のAP通信・シカゴ大学NORC研究所の世論調査では、米国人の48%がウクライナへの米国製武器の供与に賛成していることが判明した。29% が反対し、22% が「賛成でも反対でもない」と答えた。戦争が始まって3カ月も経たない2022年5月には、ウクライナに武器を送ることに60%が賛成し、反対はわずか19%だった。
ウクライナへの資金援助に関する態度も、より緩やかではあるが、同様の低下パターンをたどっている。2月のAP世論調査では、援助賛成派の意見は、もはや過半数どころか、多数の支持すら得られないことがわかった。37%が援助の継続を支持し、38%が反対している。それ以前の5月の調査では、44%が援助に賛成し、32%が反対していた。
また、ロシアへの経済制裁を支持する声にも若干の変化が見られた。63%というかなり高い支持率を維持しているが、これは5月の71%から低下している。
政府のウクライナ政策のあらゆる側面で国民の支持が徐々に低下していることは、今後問題になりそうな展開である。
とはいえ米国の指導者たちは、ウクライナのために米国の関与を強化するよう決意しているようだ。米国はすでにウクライナに豊富な高性能兵器を提供しており、ロシアへの挑発が強すぎるという理由で除外される品目のリストは減り続けている。米国の援助は、小型武器と弾薬の供給から始まり、ジャベリン対戦車ミサイルなどの武器に発展した。そして今、米国はエイブラムス戦車を戦場に送り込んでいる。ウクライナ軍がロシアの標的を攻撃する際の指針となる軍事情報を共有する姿勢も、着実に強まっている。
ウクライナにF16戦闘機を供与する計画は「今のところない」と主張しているが、非常に挑発的な手段である同戦闘機の供与も決して否定はしていない。米政府首脳は、代理戦争を北大西洋条約機構(NATO)とロシアの直接戦争に発展させようと躍起になっている。
ウクライナの聖戦に対する国内の支持が徐々に低下していることは、米国の過去の戦争、とくに朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争のパターンを踏襲している。いずれの場合も、当初は政府の介入に対する国民の熱意は非常に高かった。しかしその熱意は急落し、明確な勝利が見えないまま作戦が長引いたため、激しい幻滅に終わった。ウクライナの戦いも、同じような結果になりそうだ。
1950年6月下旬、ハリー・トルーマン大統領が北朝鮮の猛攻から韓国を守るために米軍を派遣した際、米国人の78%がこの作戦を支持した。8月に行われたギャラップ社の調査では、「介入は間違いだった」とする回答はわずか20%だった。1950年末に共産中国が参戦してからは、世論は大きく変化した。1951年2月初旬に行われたギャラップ社の世論調査では、トルーマンの決断は誤りだったと考える人が49~41%と多数を占めたのである。その後、政府の立場への支持は緩やかに回復したが、介入支持の感情が50%を超えることはなかった。
ベトナムへの介入に関する世論は、さらに顕著な下降線をたどった。米国民は、1965年に南ベトナムに地上軍を派遣するというリンドン・ジョンソン大統領の決定を59%対25%と強く支持した。しかし1967年1月には、賛成は50%、反対は37%にまで落ち込んだ。1969年1月、リチャード・ニクソン大統領が着任した時点では、戦争に賛成する人は39%しかおらず、52%が反対していた。1973年1月、パリ和平協定が締結され、ベトナム戦争への米軍の直接関与が終わったときには、戦争賛成派は29%にまで落ち込んでいた。
ジョージ・W・ブッシュ大統領は、イラク政策に関して、さらに急速な支持率の急落に遭遇した。2003年3月24日のギャラップ/USAトゥデイ/CNNの世論調査では、3月19日に開始された米主導のイラク侵攻を支持する米国人は72%だった。反対はわずか25%だった。しかし2004年夏には、さまざまな調査ですでに半数以上が「米国の介入は誤りだった」と考えていた。
〔2001年〕9月11日のペンタゴン〔米国防総省〕と世界貿易センターへのテロ攻撃後、アフガンへの武力行使に対する当初の支持は、イラクへの軍事行動への支持よりもさらに偏ったものだった。2001年11月には90%を超える支持率だった。その後、イラクに対する国民の意識に比べれば明らかに緩やかだったものの、高みから容赦ない下落が始まっている。2004年、アフガン作戦への支持率はまだ72%であり、2014年になって初めて、対反乱・国家建設作戦に反対する米国人の数が賛成を上回った。
イラクとアフガンへの介入に対する好意的な感情は、長期的にみてもあまり良いものではなかった。2021年8月のAP/NORCの調査では、米国人の62%がアフガン戦争は戦う価値がなかったと考えており、イラク戦争については63%だった。
政府が選択した戦争について、繰り返し(時には急速に)戦争疲れが生じている事実は、バイデン政権への強い警告となるべきだろう。米国民は、結論の出ない、ましてや明らかな失敗をもたらす海外の聖戦に、あまり忍耐力を示さない。米国はロシアの侵略を退けるために「必要な限り」ウクライナを支援するというバイデン大統領の公約は、米国民が喜んで引き受けたがらない約束手形を発行しているのかもしれない。
Is weakening support for Ukraine war following a historical pattern? - Responsible Statecraft [LINK]
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