2023-03-06

戦争を拒んだ大統領

ロン・ポール研究所上級研究員、アダム・ディック
(2023年2月22日)

ニュース解説「ロン・ポール・リバティ・リポート」の火曜日(2月21日)のエピソードで、ホストのロン・ポール氏〔元米下院議員〕は視聴者から寄せられた質問に答えた。その中でポール氏は、以前同氏が称賛したグローバー・クリーブランド大統領が、米国が戦争に参加するよう求める議会の圧力に立ち向かった事例があることに言及した。
ポール氏はその事例について詳しく言及しなかったが、クリーブランドが行ったのは、キューバの反乱を助けるという名目でスペインと戦争することを拒否することだった。

歴史家のヘンリー・グラフ氏は、クリーブランドの外交政策に関するミラー研究所の記事で、この問題に簡単に触れている。グラフ氏はこう書く。

キューバ問題では、クリーブランドは中立を保ち、スペインの支配に対する暴動を支援することを拒否し、代わりにスペインが徐々に〔キューバを〕独立に導くような改革を採用するよう促したいと考えた。この問題では、キューバ反乱軍の交戦権を認めるようクリーブランドに求める決議を採択した上院と対立することになった。議会はキューバの独立を認めると脅し、大統領に逆らおうとした。これに対してクリーブランドは、そのような決議は大統領の権限を簒奪するものであると、きっぱりと言い放った。この問題は、2期目終了後も解決されないままであった。

アイヴァン・エランド氏は『ラシュモア山の大統領像を彫り直す』という洞察に満ちた本の中で、クリーブランドを米国人の歴代大統領の中で2番目に優れた人物に位置づけている。平和、繁栄、自由をテーマにした歴代大統領のランキングだ。エランド氏は著書の中で、次のような補足説明をしている。

1896年、クリーブランドは、後継者のウィリアム・マッキンリーとは異なり、スペイン帝国に対するキューバの反乱をめぐってスペインとの戦争を回避し、介入主義を求める議会や世論の圧力に抵抗した。クリーブランドは、このような戦争によって政治的に利益を得ることができたかもしれない。なぜなら、1890年代の経済不況から米国人の意識を遠ざけることができたからである。しかし、代わりに正しいことをする多大なコストを背負った。

エランド氏が示唆するように、1897年にマッキンリーがクリーブランドに続いてホワイトハウスに着任した後、状況は大きく変わった。1898年、マッキンリーは米国を米西戦争に引きずり込み、米国が帝国に移行した時期をはっきり示した。

エール大学のウィリアム・グラハム・サムナー教授は、米西戦争終結直後に行った演説「スペインによる米国の征服」の中で、米国とその政府のあり方を変えた米西戦争の重要性をよくとらえている。サムナーは、介入主義的な外交政策の本質を理解するうえで今日でも重要なこの演説の冒頭で、米西戦争に勝利した米国が帝国主義的な道を歩み、米国の「破滅」を招くという主張を展開している。

この一年間、国民はスペインの描写やスペインのやり方に慣れ親しみ、スペインの名前はある種の明確な概念や政策の象徴となった。一方、米国の名前は、私たちにとってつねに、ある状態、一連の考え方や伝統、社会的・政治的問題についての見解の象徴であった。

スペインは、近代帝国主義国家の中で最初の、そして長い間最も偉大な国であった。米国は、その歴史的起源、伝統、原則によって、そのような国家に対する反乱と反動の代表的存在である。私は、現在提案されている、拡張と帝国主義と呼ぶ行動の仕掛けたものによって、我々が米国の象徴の最も重要な要素のいくつかを捨て、スペインの象徴の最も重要な要素のいくつかを取り入れていることを示すつもりである。

我々は軍事的な衝突ではスペインに勝ったが、思想と政策の分野ではスペインによる征服に屈しているのである。膨張主義と帝国主義は、スペインを現在の位置に導いた、古い国家繁栄の哲学にほかならない。これらの哲学は、国民の虚栄心、国民の愚かさに訴えるものである。それらは、とくに最初に見たとき、そして最も表面的な判断において、魅惑的であり、したがって、大衆の与える効果が非常に強いものであることを否定することはできない。しかしそれらは妄想であり、それに抵抗できるほど頑健でない限り、我々を破滅へと導くだろう。いずれにせよ、1898年という年は米国の歴史上、大きな画期の年である。

米西戦争から125年、マッキンリーがとった帝国主義の道は、クリーブランドの自制心とは対照的に、米国の大統領たちによってさらに何度も選ばれてきたのである。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : When President Grover Cleveland Rejected Congressional Pressure for War against Spain [LINK]

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