国際政治学者、アンドリュー・ベイセヴィッチ
(2023年3月20日)
ジョージ・W・ブッシュ大統領が米軍にイラク侵攻を命じてから20年、私たちは今、あの紛争がもたらした結果についてやっと気づき始めたところである。誰が勝ったのか。米国でないことは確かである。
"Who won? Well, not the United States, that’s for sure."
— The American Conservative (@amconmag) March 20, 2023
By Andrew J. Bacevich:https://t.co/YZrTjmwWZv
イラク戦争への直接的な関与を避けた中華人民共和国が、勝利の栄冠を手にしたように見える。中国はイラク戦争に直接関与することを慎重に避けたのである。中国が選択したのは、当たって砕ける戦争ではなく、外交であった。その努力は今、報われる兆しを見せている。
ブッシュとその部下が作り出したプロパガンダの霧を抜けると、「イラクの自由作戦」はイラク人の解放とはほとんど関係がなかった。実際の目的は、ペルシャ湾で誰が主導権を握っているかという疑念を打ち砕くことであった。米国は9・11の屈辱(19人のハイジャック犯による残忍な攻撃を防げなかった)を味わったことで、地域的優位性が疑われるようになった。(イラク大統領)サダム・フセインに素早く決定的な勝利を収めれば、米国に牙をむく国家や集団に教訓を与えることができる。
しかしこの戦争はブッシュ政権の脚本どおりにはいかなかった。米国が被った具体的な犠牲、すなわち何千人もの米軍兵士の死、負傷、身体切断、そして何兆ドルもの出費について、改めて説明することは差し控えたいが、何も利益をもたらさなかった。米国のイラク侵攻は、1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻、1990年のサダム・フセインによるクウェート併合と並ぶ、現代の自業自得のランキングに名を連ねていることは言うまでもない。
戦争の副次的影響を正確に測定することはさらに難しい。しかし少なくとも、中東を不安定化し、米国政治に悪影響を及ぼしたことは事実である。簡単に言えば、この無謀な戦争に乗り出した米国の無謀さが、過激派組織「イスラム国(ISIS)」の出現とドナルド・トランプ氏の国政進出に大きく貢献したのである。
中国は慎重にも、米国の愚行への道を邪魔しないことを選択し、今や米国の犠牲の上に利益を得る立場にあることに気づいた。中国がサウジアラビアとイランの国交回復を仲介したことは、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、「誰にも予想できなかった、大混乱の展開」の一つである。
あるいは、ペルシャ湾での軍事的覇権を追求する米国の強引なやり方が生み出した混乱を、中国が自らに有利になるように利用する、最も賢明な方法の一つかもしれない。
この中国主導の平和構想が、果たして平和に近いものをもたらすかどうかは、まだわからない。しかしそれでも、心理的な影響は大きい。タイムズ紙は、米国は「重大な変化の瞬間に傍観者であることに気づいた」とし、中国は「突然、新たなパワープレーヤーに変身した」と報じている。
ここにはかなりの誇張表現がある。傍観者だろうか。そんなことはない。実際、国防総省は中東全域に基地を置いているが、中国はほとんど置いていない。とはいえ、米国にとってきわめて重要な世界の一部で、米国人以外の人間が主導権を行使することは、米国の権力者にとって心外なことである。
それでもなお、この問いには価値がある。中国の不意打ちの反撃は、米国に検討する価値のある機会を提供するのではないか。米国が、米国の利益にかない、米国の価値観を反映した地域秩序の確立を期待してイラク戦争に踏み切ってから20年、そろそろ次の段階に進むべきときなのかもしれない。自国の安全と繁栄にとって、ペルシャ湾の重要性を見直すべき時なのだろう。
中国の習近平国家主席は、この地域を取り巻く古くからの敵対関係を整理する責任を負いたいと考えているのだろうか。それなら、やらせてみたらどうだろう。ペルシャ湾の石油は、中国のほうが米国よりはるかに必要としているのだから。
米軍がイラクに進駐してから20年という節目は、「我々は失敗した」という事実を認識する絶好の機会かもしれない。米国が撤退し、中国がどんな代償を払い、どんな重荷を背負うことになるのか、試してみることにしよう。それは興味深いものになるはずだ。
And the Winner Is... - The American Conservative [LINK]
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