官民ファンド、産業革新機構のお粗末なベンチャー投資実績が明らかになった矢先、同機構の支援を受けて経営再建中の液晶メーカー、ジャパンディスプレイ(JDI)が4千人規模の人員削減を検討していることがわかりました。
大胆な経営判断などとほめる人はいないはずです。設立5年、前期まで3年連続で最終赤字に陥っているにもかかわらず、抜本的な構造改革に踏み切るのはこれが初めてなのですから。遅すぎたというべきでしょう。
日経電子版の記事で、決断が遅れた背景には官主導の経営体制があると指摘しています。1年半近く前の2016年3月にJDIが国内外の工場の一部停止や早期退職の募集を実施した際、経済産業省が「待った」をかけたそうです。雇用拡大を掲げる安倍政権の経済政策への批判を恐れたためです。
もしこのとき雇用維持にこだわらず、改革に着手できていたら、今ごろはもっとましな経営状況になっていたかもしれません。しかし政府の圧力で先延ばししたために、外国勢との競争が厳しさを増すなか、結局、大幅な雇用削減に追い込まれたのです。
どの国でもたいてい、政府は雇用の維持・拡大を政策に掲げ、経済合理性に基づく人員削減に反対します。それは短期では労働者にとって救いかもしれません。しかし長期ではむしろ労働者を不幸にします。
経済合理性に基づかない企業活動は決して長続きしません。職を失うのはつらいことですが、そのタイミングが遅れるほど、新しい職探しは難しくなります。
JDIの4千人規模の人員削減は海外が中心で、国内は250人程度の早期退職募集にとどまるといいます。いまだに政治的な配慮を感じないでもありません。官主導の経営体制が変わらない限り、真の改革は難しそうです。(2017/08/09)
0 件のコメント:
コメントを投稿