2018-08-05

政治で社会は変わらない

政治のニュースを読んだり見たりするのは楽しいものです。総理の座をめぐる権力抗争、国会の駆け引きなどのドラマから、誰と誰とが不仲だとかいうゴシップ、たまに飛び出す失言やスキャンダルまで。話題にこと欠きません。

しかし話題が政局や政界を離れ、本業の政策のことになると、たちまちうんざりします。最近だと、補助金とワンセットの貿易政策を誇らしげに自由貿易と呼んでみたり、失業者を増やす最低賃金の引き上げで格差を是正すると主張したり……。政治家が本業さえやらずにいてくれたらどんなにいいことかと、思わずにいられません。

でも昔は池田勇人首相が決めた所得倍増計画のおかげで、日本は高度経済成長を遂げたではないか、と思う人がいるかもしれません。もし政治家が号令をかけるだけで経済が発展するものなら、ソ連は崩壊したりせず、今ごろ経済大国になっていたはずです。

社会を豊かにするのは政治家ではなく、企業家です。高度成長を成し遂げたのは、戦争の焼け跡から立ち上がった企業家たちでした。所得倍増計画が描いたのは日本の重化学工業化ですが、高度成長の実際の主役は洗濯機、冷蔵庫、テレビといった家電製品や自家用車でした。これらは女性の家事の負担を軽減し、家族に新しい娯楽をもたらすという社会変革を起こしました。

今も変わりません。携帯端末、交流サイト(SNS)、ライドシェア、民泊、仮想通貨……。次々と生まれるスタートアップ企業は、想像もしないような形で、社会を便利で豊かにしていきます。むしろ政治は「ルール整備」という名目で変化を遅らせています。

個性あふれる政治家たちが演じるショーは楽しみましょう。せっかく税金を払っているのですから。しかし社会を変えるのは彼らではありません。今この瞬間も世界中でビジネスチャンスをうかがう、多数の企業家たちです。(2017/08/05

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