「利益をたくさん出せればうれしいが、それが第一の目標になるとずれていくと思う。最短かつ最効率で利益を得る会社が、人に喜ばれるとは思えない」
著名コピーライターの糸井重里さんが社長を務める「ほぼ日」を株式上場させる際、日経電子版のインタビューで発言し、話題になった言葉です。先日、Yahoo!ニュースが週刊エコノミストと共同制作した記事でも触れられていました。
糸井さんの言葉に共感する人は、ビジネスマンでも少なくないと思います。けれども、別の見方もできます。
資本主義経済で、会社が利益をたくさん出す方法は一つしかありません。お客さんにたくさん喜んでもらうことです。多くのお客さんが、コストを上回る値段でもぜひ買いたいと思い、買って満足するような製品・サービスを提供することです。
だとすれば「利益第一」は同時に「顧客第一」であり、悪いことではありません。良いことです。
「最短かつ最効率で」利益を得ることは、お客さんをその分喜ばせることでもあるので、良いことです。災害の影響で食料品や日用品が不足し、困っているとき、コンビニやスーパーがすばやく営業を再開して商品を売ってくれ、ほっとした経験のある人は少なくないはずです。
糸井さんは日経電子版のインタビューで「どこかにいる獲物を一網打尽に狩って、大もうけしたというやり方は僕らは得意ではない」と話していましたが、そんなやり方で生き残っているまともな会社は一つもないでしょう。会社は一度きりでなく、お客さんに繰り返し喜んでもらわなければ続かないからです。
残念ながら、一部には政府の規制で守られ、お客さんが欲しいと思わないような高い値段、低い品質の製品・サービスを売りつけ、儲けている会社もあります。でも、それは資本主義のルールに反した例外にすぎません。
糸井さんはYahoo!ニュースの記事で「うまくいったら自分たちがちゃんと利益を得て、それを応援してくれるお客さんが一緒に喜べる」と理想を語っています。その理想は資本主義に異質なものではありません。米国の鉄鋼王で大富豪として知られたアンドリュー・カーネギーは「他人の利益を図らずして自ら栄えることはできない」という言葉を遺しています。
糸井さんの「ほぼ日」がたくさん儲かることを祈っています。それはたくさんの笑顔を意味するのですから。(2017/08/17)
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