2018-08-29

体制転換とミサイル危機

北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐり、緊張が続いています。29日朝も北朝鮮が発射したミサイルが日本上空を通過し、政府は北朝鮮を非難しました。

しかしそもそも、北朝鮮はなぜ核・ミサイル開発に固執するのでしょうか。それを理解することは問題解決の手がかりになるはずです。

結論からいえば、北朝鮮が核・ミサイル開発をあきらめようとしないのは、超大国やその同盟国による力づくの「レジーム・チェンジ(体制転換)」、つまり今の金体制の転覆を防ぐために有効だと信じているからです。それには歴史的実績の裏付けがあります。

1959年のキューバ革命で同国が社会主義国となったことに衝撃を受け、米政府は国防総省と中央情報局(CIA)が主導し、武力侵攻で革命政権の転覆を図ります。1961年4月のピッグス湾事件です。この企ては失敗しますが、翌年キューバは米国による体制転換を防ぐため、ある手段を選択します。ソ連のミサイルを自国に配備することです。

これにより米ソは激しく対立し、核戦争まで懸念されますが、からくも妥協が成立し、戦争は回避されます。キューバ危機と呼ばれる歴史的事件です。

米教育団体、自由の未来財団理事長のジェイコブ・ホーンバーガー氏はこう指摘します。「もしペンタゴン(国防総省)とCIAがキューバの体制転換を試みなかったら、キューバはソ連のミサイルを配備する必要など感じなかっただろう。ペンタゴンとCIAによる体制転換の企てこそがキューバ危機をもたらした」

経済・軍事力に乏しい第三世界の国々の支配者たちがキューバ危機から学んだのは、超大国による体制転換から身を守る最善の手段は、核ミサイルの保有だということです。今の北朝鮮もそう考え、実行に移したのです。

そうだとすれば、北朝鮮に核・ミサイルの開発を思いとどまらせる第一歩は、体制転換はしないと確約することであるはずです。しかし米国はティラーソン国務長官が北朝鮮の体制転換をめざさないと発言する一方で、ポンペオCIA長官が体制転換に前向きな意向を示すなど、腰が定まりません。日本にも主体的な動きは見えません。

北朝鮮政府が国民を圧政で苦しめているとしても、武力による体制転換が良い結果をもたらさないことは、イラクやアフガニスタンで証明されたはずです。

そもそもの原因である体制転換の脅しをやめず、北朝鮮をただ非難し、圧力をかけるだけでは、事態は改善しないどころか、むしろ逆効果でしょう。(2017/08/29

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