日銀が追加緩和を決めた2014年10月以降、一貫して反対票を投じた少数派として知られる前審議委員、木内登英氏の発言が話題になっています。
木内氏は日経QUICKニュース社(NQN)のインタビューで、日銀が掲げる2%の物価目標について「それが2%であることの根拠はこれまで何一つ示されてこなかった」と批判しています。
これには異論も出ていますが、木内氏の見方が正しいように思われます。
黒田東彦日銀総裁は2014年3月20日、日本商工会議所でその名もずばり、「なぜ『2%』の物価上昇を目指すのか」と題する講演を行い、大きく3つの理由を挙げています。(1)消費者物価指数の上方バイアス(2)金利引き下げ余地の確保(3)グローバル・スタンダード--がそれです。
(1)は、消費者物価指数には上昇率が高めに出る傾向(上方バイアス)があるので、前年比で物価安定の目標を示す場合には、「ある程度プラスの値にする必要がある」というものです。
しかし、「ある程度」と表現されているだけで、それがなぜ2%かという説明はありません。
(2)は、プラスの物価上昇率を維持することで、金利引き下げ余地(のりしろ)を確保し、 景気悪化への金融政策の対応力を高めるというものです。ここで黒田総裁は「例えば、潜在成長率が1%、物価上昇率が2%であれば、景気に中立的な金利水準は3%となります。この場合、景気悪化に対して、金利引き下げにより景気を刺激する余地がそれだけあるということになります」と説明しています。
しかし総裁自身が言うとおり、これはあくまで「例えば」の話です。なぜ2%かの説明はやはりありません。
(3)は、海外の中央銀行の多くが、以前から2%を目標とする政策運営を行っているというものです。黒田総裁は具体例として英国、カナダ、ニュージーランド、米国、ユーロ圏などを挙げています。
どの国もそうだからというのはなんとなく説得力がありますが、論理的な根拠とはいえません。実際海外でも、2%の根拠はあやふやだと批判されています。「グローバル・スタンダード」がつねに正しいとは限らないのです。
もし日銀のいう2%の「根拠」が、ここで黒田総裁が挙げたものだけだとすれば、木内氏の言うとおり、実際には根拠は何も示されていないといわざるをえません。根拠なき金融政策はいつまで続くのでしょうか。(2017/08/10)
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