国内の土地が外国人に自由に売買されるのは問題だという声が、政治やメディア界隈で強まっている。事実上、警戒の的とされているのは中国人だ。
⬜️国民民主党、外国人土地売買の規制法案を国会に提出「早く終止符を打たなければならない」https://t.co/s8FarHfOqg
— フィフィ (@FIFI_Egypt) May 13, 2023
自公よりまとも。
国民民主党は先日、自衛隊の基地周辺などを規制する今の制度だけでなく、研究施設や日本文化に関わる土地についても必要な規制を検討するとした法案を国会に提出した。
自衛隊の基地や原発など、安全保障上、重要な施設の周辺の土地をめぐっては、2022年に利用を規制する法律(重要土地利用規制法)が施行されている。しかし国民民主党は、今の法律だけでは不十分で、国内の土地が外国人によって自由に売買されるのは問題だとしている。
国民民主党は今回の法案提出について、特定の外国名に触れていないが、同党の玉木雄一郎代表は2020年5月、安倍晋三首相(当時)への国会質疑で「中国や韓国が日本の企業や土地を買収する可能性がある。経済安全保障の観点から防御策をしっかりとるべきではないか」と指摘している。
さて、中国人を事実上の標的としたこの土地売買規制案、保守系文化人らには受けがいいようだが、まったくの愚策としか言いようがない。
かりに極端な話、日本と中国が戦争(あるいは米中戦争に伴う事実上の交戦状態)になったとしよう。日本国内に中国が保有する土地はどうなるだろうか。有事となれば、土地は即座に日本政府の管理下に置かれ、日本の「国益」のために使われることになる。中国は投資したお金が無駄になる。
戦争にならなくても、中国人が日本の土地をどんどん買い占めたら由々しい事態だと心配する向きもある。産経新聞の宮本雅史編集委員は講演で、「土地を手放し、国土を守ろうとしないわれわれに問題がある。このままでは日本の領土がなくなっていく」と警鐘を鳴らしたという。
だが、「日本の領土がなくなっていく」とは取り越し苦労にすぎない。もし中国がそんな勢いで土地を大量に買い占めれば、日本政府による監視の目が一気に強まるのは間違いない。それこそ土地売買の規制や国有化が行われ、中国の手から土地が完全に奪われてしまうだろう。これも中国は大損だ。
中国は土地を失うだけでなく、おそらく日本との対立によって、貿易の利益も失うことになるだろう。
要するに、中国人が土地を買ったり、他の資産を手に入れたりして日本に投資すればするほど、それらの土地や資産は、中国の侵略や脅威に対する担保として日本が保有する「人質」として機能するのだ。
中国政府は他の集団と同じく、合理的な人間で構成されているから、何事もリターンとコストに基づいて判断する。戦争は国際世論の非難なども含め、コストが高いから、売買によって平和に土地を入手できるのであれば、そちらを選ぶだろう。これは土地を購入する中国人にとっても、売却する日本人にとっても、お互いに有益だ。
日本は土地という「人質」を取ることで、安全保障を強化することにもなる。これが真の「経済安全保障」といえる。逆に、土地買収を妨げれば、中国は武力によってしか日本の土地を手に入れられなくなり、戦争のリスクが高まることになる。
経済学者の池田信夫氏は「中国人が日本の土地を所有しても、中国政府が支配するわけではない。統治権は日本にあり、固定資産税も日本政府が徴収する。国内投資の不足している日本にとっては歓迎すべきことだ」と指摘する。そのとおりだろう。
日本はただでさえ、海外からの対内直投が極端に少ない。2020年時点の対内直投残高の対国内総生産(GDP)比率は4.9%にとどまり、201カ国・地域中の198位。日本より下はジンバブエ、北朝鮮、イラクだけという惨状だ。
投資してくれる中国人を敵視するなどもってのほか。むしろ感謝しなければならない。
<参考資料>
- China Should Be Allowed to Buy American Farmland | The Libertarian Institute [LINK]
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