ケイトー研究所シニアアナリスト、マリアン・テューピー
(2017年8月1日)
進化心理学の最近の研究によると、有権者が所得の再分配を支持するのは、狩猟採集時代の小さな社会に適するよう進化した動機づけのためだ。 再分配の経済的・政治的な詳細を理解することは、人間が自然にできることではない。しかし人間は進化の過程で、より貧しい人々や、より豊かな人々と交流してきた。この過程を通じて、与えるとき、奪うとき、分かち合うときに、うまく行動するよう動機づける神経系を築いた。
1 in 6 people would raise taxes on the rich even if they knew it would also hurt the poor to do so.
— HumanProgress.org (@HumanProgress) June 22, 2022
Why?
In a word: Envy.https://t.co/LV1vZv0eGd
人間は、祖先の目を通して現代世界を見ている。再分配に関する政治の言説には、「貧乏人 」や 「金持ち 」といった登場人物が含まれる。自分より貧しい人、豊かな人という共同体のメンバーとの付き合いを律するために進化してきた、動機というレンズを通してこれらの人物を見ているのだ。
研究チームは経済的再分配への支持・反対の論理を理解するため、思いやり、利己心、妬みの三つの動機に焦点を当てた。米国、英国、インド、イスラエルの四つの社会で、それぞれの動機が再分配への支持をどれだけ強く説明するかを検証した。
思いやりとは、自分より貧しい人を助けるために必要な感情である。私たちの祖先は、社会保険や医療保険のない世界に住んでいたので、お互いの不足分を助け合うことで利益を得ていた。隣人が飢えているときに、自分が食料を持っていれば、分けてやることでその人の命を救うことができる。その後状況が逆転し、相手が食べ物を分けてくれれば、自分の命も救われる。
研究チームは、困っている人に対し自発的に思いやりを感じる人ほど、再分配をより強く支持することを発見した。自分自身や自分の家族が恩恵を受けると考える人ほど、再分配を支持する傾向が強かった。
さらに驚くべき結果は、妬みと公正さに関するものだ。自分より裕福な人に向けられる妬みは、再分配を支持するとみられる。ライバルが何らかの活動で自分より優れていると、自分の相対的地位が下がる。人は時にライバルの優位を掘り崩すために行動する。たとえそれが第三者や、時には自分自身に害を与えるとしてもだ。
妬みとそれが生み出す悪意は社会を破壊するが、競争的なゼロサムゲームを含む祖先の世界では、意味をなすことがある。金持ちの税金を下げて貧乏人を助けるための収入を増やすか、金持ちの税金を上げて貧乏人のためのお金を減らすか、という二つの政策について、六人に一人が後者の、意地悪な選択肢を選んだのである。このように、金持ちを引きずり下ろすために貧乏人を痛めつけることをいとわないのは、個人の嫉妬心の強さによってのみ説明される。
政治的な言説や正義の理論において、公正さは重要な位置を占めている。しかし、研究で被験者の公平さに対する好みの違いは、再分配をどれだけ強く支持するかを説明しなかった。米国、英国、インド、イスラエルでも結果は同じだった。再分配への支持は、思いやり、利己心、妬みによって説明されたが、公平性によって説明されたわけではない。
(次より抄訳)
Compassion, Self-Interest and Envy Shape Redistribution - HumanProgress [LINK]
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