2022-09-08

平等ではなく、もっと不平等を!

研究者、リプトン・マシューズ
(2022年7月15日)

資本主義社会における所得の不平等は社会を破壊すると触れ回る物語が、日々あふれている。多くの人にとって、不平等は20世紀を特徴づける経済の物語であり、何としてでも回避しなければならない。しかし不平等が問題となるのは、それが特権階級を優遇する、腐敗した政策の結果である場合だけだ。実際には、市場原理による不平等こそが、とめどない進歩の源である。

市場はアイデアの質を吟味することで、消費者の求めに応える才能と眼力のある個人に報いる。政府による特権とは異なり、市場は公平に価値を見極める。自由な市場経済で成功するためには、政治的なコネは不要であり、消費者のために自分の才能を生かそうとする意志だけが成功をもたらす。

才能のある人とない人がいるので、市場では必ず不平等が生じる。しかし才能のある人は庶民の生活水準を向上させられるので、不平等が好ましい結果をもたらす可能性が高い。庶民にとって幸運なことに、才能ある個人が目標を追求することによって経済や技術の変化が起こり、長期の経済成長が促され、庶民がエリートの仲間に加わるチャンスが生まれる。

アマゾンはジェフ・ベゾスを大金持ちにしたが、何千もの中小企業に製品を世界中で販売する場を提供し、もうかるベンチャー企業に変えてきた。実際、アマゾンのストアを通じて、4万人の億万長者が輩出した。アマゾンの波及効果は非常に大きく、アフィリエイト広告の利用者にも成功を広げた。

ラスムス・ミケルセンとクリスチャン・ミケルセンは双子の兄弟で、アマゾンの書籍やオーディオブックの出版分野でパイオニアとなり、合計で150冊以上の本を出版してきた。二人はこの業界の成長に刺激され、パブリッシングライフ社を共同設立した。このオンライン教育ビジネスは、一般の人々の脱サラを手助けするものだ。双子のアマゾン書籍出版ビジネスモデルを利用し、何百人もの人々が人生を変えるような結果を得ることができるようになった。現在までにその教え子たちは、合わせて2000万ドルもの収益をあげている。

才能の不平等がなければ、アマゾンやグーグルのような超大企業は存在せず、一般人が富を創造する手段は少なくなっていただろう。不平等は社会にとって有益である。なぜなら、もし全員が平等であれば、世の中は驚くほど平凡になってしまうからだ。文化面では、シェイクスピアやピカソのような芸術・文学の才能を持つ人はいなくなるだろう。

ガリレオ、ニュートン、アインシュタインのような頭脳の持ち主がいなければ、科学に対する理解はゆがんでしまうだろう。平凡な世界での人生は危険で、粗野で、短いものだろう。パスツールやフレミングのような好奇心と才能を持ち、病気の治療法に革命をもたらした人たちが社会からいなくなれば、単純な病気で死ぬことが日常茶飯事になってしまうだろう。

さらに厄介なのは、並外れた人々がいなくなることで、通常、人が自分の状況を改善するきっかけとなる、良い嫉妬を引き起せなくなることだ。不平等がなければ、進歩はありえない。不平等がなければ、人はみな等しく才能があるということになるからだ。そしてもしそうならば、社会の進歩に必要な創造性は生まれない。

すべての人が等しく有能であるとき、どの人も優れた存在にはなりえないことを忘れてはならない。真に平等な社会とは、全員が同じように平凡で、人間の潜在能力を下回る人生を送る社会なのである。

(次より抄訳)
We Need More Inequality, Not Less | Mises Wire [LINK]

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