ミーゼス研究所編集主任、ライアン・マクメイケン
(2021年1月22日)
米国で一部の州による合衆国からの分離独立が現実味のある政策目標となり、将来の理論上の理想ではなくなってくれば、反対派はうろたえ、慌てふためくだろう。今のところ反対派は注意深く、分離独立を単に軽蔑しているだけのように見せかけている。怒りに満ちて脅しをかけ、破滅を予言するのは、その後のことだ。
If the United States breaks up into smaller pieces, how will the new nations be able to defend themselves from the likes of China? | @ryanmcmakenhttps://t.co/p4Teaytc1V
— Mises Institute (@mises) January 22, 2021
その際反対派は、分離独立などありえないというさまざまな理由を提示するだろう。賛成派は裏切り者、非国民と呼ばれるだろう。分離独立は貧困をもたらすと言われるだろう。実際、近年のスコットランドの分離独立をめぐる論争でも、そのような声が聞かれた。
議論は外交政策にも焦点が当てられるだろう。スコットランドでは外交政策のタカ派が、スコットランドの独立は英国の核軍縮につながると警告している(訳注・英国の核兵器はスコットランドのファスレーン海軍基地にある)。その意味するところは当然ながら、英国は外敵から自国を守ることができなくなるということだ。
米国でも独立運動の高まりに直面し、同じようなことを耳にする。分離独立で米国の体制が弱体化すれば、中国による北米の征服にすぐにつながってしまうという。
私たちはこれまで、北米で分離独立後の国々は、中国と衝突した場合、それぞれ独立して中国と対峙しなければならないと想定してきた。しかし、この想定はあまり良いとはいえない。これら独立諸国が相互防衛を避けるとは思えない。むしろ経験上、その逆である。
似たような成り立ちのカナダ、米国、オーストラリア、英国は一世紀以上にわたり、外交政策においておおむね結束してきた。このことに気づけば、北米に北大西洋条約機構(NATO)のような機関がたやすく生まれうるのは、明らかなはずだ。
それにもかかわらず、近隣諸国は今にも戦争に突入しそうだという話をよく耳にする。米国が国の一部でも独立させれば、そうなるのは当然だという。独立反対論者はよくユーゴスラビア戦争のような例を挙げ、民族浄化が起きると主張する。しかし北米は南・東欧ではない。北米の場合、国々は言語が共通で、生活水準が高く、戦争で失うものが多い。貿易関係も深く、広範囲にわたる。
似た成り立ちの二つの国が戦争に巻き込まれると主張するのなら、カナダがなぜ二百五年間も米国と平和を保ってきたのかを説明しなければならない。カナダが小さすぎて米国に対抗できなかったからだという人がいるかもしれない。しかし、これはカナダの外交政策が英国(1931年まで世界の大国であり、米国の友好国)によって決められていた事実を無視している。1812年の米英戦争後、英国は英国領カナダを通じ米国と陸海で広大な国境を接していたが、米国との戦争には無関心だったようである。
もし米国が小さな独立国家に分裂したら、「青い州」(民主党支持者の多い州)は「赤い州」(共和党支持者の多い州)に対抗するため、中国がタンパ湾(フロリダ州)に侵攻するのを歓迎するだろうとまことしやかにいわれる。中道左派の米国人はすべて中国の手先だと信じているような、偏執的な反中冷戦主義者には、もっともらしく思えるかもしれない。しかしそのシナリオは、カナダが中国人民解放軍にボストン(マサチューセッツ州)への侵攻を頼むのと同じくらい、ありそうにない。
(次より抄訳)
No, the Chinese Won't Invade America If Secessionists Succeed | Mises Wire [LINK]
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