経済学者、ジョージ・ライズマン
(2021年10月1日)
ナチスドイツは資本主義国家ではなく、社会主義国家だった。
この認定は、経済学者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスの数ある貢献の一つである。ナチスという言葉が、「国家社会主義ドイツ労働者党」の略称であることを思えば、ミーゼスの認定はそれほど注目されるものではないかもしれない。「社会主義」を党名に持つ政党に支配される国の経済体制が、社会主義以外の何物だと期待できよう。
The identification of Nazi Germany as a socialist state was one of the many great contributions of Ludwig von Mises. | @GGReismanhttps://t.co/NyPD9z9O0C
— Mises Institute (@mises) July 7, 2021
しかしミーゼスとその読者を除けば、ナチスドイツを社会主義国家と考える人は、事実上皆無である。それよりも、共産主義者や他のマルクス主義者が主張するように、ナチスドイツは資本主義の一形態だいう考えのほうがはるかに一般的である。
ナチスドイツが資本主義だという主張の根拠は、ほとんどの産業が一見、私的所有に委ねられていたという事実である。
しかしミーゼスが明らかにしたように、ナチスのもとでは生産手段(原材料、土地、道具、機械、建物など)の私的所有は名目上にすぎず、実質所有していたのはドイツ政府だった。すなわち、何を、どれくらい、どのように生産し、誰に分配するか、また、価格や賃金をいくらにするか、名目上の私有者がどのような配当やその他の収入を受け取ることを許されるかは、名目上の私有者ではなく、ドイツ政府が決定したのである。
ミーゼスのいう、事実上の生産手段の政府所有は、ナチスが受け入れた集団主義原理、すなわち共通善が私的善に優先し、個人は国家の目的のための手段として存在するという原理によって、論理的に暗示されていた。個人が国家の目的のための手段であるならば、当然、個人の財産もまたしかりである。個人が国家に所有されるように、個人の財産もまた国家に所有されるのである。
ナチスドイツで事実上の社会主義を確立したのは、1936年に導入された価格統制と賃金統制である。これは1933年初めの政権獲得時から行われていた通貨供給量の膨張に対応したものだ。ナチス政権は公共事業、補助金、再軍備など政府支出の膨大な増加を賄う手段として、通貨供給量を膨らませた。物価と賃金の統制は、通貨膨張の結果始まった物価上昇に対応するために行われた。
価格統制のもとでは、ある品目の供給が減少しても、自由市場のように価格を上げて収益性を高め、供給減少を食い止める作用は働かない。たとえば医薬品の供給が減少しても、値上げで採算を改善することはできない。
こうした価格統制の思わぬ影響に対処するためには、政府は価格統制を廃止するか、逆にさらなる措置、すなわち、何を、どれだけ、どんな方法で生産し、誰に分配するかについての統制を追加しなければならない。価格統制にこのような一連の統制が加われば、経済体制は事実上、社会主義化する。政府が所有権の実質的な権限をすべて行使することを意味するからである。
これがナチスによって組織された社会主義である。ミーゼスはこれを、あからさまな社会主義であるロシア型ないしボリシェビキ型の社会主義に対し、ドイツ型ないしナチス型の社会主義と呼んだ。
(次より抄訳)
Why Nazism Was Socialism and Why Socialism Is Totalitarian | Mises Institute [LINK]
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