2022-09-15

「科学に従え」の真意

経済教育財団(FEE)ウェブサイト マネージング・エディター 、ジョン・ミルティモア
(2021年4月12日)


経済学者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、科学的な主張を使って社会を形作ろうとすることの問題点を指摘したことがある。ミーゼスの示唆によれば、多くの場合、人々は単に自分たちが何をしなければならないかを他人に伝えるために科学を持ち出すのである。

ミーゼスは1947年の論文で、「政策立案者は、自分の計画が科学的で、善意あるまっとうな人々の間で異論がありえないかのように装っている」と書いた。

科学が有用な道具であることはほとんどの人が認めており、ミーゼスもその一人であることは間違いない。ミーゼスが言いたかったのは、科学は実際に私たちが何をすべきかを教えてはくれないということだ。「何をすべきか」は主観的な価値判断の領域である。科学が教えてくれるのは、事実関係だけなのだ。「科学的なべき論などというものは存在しない」とミーゼスは書いた。

ミーゼスはこう続けた。「科学は、何がどのようにあるべきで、人々が何を目指すべきかを決めることはできない。人間が価値判断で意見が分かれるのは明白な事実である。他人の計画を覆し、政策立案者の計画に従わせる権利が自分にはあると主張するのは横暴である」

ミーゼスが正しく見抜いたように、人々が「科学に従え」と言うとき、本当は「我々の計画に従え」と言っていることが多いのである。

十代の環境活動家グレタ・トゥンベリが、気候変動に関する科学に従えと言うとき、地球が温暖化していること、人間が地球の気候に影響を与えていることを認めるべきだとは言っていない。肉を食べない、飛行機に乗らない、化石燃料に課税する等々の計画を人々が採用すべきだと言っているのである。

億万長者の環境活動家ビル・ゲイツは2021年2月、肉を食べないようにする理由とその方法を説明した。

ゲイツは科学技術誌のインタビューで、牛肉1ポンドあたりの排出量は最適とは言えないと指摘し、「すべての豊かな国々は100%合成牛肉に移行すべきだと思う」と述べた。「味の違いには慣れるし、時間が経てばもっとおいしくなると言われている。いずれグリーンプレミアム(環境にやさしい分だけ割高な値段)は十分低くなり、人々の行動を変えるか、規制を利用して需要を完全にシフトさせることができるようになる」

政府は科学者の意見に耳を傾けるべきだと言うトゥンベリとゲイツの提案は、良い案かもしれないし、悪い案かもしれない。重要なのは、その提案には科学だけではなく、価値判断が含まれていることを理解することだ。

2020年に人々は、新型コロナに関し「科学に耳を傾けよ」と繰り返し言われた。しかしコロナをめぐる根本的な不一致は、科学に関するものではなかった。蔓延を抑えるためにどのような行動をとるべきか、誰が(個人か政府か)それを実行すべきか、人々に行動を強制すべきかどうかだった。

これらは倫理的な問題であって、科学的な問題ではない。健全な科学は、倫理的な問題に判断を下すのに役立つ道具に過ぎない。重要なのは、自分の計画は科学的だから従わなければならないという政策立案者に注意することだ。

(次より抄訳)
A 75-Year-Old Warning about Those Who Say ‘Listen to the Science’ - Foundation for Economic Education [LINK]

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