ライター、ブライス・グリーン
(2023年6月12日)
ニューヨーク・タイムズ紙は、ウクライナ軍の写真にナチスのシンボルがたびたび現れる理由を説明しようとする記事(2023年6月5日)で、ウクライナのナチスを軽視し、あるいは祝福する路線を続けている。タイムズ紙は、このようなイメージは「西側ジャーナリスト」を「困難な立場」に追い込むとコメントした。記事中、ウクライナの報道担当者によれば、記者たちはウクライナ兵にナチスの記章を外すよう頼んでから写真を撮ったという。
NYT on Ukraine's Nazi Imagery: It's 'Complicated' https://t.co/TVrapofYPm
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見出しはこうだ。「ウクライナの前線におけるナチスのシンボルは、歴史の茨の道を照らし出す」。タイムズの袖見出しによれば、最大の懸念は、ウクライナにおけるナチズムの証拠が「ロシアのプロパガンダをあおる危険がある」という恐れである。
「複雑な関係」
問題は、「ウクライナ軍とナチスのイメージとの複雑な関係、第二次世界大戦中のソ連とドイツ双方の占領下で築かれた関係」だという。この関係は「微妙」だとタイムズ紙はいう。プーチン〔ロシア大統領〕が非ナチ化という戦争目的を明言しているためだ。
タイムズ紙の記者トーマス・ギボンズネフ氏は、ウクライナが多くの場合ナチスのシンボルを「受け入れている」にもかかわらず、同国には非ナチ化が必要だという考えを否定する。ゼレンスキー現大統領がユダヤ人であるという理由からだ。この説得力のない議論は、ゼレンスキー氏の血筋にかかわらず、同氏が極右・ネオナチ勢力を主要構成員とする権力構造の中心に位置していることが十分に立証されているため、さらに説得力を欠く。
ゼレンスキー氏の主要な支持者の一人である〔実業家〕イーホル・コロモイスキー氏は、かつてタイムズ紙(2019年3月15日)が「ネオナチの準軍事組織」と表現し、ウクライナ軍に統合されている組織、アゾフ大隊の支援者でもあった。
これらの事実はいずれも〔ロシアの〕違法な侵攻を正当化するものではない。しかし米報道機関において重要な事実が意図的に抑制・省略されているのは明らかであり、紛争の原因や解決の可能性に関する読者の理解が損なわれている。
「プーチン擁護派」のレッテルを貼られるという絶え間ない脅威は、最高レベルのリベラルな既存組織にさえも、ゾッとするような影響を生み出している。タイムズ紙によれば、
旧来、憎悪のシンボルを非難してきたユダヤ人団体や反ヘイト団体でさえ、ほとんど沈黙を保っている。ロシアのプロパガンダを受け入れていると見られることを内心懸念している指導者もいる。
タイムズの記事は、ジャーナリストが現実を報道することに不安を感じていることを認める。記事中のウクライナの報道担当者によると、ある時、匿名の報道機関の記者が撮影前、兵士にナチスのシンボルを取り外させたという。これはジャーナリストが明らかに政治的な理由のために、現実の描写を故意に歪めたという重大な疑惑である。
ホロコーストのパイオニア
タイムズ紙は、ナチスの隠蔽を正当化する資格のある人物を見つけた。
ウクライナの歴史家であり宗教学者でもあるイホル・コズロフスキー氏は、シンボルにはウクライナ独自の意味があり、他の場所でどのように使われていたかではなく、ウクライナ人がどのように見ていたかによって解釈されるべきであると述べる。「シンボルは、地球の他の地域でどのように使われているかとは無関係に、どんな地域やどんな歴史の中でも生きることができる」
ナチスのシンボルがウクライナでどのように使われたかを「地球の他の地域」と区別することは、ウクライナのナチズムが他の場所よりも何らかの形で穏健であったことを示唆する。しかし実際には、ウクライナはユダヤ人大量虐殺の先駆けであり、推定150万人、つまりホロコーストによるユダヤ人犠牲者の4人に1人が殺された場所である。これらの殺害は主にウクライナの民族主義民兵によって行われ、ホロコーストに参加したこれら部隊の生存者は、2019年にウクライナから退役軍人の地位を与えられ、政府の給付を受けることができるようになった。
CIAのナチス
コズロフスキー氏は弁護の一環として、こうしたウクライナのナショナリストたちの戦後の反ソ連闘争に言及する。
今日、新しい世代がロシアの占領と戦う中で、多くのウクライナ人は、この戦争を第二次世界大戦中とその直後の独立のための闘いの継続とみなしている。
コズロフスキー氏とタイムズは、この「独立のための闘い」のファシスト的性格を省いている。今日ではほとんど認識されていないが、米国には西・東欧で元ナチスを訓練し、反共産主義の準軍事組織として活動させるという、大胆な政策があった。これは決して「ウクライナ独自」ではない。
ウクライナでは共産主義に対抗する民族主義運動の一環として、元ナチス親衛隊(SS)やナチスの情報部隊が米中央情報局(CIA)から支援を受けていた。今日ウクライナで見られるナチスは、これらのネットワークや組織の直系の子孫である。タイムズ紙がこの歴史に言及することを拒否したとしても、これらのシンボルは、米国が支援したナチス運動に明確にルーツを持っており、現在のナチスを擁護することは、より一層ひどいことである。
この戦争における多くの事実と同様に、ウクライナのナチス問題とその起源は、米国の企業メディアによって記憶の彼方に追いやられてしまった。印象的なのは、開戦前にウクライナのナチス問題を認める報道がいかに一般的であったか、そしてその問題が米議会で認識されていたことである。
しかしタイムズの報道で再確認されたように、米国のジャーナリストは、この戦争で正しいチームに属することが、読者に出来事の正確なイメージを提示することよりも重要だと判断した。このタイムズ紙の新たな記事は、この戦争や他の多くの戦線における米国の政策に対する合意をでっち上げるうえで、ジャーナリストが果たす役割を際立たせている。たとえそれがナチス民兵の復活を意味しようともである。
NYT on Ukraine's Nazi Imagery: It's 'Complicated' - FAIR [LINK]
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