作家、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2022年5月31日)
1960年代初め、国防総省とCIAが認可しなかったにもかかわらず、製作された米国映画がある。バート・ランカスター、カーク・ダグラス、エヴァ・ガードナー、フレデリック・マーチらが出演した『五月の七日間』という作品だ。米連邦政府における国家安全保障上層部の圧倒的な権力を題材にしている。
この映画で米軍の将軍たちは、大統領が国を破滅に導いていると判断し、国を救うには大統領を排除するしかないと判断する。計画を知った大統領は、阻止に動き出す。ケネディ大統領は原作の小説を読み、国家安全保障上層部がもたらす重大な危機を米国民に警告するため、映画化を決めた。
1970年、チリの大統領にアジェンデが選ばれた。社会主義者であるアジェンデは、米政府の激しい反ロシア、反共運動に参加する気はないことを明確にした。それどころか、ソ連やキューバなどの共産主義国と友好・平和共存の精神で手を結んだ。
米国の国家安全保障上層部は、今日と同じように激しい反ロシア感情を持っており、アジェンデを米国の国家安全保障に対する重大な脅威とみなした。同様に、アジェンデはチリでも国家安全保障に対する重大な脅威とみなされた。
そこで米国の国家安全保障上層部は、チリの国家安全保障上層部に対し、国を救うためには、民主的に選ばれた大統領を(暴力で)排除する道徳的義務があると説得にかかった。
しかし、大きな問題が生じた。チリ国軍の総司令官であるレネ・シュナイダー元帥が「ノー」と言ったのだ。チリ憲法には大統領を暴力的に追放する規定がないから、(アジェンデ大統領を排除する)計画には乗らないというのである。
そこでCIAは、首都サンチャゴの路上でシュナイダー元帥の誘拐・暗殺を企てた(シュナイダーは重傷を負い死亡)。アジェンデを大統領から暴力的に追放し、何万人もの人々を一斉検挙、処刑、レイプ、拷問し、行方不明にした。そこには二人の米国人青年も含まれていた。
CIA長官リチャード・ヘルムズは後日、米議会で証言するよう召喚された。チリのクーデターへのCIAの関与を問われると、宣誓証言で嘘をつき、否定したのである。おそらく、チリの政権転覆工作がケネディ暗殺事件(1963年11月22日)と驚くほど似ていたからだろう。
ケネディは友好と平和共存の精神でソ連やキューバと接触した。それはチリのアジェンデ大統領と同じ行動だった。皮肉なことに、映画『五月の七日間』の公開予定日にケネディは暗殺された。このため公開は延期された。
(次より抄訳)
Seven Days in May – The Future of Freedom Foundation [LINK]
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