歴史家、ライナー・ジテルマン
(2022年5月25日)
ウクライナでは自由主義系のシンクタンクや政治家がすでに戦後の計画を立てている。5月12〜13日に開いた「欧州自由フォーラム2022」は、自由主義系シンクタンクの国際組織アトラス・ネットワークが主催した。当初キエフで開く予定だったが、戦争のためワルシャワに変更された。
ウクライナ国会議員で、ゼレンスキー大統領率いる与党に所属するマリヤン・ザブロツキー氏は以前、自由主義系シンクタンクのメンバーでもあった。同氏によると、ウクライナの所得税は最近2%に引き下げられ、多くの規制や関税が廃止された。「現在、世界で最も経済的に自由な国だ」という。
何十億ドルもの国際援助が流れ込んでいることを思えば、ウクライナは歴史の例外ともいえる。苦しい戦争に見舞われる国が、かつてないほど経済的に自由になっているのだ。一時の措置として採用されたこの経済改革を、戦後も継続させることが目標だとザブロツキー氏は言う。
ウクライナはヘリテージ財団の「経済自由度指数」(2021年)で、欧州の45カ国中、経済的に最も自由でない国にランクされている。世界ランキングでは127位で、インドやニカラグアなどより低い。同財団は、ウクライナの財産権、法の支配、労働市場の規制が最大の欠点と認定している。
2014〜19年にカナダの駐ウクライナ大使を務めたローマン・ワシュクによれば、ウクライナは経済自由度指数やその他統計で信じられているほど経済的に不自由ではない。「このようなランキングは公式統計を評価したにすぎず、ウクライナの巨大な地下経済を把握できていない」という。
少なくとも25万人の技術専門家からなるIT業界では、企業は税の抜け穴を徹底的に利用している。ウクライナの最高税率は20%だが、「個人事業主」は5%で済むという規定がある。実はこの税金、本来は小規模な個人事業主を対象にしたものだが、IT専門家を含む起業家にも利用されている。
ウクライナで施行されている規制の多くが1970年代のソ連時代にさかのぼり、改革は急務だ。アトラス・ネットワークのトム・パーマーによれば、第二次世界大戦後、ドイツに市場経済を導入したルートヴィヒ・エアハルト経済相が、将来のウクライナのモデルになりうる。
ウクライナのためにマーシャル・プラン(第二次大戦後に米国が行った欧州経済復興援助計画)を求める声がしばしば聞かれる。しかしウクライナを救うのはマーシャル・プランではなく、エアハルトの導入したような市場経済改革しかない。
戦後西ドイツの「経済の奇跡」に大きく貢献したのは、エアハルトの自由市場主義が描いた経済路線であり、欧州の人々の苦しみと飢えを救うために行われた、当時の米国務長官ジョージ・マーシャルの名にちなんだマーシャル・プランではなかった。
英国はドイツの2倍以上の援助を受けたにもかかわらず、ドイツのような経済発展は見られなかった。英国が社会主義者(労働党政権)によって統治されていたのに対し、エアハルトはドイツに市場経済を導入した。戦時中から、すでに政策を練っていたのだ。
ウクライナに対する自由主義の政策案は明確だ。「私たちが新しいウクライナについて語るとき、何よりも三つのことを意味します。汚職との戦い、法の支配、経済の自由です」。同国の自由主義系シンクタンクのナタリヤ・メルニクは言う。
(次より抄訳)
How Ukraine Could Become the Most Libertarian Country in the World Once Peace Is Achieved - Foundation for Economic Education [LINK]
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