2022-06-25

経済回廊をめぐる戦争——サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで議論

ジャーナリスト、ペペ・エスコバル 
(2022年6月22日)

サンクトペテルブルク国際経済フォーラムはここ数年、ユーラシア統合の進化するダイナミクスと試行錯誤を理解するうえで、絶対不可欠なものとして設定されてきた。

西側の制裁を受けたロシア貯蓄銀行(スベルバンク)のグレフ最高経営責任者が司会を務める討論で、ロシア経済界の最高の人々である聴衆に質問が投げかけられた。「東方との貿易拡大か、ロシア経済の構造転換か。どちらを勧めますか」。なんと72%が後者に投票した。

サンクトペテルブルク・フォーラムの数日前に起こった出来事を見ると、二つのテーマが互いに影響し合っていることがわかる。

ロシア北西部からカスピ海、イランを経由してペルシャ湾に至る国際北南輸送回廊(INSTC)の重要なノード(結節点)が完成したのである。サンクトペテルブルグからインドの港までの輸送日数は25日間。

このマルチモーダル(複数手段)輸送による物流回廊は、スエズ運河を経由するアジアから欧州への通常の貨物輸送路に代わる重要なルートを開く。BRICsの2カ国(ロシアとインド)と「新G8」のメンバー候補にとって、大きな地政学的意義を持つ。

INSTC回廊は典型的な南南統合プロジェクトである。船、鉄道、道路からなる全長7200キロの複合輸送ネットワークで、インド、アフガニスタン、中央アジア、イラン、アゼルバイジャン、ロシアを結び、バルト海のフィンランドまで続く。

例えば、サンクトペテルブルクからアストラハン(ロシア南部の都市)まで、陸路でコンテナを運ぶとする。その後、カスピ海を経由してイランのバンダレアンザリー港に入港。陸路でバンダレアッバース港へ。そしてインド最大の港であるナバシェバまで海外輸送を行う。運営主体はロシアとインドに支社を持つイラン・イスラム共和国船舶会社(IRISLグループ)である。

これからの戦争は、領土ではなく、輸送回廊をめぐって争われるようになる。

中国が急ピッチで進める一帯一路(BRI)は、米欧の「ルールに基づく国際秩序」を脅かす構想とみなされている。ユーラシア大陸を横断する6つの陸上回廊と、南シナ海、インド洋から欧州に至る海上シルクロードに沿って展開している。

北大西洋条約機構(NATO)のウクライナ代理戦争の重要な目標の一つは、ロシアを横断するBRI回廊を中断させることだ。(アメリカ)帝国は、BRIだけでなく、INSTCのノードも妨害するために全力を尽くすだろう。米国の占領下にあったアフガニスタンは、BRIでもINSTCでもノードになることを阻まれた。

アゾフ海やおそらく黒海沿岸全域への完全アクセスが可能になれば、ロシアは海上貿易の展望を大きく広げることになる。

過去20年間、エネルギー回廊は激しく政治化された。BTC(バクー・トビリシ・ジェイハン)パイプラインやサウスストリーム、ノルドストリーム1、2、トルクメニスタン・アフガニスタン・パキスタン・インド(TAPI)やイラン・パキスタン・インド(IPI)のガスパイプラインに至るまで、容赦ない世界のパイプライン競争の中心である。

ロシアの海岸線に沿ってバレンツ海まで続く北極海航路もある。中国とインドが同航路を重視するのは偶然ではなく、サンクトペテルブルク・フォーラムでも詳しく議論された。

軍事・エネルギー大国としてのロシアは今や、ほとんど気づかないうちに、西側先進国の大部分を石器時代に追いやることができる可能性があることを示している。西側のエリートたちは、ただただ無力である。ユーラシア大陸で高速鉄道の回廊に乗ることができれば、何かわかるかもしれない。

(次より抄訳)
St. Petersburg Sets the Stage for the War of Economic Corridors - LewRockwell LewRockwell.com [LINK]

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