米南部の人種隔離政策(ジム・クロウ法)で電車・バスの座席が白人と黒人に分けられたのは、乗客の要求に基づくものではなかった。乗客は白人も黒人も分離に不満で、電鉄会社も抵抗した。費用が高すぎたからだ。白人が座席分離を望むと思い込んだ政治家が、票を獲得するために実現したのだ。
米南部の奴隷主は「賃金奴隷」という言葉を好んで使った。資本主義が奴隷制より野蛮だと思わせようとしたのだ。奴隷廃止論者は奴隷制が不道徳で良識ある社会にふさわしくないと批判していた。もし北部の賃労働制が奴隷制より悪質なら、奴隷廃止論者を困った立場に追い込める。
米南部の特異な思想家ジョージ・フィッツヒューは奴隷制と社会主義をともに支持した。彼によれば、社会主義は自由競争の廃止や労働階級の保護を提案するが、これは奴隷制によって完璧に実現できる。奴隷制は道徳的に善だから、黒人だけでなく白人にもその恩恵を広げるべきだという。
奴隷制はおぞましいほど不正で不道徳な制度だっただけでなく、自由な労働に基づく市場経済に比べ、不効率だった。偉大な国家を目指して他国の人々を奴隷にするのは危険だ。奴隷制は少数のエリートを潤すために、それ以外の人々を犠牲にする。犠牲になるのは奴隷だけではない。
奴隷労働は運河、鉄道、製鉄所、造船所には向かなかった。米南部で資本主義の成長を妨げた。米北部や西欧の多くの産業は奴隷の作った米南部の綿から利益を得たけれども、それが経済の繁栄に不可欠だったわけではない。世界の工業国は奴隷制の製品がなくても十分やっていけた。
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