女性の味方マルクス?
マンガ『ナニワ金融道』の魅力は、人間の欲深さや卑しさ、そして気高さを見据えて描くところにある。しかし同じ著者によるこの本は、残念ながらまったく違う。事実から目を背け、ひたすらマルクスや社会主義を崇め奉るばかりである。
マンガ『ナニワ金融道』の魅力は、人間の欲深さや卑しさ、そして気高さを見据えて描くところにある。しかし同じ著者によるこの本は、残念ながらまったく違う。事実から目を背け、ひたすらマルクスや社会主義を崇め奉るばかりである。
著者は、労働者は資本家に搾取されているというマルクスの主張を紹介し、「いうとくけど、この剰余価値の理論は、だれも否定できない」と断言する。ベーム=バヴェルクをはじめ多数の経済学者による批判はまったく無視してである。
旧ソ連崩壊の原因について著者は、中央の共産党の力が強大になりすぎたなどと指摘しつつ、「社会主義は、まだまだこれから発展していくのや」と言い切る。権力に経済を委ねつつ、権力の肥大を防ぐという矛盾の解決案は何も示さない。
最も失望するのは、マルクスを「女性や子どもの味方やった」「理想的な『愛』のあり方も考え、自ら実行していた」などと持ち上げた箇所である。妻子あるマルクスが家政婦ヘレーネ・デームート(レンヒェン)を愛人にし身ごもらせた一件には、触れもしない。
子供は生まれたが、マルクスは自分の責任を認めなかった。世間の評判を恐れ、友人エンゲルスに認知してもらった。息子ヘンリー・フレデリック・デームート(フレディ)は労働者の家に里子に出され、母親には台所でしか会えなかった(ポール・ジョンソン『インテレクチュアルズ』)。これが「女性や子どもの味方」だろうか。
政治的イデオロギーは左右を問わず、すぐれた芸術家の目さえも曇らせる。本書はその事実を無残なまでにさらけ出す。
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