2016年10月4日火曜日

佐藤優『いま生きる階級論』

いま生きる階級論
いま生きる階級論

小さな「悪」だけ叩く偽善

マルクスによれば、資本家は労働者を搾取する。一方、マルクスは言わなかったが、著者によれば、官僚は国民から税金を収奪する。労働は嫌なら断れるが、課税は断れない。ならば課税は搾取より悪質なはずだが、著者はそう言わない。

著者はマルクスに基づき、こう述べる。企業の儲けは、労働者を安い賃金で搾取することで得られる。ただし労働者は無理やり安い賃金で働かされるわけではない。もし嫌なら断って、搾取されない自営業など他の仕事を探すことができる。

これに対し官僚は、著者によれば、税金を「搾取」するのではない。国家が独占する暴力装置を背景に有無を言わさず「収奪」する。搾取は逃れる余地があるのに収奪にはないから、資本家(企業)よりも官僚(政府)の害が深刻なはずだ。

著者は述べていないが、企業の売上高経常利益率は大企業でも5%程度。これに対し国民負担率(税と社会保障の合計)は40%超。企業の利益は搾取の果実というマルクスの主張は間違っているが、かりに正しいとしても、政府の収奪はケタ違いに苛烈だ。

ところが著者は、官僚を口先では批判するものの、税ができるだけ少ない社会にしようとは言わない。官僚以上に収奪の罪が重いかもしれない政治家には、何も触れない。大きな悪を不問に付し、小さな「悪」だけを叩くのは偽善である。

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