2016年10月14日金曜日

シヴェルブシュ『三つの新体制』


ムッソリーニが称えたニューディール

歴史の教科書では1930年代の世界恐慌への対応について、米国のニューディール政策と日独伊のファシズムを対照的に取り上げる。しかし本書によれば、ニューディールとファシズムは異質なものではない。その本質は似かよっていた。

第二次世界大戦で米国と独伊が敵同士となったり、ドイツによるユダヤ人迫害が国際問題になったりするまで、ファシズムは自由放任的な資本主義に代わるモデルとして世界的に注目されていた。とくにムッソリーニの人気は高かった。

ニューディールを指揮したルーズベルト大統領は「イタリアを再建しようという彼〔ムッソリーニ〕の誠実な意図に、また彼のこれまでの業績に深い感銘を受けている」(p.28)と語った。ルーズベルト政権にもムッソリーニ信奉者は多かった。

ムッソリーニもニューディール政策を高く評価し、こう書いた。「アメリカは何を欲するのかという問いへの答えはこうである。自由な、すなわち無政府的な経済に戻ること以外のすべてのもの。〔……〕コーポラティズム〔ムッソリーニの経済体制〕への道を進んでいる」(p.22)

ヒトラーもルーズベルトに親近感を抱き、こう述べた。「義務感、犠牲の覚悟、規律が国民全体を支配すべきであるという考え方において大統領と一致している。大統領が合衆国の個々の市民全体に課したこれらの道徳的要求は、ドイツの国家哲学の核心でもあり、それは『私益に対する公益の優先』というスローガンに表現されている」(巻末注 p.12

ニューディール時代の米国は、一党独裁ではなかったことや、個人の自由が完全には抑圧されなかったこと、秘密警察が存在しなかったことなど、独伊との相違点も多く、完全に同列のファシズム国家と呼ぶことはできないかもしれない。

それでも、きわどいところにあったのは間違いない。そうした事実を知らないまま、ニューディール政策をほめそやすのは危険である。

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