2016年10月12日水曜日

マーフィー『学校で教えない大恐慌・ニューディール』


大恐慌を起こした「大きな政府」

俗説によれば、大恐慌発生時の米大統領フーバー(共和党)は自由放任を信じ、経済対策をやらなかったため不況を深刻にしたという。本書が示すとおり、それは嘘である。フーバーは「大きな政府」を信じ、それが大恐慌を引き起こした。

フーバーは株価暴落直後の1929年11月、金融業者や実業家をホワイトハウスに集め、賃金水準の維持を呼びかけ、同意を勝ち取った。物価の下落によって実質賃金は大きく上昇する。企業は雇用を抑え、失業率の上昇をもたらした。

フーバーは農民を助けるためとして、1930年に施行したスムート・ホーレー関税法で何千もの輸入品に高い関税をかけた。この結果、外国人は米国の輸出品を買うドルが少なくなり、純輸出産業だった米国農業は皮肉にも最も苦しんだ。

フーバーは就任後最初の2年間で政府歳出を42%も増やした。これは自由放任の神話とは裏腹に、教科書的ケインジアンの景気刺激策である。しかし失業率は下がるどころか、20%以上に上昇。フーバーはケインジアン政策を放棄した。

フーバーの政策は自由放任からかけ離れていた。規模は小さいものの、むしろルーズベルトのニューディール政策とよく似ている。皮肉にもルーズベルトは大統領候補時代、フーバーの政策を「もっとも向う見ずで放蕩に満ちたもの」と批判した。

主流派経済学に異を唱えるオーストリア学派経済学の入門書としても、すぐれた一冊である。

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