2016年7月1日金曜日

井上達夫『憲法の涙』



護憲派の矛盾を衝く

護憲派の矛盾を鋭く衝く。憲法9条を素直に読めば、自衛戦争を禁じ、非武装中立を命じているとしか考えられない。集団的自衛権行使はもとより、個別的自衛権行使も認められないはずと著者は正しく指摘する。

つまり自衛隊と日米安保条約は存在自体が憲法違反である。これはかつて主流派、今も多数派の原理主義的護憲派憲法学者の主張で、9条解釈としては正しい。彼らは、自衛隊と安保を合憲とする内閣法制局見解を批判してきた。

ところが長谷部恭男早大教授ら最近の修正主義的護憲派憲法学者は、集団的自衛権は違憲と批判しつつ、個別的自衛権とその範囲での自衛隊、日米安保は合憲と言う。これは詭弁であり解釈改憲であると著者は批判する。

旧来の原理主義的護憲派は政治的配慮からか、自衛隊・安保合憲論を批判しなくなった。樋口陽一東大名誉教授のように、自説を変えたわけでもないのに、個別的自衛権肯定の声明に名を連ねた人さえいる。学問的良心に反すると著者は批判する。

リバタリアン的解釈では、9条は政府の武力を禁じるが、民間の武力は禁じていないと考えられる。9条を守ると非暴力抵抗しかできないという著者はそこを見落としている。著者の持論である徴兵制導入にも賛同できない。だが護憲派批判は的を射る。

前著『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください』は、リベラル派の国家主義的発想が強すぎて辟易したが、今回の続編で的を絞ってていねいに述べられた護憲派批判は説得力がある。

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