2016年7月6日水曜日

SEALDs編著『民主主義は止まらない』



権力を疑え

シールズ創設メンバーの奥田愛基は「『民主主義』ってものを自分たちのものにしようと、もがきながら考えた」と書く。民主主義とは権力者を決める方法の一つにすぎず、権力そのものが問題の根源という認識は相変わらず薄い。

シールズメンバーの古谷千尋は、政治家への投票は「悪さ加減の選択」と書く。A候補もB候補も悪いが、AのほうがよりマシだからAに投票する。この考えは現実的である。しかしそれでも、悪は所詮悪にすぎない。

同じくシールズメンバーの諏訪原健は「政治の源泉は権力であり、暴力であるかもしれない」と核心に近づく。だが結局、「一人ひとりを大切にするような倫理観を突きつけていきたい」と抽象的な対案しか提示できない。

聞き手の小熊英二は、市場では全員が特定の会社の製品を買う必要はないが、政治だと権力で強制されると重要な指摘をする。しかし、それなら社会における政治の役割を小さくしようという本質的な話には発展しない。

なおもう一人の聞き手である内田樹はメンバーたちに向かい、自民党がモデルにする国家は株式会社だという珍説を披露する。どれほど致命的な失策を犯しても、出資した分の株券が紙くずになる以上の責任は問われない有限責任だからという。

しかし自民党にせよ他のどの政党にせよ、政治家が失政の責任を取って財産を一部返上したという話は聞いたことがない。政治は有限責任どころか完全な無責任なのである。有限にせよ責任を取る株主と同等に扱うのは失礼というものだ。

シールズが戦争反対を強く訴えることには共感できる。だが戦争の根本原因は政府の存在自体にある。市場経済を嫌い大きな政府を好むリベラル知識人の影響が強いことは、ただでさえ民主主義の欠陥に鈍感な若いシールズの未来に暗い影を落とす。

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