2016年7月26日火曜日

橘玲『言ってはいけない』



「機会の平等」 の幻想

親が高収入だと子供の学歴が高い。だから教育機会の平等のために、貧しい家庭に財産を再分配せよ――。左派はそう主張する。だがそれは間違いである。本書は進展著しい進化論の知見に基づき、現代のタブーを暴く。

近年の研究により、「知能が環境のみによって決まる」という仮説は否定された。親が高収入だから子供が高学歴になるとはいえない。知能の高い親は社会的に成功し、同時に遺伝によって子供は高学歴になるのかもしれない。

「男と女は生まれながらにして違っている」などと公の場で言えば、女性差別を正当化するものとして袋叩きは必至だ。しかし遺伝学や脳科学は、男女は生まれつき、満足を感じる対象が異なることを示唆する。

欧米で物理学・工学の博士号を取得する女性は5%を下回る。これは、男性は物、女性は人を相手にした仕事をそれぞれ好むという志向の違いが原因という。職業選択の自由のない旧ソ連では男女はほぼ同数だった。

旧ソ連のような「平等な社会」より、女性が有能な医師や弁護士、教師など人を相手とする仕事で活躍できる自由な社会のほうがずっといい、という著者の主張はもちろん正しい。平等のイデオロギーは人を不幸にする。

明らかに社会主義的な「結果の平等」に批判的な人でも、「機会の平等」は何となく支持し、それを実現するための所得再分配に賛成する場合が少なくない。しかし人間の遺伝的資質が異なる以上、政府が「機会の平等」を実現できるという考えは幻想にすぎない。

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