2016年7月12日火曜日

岩波新書編集部編『18歳からの民主主義』



「投票は善」という通念

選挙権年齢の引き下げを受け、若者に投票を促す本。当然ながら収録された文章の多くは、一部の例外を除き、多数による専制と背中合わせの民主主義の危険に無頓着か、ごまかすか、形ばかりの憂慮を示すだけである。

想田和弘。選挙に行かない人は、自分がベジタリアンなのに焼肉を食べさせられても「あんまり文句は言えない」とたとえ話で投票を促す。そもそも少数派が好きな料理を食べられない制度はどこかおかしいとは言わない。

上野千鶴子。夫婦のどちらが食事を作るか納得のいく話し合いで決めなければ、家庭に民主主義はないと批判する。ところが国家の民主主義は、特に根拠も示さず、主権者が納得して物事を決めているから擁護せよと言う。

姜尚中。在日韓国人の自分は帰化をせず、あえて選挙権を与えられない選択をしてきたと、せっかく民主主義への懐疑につながりうる言及をしながら、読者には結局「与えられた権利をフルに使う」よう勧めるだけである。

異彩を放つのは栗原康。投票を善とする通念を批判し、「多数による支配をぶちこわせ」「権力をつくるのはもうやめよう」と呼びかける。公園から喫煙者が締め出されることを資本主義の問題として非難する部分は的外れ(公園は私有財産ではないから)だが、問題の本質が権力者の選び方ではなく権力そのものであることを理解しているのは、執筆者で彼だけである。

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