2016年7月22日金曜日

金子光晴『自由について』



奴隷根性の国

日本は世界で一番人気があるとか、尊敬されているとかという空虚な「元気が出る本」とは正反対の書。反骨の詩人として知られる著者、金子光晴は日本人の情けなさを痛烈に批判する。一言でいえば、それは「奴隷根性」である。

「劣等意識の安心感」ともいうべき奴隷根性はどの国民にもあるが、日本人のそれは根が深い。民衆反乱が頻発した中国と違い、「王侯将相なんぞ種あらんや」という気概がない。日本の支配層はそれにつけ込んで、繁栄してきた。

著者は吐き捨てるように書く。「奴隷には奴隷のかしこい生きかたがある。反抗できないとはじめからきまっている主人達には、犬ころのように服従することと、仲間を売っても手柄を立ててみせる卑屈な根性を身につけることだ」

日本人の奴隷根性は、戦時中に遺憾なく発揮された。「おかっぴき根性や、五人組制度、いちはやく権力に反抗できないものときめ込んでしまう態度」を目のあたりにし、著者は「どうにも救いがたいという感じがした」と嘆く。戦後は対米従属に形を変え、著者が没して四十年以上を経た今に至るまで奴隷根性は続く。

だが著者は希望を失わなかった。「人間が自由を欲する動物であるかぎり、階級の関係が、本来、闘争的なもの」だからだ。権力への抵抗は「合理的に考えればそうなるはずですね。常識で考えてもわかることじゃないかと思うんだ」と語る著者は理性の人だった。

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