2022-12-13

巨額負債と経済危機

元米連邦下院議員、ロン・ポール
(2022年12月12日)

国際通貨基金(IMF)の元顧問で、クリントン大統領(当時)の経済諮問委員会メンバーも務めたヌリエル・ルービニ氏は、住宅バブルの崩壊を予測した数少ない「主流派」経済学者の一人である。今ルービニ氏は、個人・企業・政府が抱える途方もない額の負債が、まもなく「すべての経済危機の母」をもたらすと警告している。

ルービニ氏は、債務に基づく経済が生まれたのは、米連邦準備理事会(FRB)をはじめとする中央銀行が推進してきたゼロかそれに近い低金利、あるいは量的緩和政策が原因だときちんと指摘している。ゼロ金利・量的緩和政策の必然的な結果が、米国民を大混乱に陥れる物価上昇である。

FRBは一連の利上げで物価上昇を解消しようとしている。これまでのところ、これらの利上げは物価上昇率を大きく低下させていない。金利が歴史的な低水準にとどまっているからである。しかし利上げは、新築住宅需要の減少など経済にマイナスの影響を及ぼしている。金利の上昇は、多くの中産階級や労働者階級の米国人にとって、比較的安価な住宅であっても毎月の住宅ローン支払いを行うことを不可能にする。

FRBが金利を自由市場の水準近くまで引き上げることができない主な理由は、連邦政府の債務管理能力に影響を及ぼすからである。米議会予算局(CBO)によると、国債の利子はすでに2052年までに連邦予算の40%を消費する勢いであり、2029年までには国防費を上回る見込みだ。わずかな金利の引き上げで、年間の連邦債務金利の支払いは何十億ドルも増加し、債務の返済のみに充てられる連邦予算の額が増えることになる。

連邦政府の財政状況は、社会保障の信託基金が2035年までに、高齢者向け公的医療保険(メディケア)の信託基金が2028年までに赤字になるという事実によって、さらに悪化している。二つの主要な給付金制度の破綻が迫っていることと、議会の大部分が福祉と戦争の支出のどちらも削減しようとしないことが相まって、FRBは窮地に立たされている。物価上昇に対抗するために必要な水準まで金利を上げれば、利払いの増加は個人と企業に困難をもたらし、連邦政府の利払いも持続不可能な水準まで上昇することになる。これは政府の債務不履行を含む大きな経済危機を引き起こし、ドルの世界基軸通貨の地位が否定されることになるだろう。また、FRBが財政ファイナンスで連邦政府の赤字を助長し続ければ、結果としてドルの価値の崩壊とドルの世界基軸通貨としての地位の否定による経済危機を引き起こすだろう。

この危機は社会不安と暴力を引き起こし、左派・右派を問わず権威主義的な運動が盛んに行われるようになる。これは市民の自由に対する政府の弾圧と、経済に対する政府の支配を強めることにつながる。唯一の明るい話題は、この危機が自由の思想への関心を高め、小さな立憲政府、自由な市場経済、個人の自由、万人との平和貿易という外交政策への回帰をもたらす可能性さえあることだ。真実を知っている私たちには、二つの責任がある。一つは、家族が来るべき混乱を生き延びられるように、必要な計画を立てることだ。もう一つは、できるだけ多くの人々に自由の理念を紹介するために、全力を尽くすことだ。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The Mother of all Economic Crises [LINK]

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