元ニューヨーク大学教授、マイケル・レクテンワルド
(2022年11月30日)
著名な大手デジタル企業が、厳密には私的な営利企業ではないことは、今やすっかり明らかになっているはずだ。拙著『グーグル群島』で論じたように、大手デジタル企業は国家機関、すなわち政府機関であり、検閲・プロパガンダ・監視などの国家機能を担っている。
Who Really Owns Big Digital Tech? https://t.co/tyvvm3jqdO
— George Cassis (@geopolytica) December 1, 2022
アンドリーセン・ホロウィッツ社のゼネラルパートナーで、国家安全保障、航空宇宙・防衛、公共安全、住宅、教育、工業など「米国の活力を促進する企業に投資している」というキャサリン・ボイルは、ハイテク「スタートアップは息を飲む速さで政府の責任を奪い始めた」と示唆している。もしこれで腑に落ちなければ、米政府関係者が特別なポータルにアクセスし、そこからフェイスブックやインスタグラムの投稿に直接フラグを立て、「速度を落とすか抑える」よう要求できるという、ネットメディアのインターセプトが最近明らかにした事実が、疑問を解消してくれるはずだ。
大手ハイテク企業と政府の癒着について、ツイッターでさらなる暴露が行われることは、イーロン・マスク(最高経営責任者)によって約束された。国際政策や戦争、経済や不況、パンデミックやワクチン、政治や選挙、グローバルエリートの目標、気候変動破局論、今まさに起こりつつあるグレート・リセット(資本主義の根本見直し)などさまざまな問題について、政府が「誤情報」「偽情報」と判断したものは何でももみ消す、一党支配国家の道具としてツイッターは運用されてきた。
政府が産み落としたハイテク大手
保守系シンクタンクであるアメリカン・コンパスのリサーチ・ディレクター、ウェルズ・キングはアメリカン・コンサバティブ誌に寄稿し、このような事態は驚くべきことではないとしている。キングによれば、シリコンバレーは最初から多額の政府資金によって作られた。キングの考えでは、「革新・進歩・成長は政府がいないから生まれる」と主張するのは、「市場原理主義者」だけだという。キングはこう述べる。
シリコンバレーは強力な公共政策の産物である。デジタル時代の主要技術は、「自律的」市場における「自由なイノベーション」の喜ばしい偶然によってではなく、意図的かつ長期的な政府の行動によってもたらされたのだ。
キングによれば、〔米国防総省の〕高等研究計画局(ARPA。1972年に国防高等研究計画局=DARPA=となる)が集積回路からシリコントランジスタ、ネットワークコンピューティングの規格に至るまで、あらゆる開発に資金を提供し、指揮をとった。その主な顧客は国防総省であった。
最近では私が論じたように、グーグルとフェイスブックの両社は、直接間接に米情報機関から起業資金を受け取っている。フェイスブックの場合、創業資金はパランティア、アクセル・パートナーズ、グレイロック・パートナーズを通じて提供された。これら資金源は、米中央情報局(CIA)傘下の民間ベンチャーキャピタル投資会社インキュテル(In-Q-Tel)から資金を得ているか、深い関係がある。
CIAは1999年、インキュテルを設立し、情報機関に役立つ技術を生み出す可能性のある有望な新興企業に資金を提供することにした。セント・ポール・リサーチのアナリスト、ジョディ・チャドリーが指摘するように、インキュテルは2004年頃、著名投資家ピーター・ティールのスタートアップ企業、パランティアに出資している。パランティアはその後、フェイスブックに資金を提供した。独立系ジャーナリストで元ヴァイス記者のナフィーズ・アーメドが詳細に説明しているように、グーグルと情報機関や軍とのつながりは深い。アーメッドは、DARPA関係者とのつながりからスタートアップ資金がもたらされ、その後、情報機関から直接資金が提供されたことを明らかにしている。情報機関は、インターネットに前例のないデータ収集の可能性があり、新興の検索エンジンベンチャーがデータ収集の鍵になると考えたのである。
インターネットは政府がつくったのか?
アンドリュー・モリスは経済教育財団(FEE)への寄稿で、インターネットについて別の説を述べている。モリスの考えでは、インターネットはARPAが資金提供したARPANET(アーパネット)とは似て非なるものである。モリスは、インターネットは自然発生的な秩序の結果であって、トップダウンの官僚的な管理の結果ではないと述べる。タイムシェアリングシステムやパケット通信は、たしかに国防総省の資金援助と監督によって開発されたが、政府が民間活動を圧迫することによって研究開発を阻害したとモリスは主張する。「起業家精神の欠如ではなく、規制による参入障壁が、民間ネットワーク構築の努力を遅らせた」 。民間ネットワークであるUSENET(ネットニュース)こそインターネットの真の祖先だとモリスはいう。
しかしモリスは政府に過剰なまでの肩入れをし、その結果、その主張は弱くなっている。
連邦政府の国防費が無制限に使えるので、初期のネットワーキングのパイオニアたちが技術の細部にまで集中しやすかったのは間違いない。
政府によるスタートアップへの資金提供があったことを考えると、もし国防省が当初から関与していなければ、インターネットはもっと違った形で、もっとゆっくりと発展したか、まったく発展しなかったという議論も認めざるをえないかもしれない。おそらく今インターネットとして知られるものは、私的なネットワークのシステム、つまり選ばれた利用者だけにアクセスを許可する、一連の私的な情報の飛び地のようなものになっていただろう。もしそうだったなら、大手デジタル企業は現在のように政府に奉仕するのではなく、むしろ個人利用者に奉仕していただろう。検閲とは、誰がどこで話すことができるかを私的な所有者が決定する問題になっていただろう(もちろん、これは今日でもよくあることだが、政府も関心を持ち、何が許されて何が許されないかを決定することができることを除けば)。大手デジタル企業は政府の言いなりになることもなく、国土安全保障省に言論を規制されることもなかったはずだ。
現状では、大手デジタル企業は完全な民間企業でも完全な公的企業でもない。最近の「CHIPS・科学法」が示すように、大手デジタル企業は政府と民間の両方の利益を代弁している。このためほとんどの利用者は、一方では利潤動機、他方では国家の監視・検閲・プロパガンダの欲望の間に挟まれることになる。別の道もあったかもしれない。
(次を全訳)
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